空でつながろう

Interview Vol.5 Art活動を楽しむ街「八戸」

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第5弾の今回は青森県八戸市でアーティスト活動をされている山本さんにお話を伺いました。

Art活動を楽しむ街「八戸」

写真右から⼀⼈⽬ ⼭本さん

「うわさ」が繋いだアーティストと八戸

Q.八戸で活動を始めたキッカケを教えてください。

山本少し話が遡りますが、イギリスのロイヤルカレッジオブアートで学んだ後、アーティストとしてロンドンを中心に欧米で7〜8年ほど活動をしていました。その間も日本とロンドンを行ったり来たりしていましたがアトリエの契約が終わるタイミングの2003年、日本に帰国しました。帰国後は「アサヒアートフェスティバル」、「トヨタ子どもとアーティストの出会い」など、様々な地域でアートプロジェクトに参加していました。そんな生活を繰り返していると八戸市から声がかかり、市の中心街に「八戸ポータルミュージアム はっち」という公共施設が2011年2月にできるとのことで、そのオープンに合わせて、僕のアート作品のひとつでもある「うわさプロジェクト」をやってほしいと依頼が来ました。そこが僕と八戸の出会いでした。

僕は当時アーティスト活動をする傍ら、筑波大学で非常勤講師をしていたので茨城県に住んでいて、そこから八戸に通っていました。大学の授業がなくなる夏休みなどの長期休校中は、八戸で活動をするようにしていて、しばらくは茨城県と青森県を行ったり来たりの2拠点生活でした。

「うわさプロジェクト」は街中のお店を一軒一軒回って、雑談しながらお店のうわさを探るところから始まります。八戸では220店舗以上を取材し、この活動を通して知り合った人は300人以上いたと思います。街を歩けば「今日はどの店に行くの?」と声をかけてくれたり、茨城から戻ってくれば「おかえり〜」と笑顔で挨拶してくれる方がいて、八戸はとても居心地が良くて素敵なまちだなと思ったのがキッカケですね。

Art活動を楽しむ街「八戸」

うわさプロジェクト

Q.八戸の人々と土地の魅力はなんですか?

山本実は僕の出身は名古屋なんですけど、父が転勤族だったので過ごしたのは8歳ぐらいまででした。その後も山形県鶴岡市、中学校から仙台で過ごしていた事もあり、自分の中で「ふるさと」ってなんだろうと言う感覚でしたが、八戸の人の温かさやカルチャーが「ふるさと」とは何か?を教えてくれたと感じています。実際、八戸に来て生活していると僕の活動に興味を持ってくれて声を掛けてくれたり、時には作業を手伝ったりしてくれたり、そのうち食料やお酒が届いて一緒に食事したりするようなりました。そんな交流をしていると気づけばかなりの数の方々と知り合いになっていました。八戸の方々は僕の事をどう思っているかわからないけど、自分にとって八戸は波長が合うというか、ちょうど良く心地良い場所ですね。そこが大きくて、ここに住みたいと思って住んでいます。

住み始めて気づいたんですが、仕事で県外へ移動するのにも空港(三沢空港)も近い、新幹線(八戸駅)も通っている、フェリー(八戸港)も近いなど、交通手段の選択肢が多くて不便さを感じないんですよね。出張の移動もスムーズで助かっています。あとは、こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、子供からお年寄りまで「訛っている」事が、僕個人として八戸の魅力だと思うし素敵だと思います。茨城に住んでいた時、若い人が方言を喋っていないことに何か物足りなさのようなものを感じていました。

Q.このポイントが八戸のために活動する理由でしょうか。

山本八戸のためにと言うよりも、僕のアーティスト活動にふれた人たちが1人でも幸せな気持ちになってくれたらと思っています。大きなことはできないけど、小さなことを積み重ねることだったら僕にも出来ると思っていて、それがたまたま縁があって住んでいる八戸だったと言うのが正しいかも知れませんね。人って何かのため・誰かのために役に立ちたいと思うものですが、それが僕の場合アーティストとして何が出来るかをこの街で表現していくことが役割だと思っています。だから、八戸市のためにと言うよりも居心地の良かった八戸でアーティスト活動をさせてもらっていて、「八戸の皆さんの役に立てるように」が正しいのかもしれません。僕のやりたいことが八戸の人に気づきを与えていたり、何かのきっかけになっていたりしているなら、それは僕にとっての喜びでもあります。

Art活動を楽しむ街「八戸」

空き店舗を皆でリフォームしたまちぐみの拠点"まちぐみラボ"

