空でつながろう

Interview Vol.6 湯のまち山鹿で築く
Next innovation

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第6弾の今回は熊本県山鹿市で農業や地域活性のために活動されている中原さんにお話を伺いました。

湯のまち山鹿で築く Next innovation

熊本でのピッチに登壇している 中原さん

新しいワークスタイルと
地元山鹿市への想い

Q.熊本県山鹿市での活動に至ったきっかけを教えてください。

中原山鹿市は僕の地元なんですけど、10代の頃は「この街には何も無い」と思っていました。地元の高校を卒業してすぐ、アメリカの大学に留学し、卒業後は東京と海外を行き来していました。

熊本に移ったのは、コロナ禍最中でした。当時は東京のベンチャー企業の役員をしていましたが、完全にリモートワークになって、どこでも働けるようになりました。以前より父から今後畑をどうするかについて相談を受けていたこともあり、そのことはずっと頭の片隅にありました。

いつかは農業関係の事業を起こしたいと考えていたので、妻や子、義父とも相談し、2021年9月に家族で熊本に引っ越しました。

Q.農業関係で起業するのであれば山鹿市でなくてもできたと思いますが、どうして山鹿市でしょうか?

中原逆に山鹿市以外の場所を選ぶ理由がなかったです。どこでもいいなら地元でやりたいと思いましたし、実家の畑をどうにかするというのもテーマでしたので。実際に農業をやることは、自身の事業のR&D、つまり研究開発の位置づけにもなりますし、それ以外のエリアは最初から考えていませんでした。

Q.これも一つの地元愛だと思いますが、地元に戻って地域を活性化させたいという想いは他の土地に住んだ経験からでしょうか?

中原僕の場合、地元愛の始まりは、アメリカ留学がきっかけです。最初は海外に対して漠然とした憧れを持って行くわけですけど、実際に行ってみると、初めて日本という国を客観視することになると同時に、その素晴らしさに気付かされたのです。もちろん海外での生活も楽しかったのですが、同時に日本、そして故郷にも沢山の魅力があったと気づいたっていうのが初めてアメリカに行った時でしたね。

それから自身のルーツでもある「農業」について考えるようになって、以降「農業」というキーワードが常に自分の中にありました。大学卒業後は農林中金に就職したのですが、その理由は農林中央金庫がその目的として“農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資する”ということを掲げていたからです。大学院で行ったハーバードでも選択授業では農業に関するテーマを積極的に履修したり、如何に日本の農業を民間の起業家精神で再興するかというテーマの論文を書いたりしていました。農業、そして日本再興への貢献というのが私の人生のテーマになったのは、日本を出たことで、かえって日本や地元の素晴らしさを知ったことに起因すると思います。

Q.農業を通して、日本の素晴らしいところを後世に継承したいということでしょうか?

中原単純に日本の食事ってやっぱり美味しいじゃないですか。野菜や果物、お肉といった素材も、味噌や醤油といった伝統的な調味料も世界から高い評価を受けています。

それと、少し話が複雑かも知れませんが「農業の多面的機能」や「食の安全保障」の観点でも考えています。特に「食の安全保障」については世界情勢が不安定で地政学リスクが顕在化している状況を考えると、「農業」や「食」を守っていくことは非常に重要だと考えています。

Q.起業した会社について教えてください。

中原2021年3月に「株式会社コウサク」という会社を興しました。農業の近代化を目的としたサービス開発を行っています。また、昨年にはアスパラやスイカ栽培を行う実家の農園を法人化した「株式会社コウサクファーム」も両親と立ち上げています。また、地方創生の観点で廃校となった自身の母校をコワーキングスペースや宿泊機能を有する複合施設「YAMAGA BASE(仮)」として運用する予定の「やまがBASE株式会社」を2022年7月に共同創業しました。さらに、人材の課題を解決する手段として同年11月に「やまがBASE事業協同組合」を山鹿市の事業者と立上げ、この3月に県内二例目となる特定地域づくり事業協同組合として認定されました。

湯のまち山鹿で築く Next innovation

「旧小学校」 2024年4月にオープン予定の宿泊施設を兼ねたワーキング施設

Q.ご自身の母校をリノベーションする「YAMAGA BASE」はビジネスマッチングやチームビルディングなど「ハブ」として面白くなりそうですね。

中原そうですね。ハブを作りたいっていうのは一つ明確にあります。今は、東京に居ようが海外に居ようが熊本に居ようが同じクオリティの仕事ができると確信が持てます。だから、もっといろんな人が場所に囚われず仕事をすれば良いと思いますし、YAMAGA BASE はその場所の一つとしてみなさんに利用していただける施設となればと考えています。働く環境としても山鹿は自然豊かで温泉も魅力ですし、実際にここから世界を変えていくとか、ここから海外に直接繋がることも可能だと思うので、そういった