Q.八戸でのプロジェクト「まちぐみ」について教えてください。

山本八戸に移住後は「うわさプロジェクト」以降、八戸の仕事がなかったのですが、「はっち」の館長さんが久しぶりにプロジェクトをやってみないかと声をかけてくれたのがキッカケで、企画書を書いたのが「まちぐみ」でした。大まかに「まちぐみ」を説明すると、みんなで得意なものを少しずつ出し合って、大きな一つのものを作ろうというプロジェクトです。最初は一人で活動していて、「うわさプロジェクト」の時から可愛がってくださっているお店に、ディスプレイを貸してくださいとお願いしに行ったのが始まりで、着物屋さんのディスプレイにバカ殿の「あ~れぇ~」のポーズにしたマネキンを持ち込んで展示をしていました。この活動をフェイスブックやブログでなどを使って情報発信していると活動が面白いと新聞にも取り上げられて、「まちぐみ」に参加したいという方が1年で200名も登録してくれました。毎回メンバー全員が参加してくれているわけではないですが、活動をする度に情報発信すると「時間が短いけど参加するよ」と言って参加してくれる方もいて、皆さんに支えていただいています。まちぐみの拠点(まちぐみラボ)をみんなでリフォームしていると、「ペンキ一斗缶余ったからあげるよ」っていう方もいて、そんな皆さんが協力してくれることで成り立っています。本当にありがたいですよ。

僕が何かお返しできるとすれば、まちぐみの活動を通して、会話が生まれ友達が増えたり、自己肯定感が生まれたり、何か気持ちに変化があったり、そんな見えない成果を作ることなんじゃないかなと思っています。

Art活動を楽しむ街「八戸」

「まちぐみ」プロジェクト時の着物屋さんのディスプレー展⽰

Art作品「まちぐみ」に込めた想い

Q.山本さんにとってのEVOLUTION × LOVEは?

山本「まちぐみ」がまさに僕にとってのEVOLUTION LOVEあり、アーティストとしての作品です。

まちぐみに来てくれる人たちが、ここを自分らしくいられる第3、第4の居場所だと感じ、安心や繋がりを持ち帰って日常がより輝きを増すような、そんな役割を果たせたらいいなぁと思っています。

まちぐみはものづくりの活動が多いので、手先の器用な人たちが多く集まってきます。その中には、伝統工芸やイラスト、ジュエリー、アートなどの作家さんもいて、それぞれの成功を目指して日々チャレンジを続けています。

この人たちが活躍する場として、まちぐみラボの2階にシェアアトリエ&ギャラリーを昨年開設しました。人に見られる機会を得ることがさらなる創作意欲に繋がり、それぞれの活動を加速させ、より目を輝かせて頑張っている姿が見られることを願っています。

ただ、まちぐみは八戸市の事業であるため、いつか終わりを迎えることが予想される中、僕が想っていることは、まちぐみが終わるとなったとしても、「私たちで続けよう!」とか、「新しいプロジェクトを立ち上げよう!」なんていう声が誰かから上がって来たらすごく嬉しいなぁということです。そのために、僕なりに少しずつ準備をしているつもりです。

Art活動を楽しむ街「八戸」

「まちぐみ」1周年 メンバー皆さんで食事会

Q.EVOLOVEと一緒にやりたいことはありますか?

山本日本全国の方と交流ができたら八戸の人たちにとって良い刺激になると思うので、八戸外の事に触れて知ってほしいですね。良い面も悪い面でも、八戸の方はココから出ない方も多く、考え方が八戸だけに閉じてしまいがちなので、離れた場所の方々と交流イベントを行えれば、視野を広げられるきっかけになるんじゃないかと思っています。

それとは別ですが八戸の評価は市内よりも、実は市外や県外からの評価が高いと個人的に感じていて、そのことも八戸の方に実感してほしいです。その証拠になるかわかりませんが、毎年30人以上、「まちぐみ」メンバーが増えているのと、東京などの県外からの問い合わせが多く、遠方から視察や見学に来られます。「まちぐみ」の活動を10年近くもやっていると、人が増えるだけでなく、僕の知らないところでメンバー同士が仲良くなったり、中には結婚したりする人もいる。こういった輪がどんどん大きくなって、もしまちぐみが終わったとしてもその繋がりが継続すると良いなと思います。きっとそれはこのまちの財産になると思うから。

Q.学生〜社会人3年目くらいの若い人についてどう感じていますか?

山本 「最近の若者は元気がない」と一部で言われているようですが、個人的にはそんな風に思っていなくて、誰が言ってるんだろう?という感じですね。僕が出会う若者はみんな元気だし、今の空気を作ってしまったのは大人たちだと思っています。僕らの上の世代がその閉鎖的な社会を作ってきたと個人的に感じていて、僕自身も年齢的にその世代に近いから半分責任を感じます。だから少しでもでもいい社会になるように、大人としてアーティストとして何ができるか日々考えながら活動しています。本来大人が「近頃の若者は」なんて言ってはダメだし、そもそも決めつけだと思います。失敗してもいいから、「やってみたらいいじゃん」と言える大人でありたいと思いますし、そういう方々が増えると良いですね。

   ありがとうございました。「まちぐみ」はとてもユニークな取り組みで、他の都市から視察や体験をしに来る方が多いのも頷けます。EVOLOVEのインタビューをきっかけに、他の地域の方々と繋がれるようにと願っております。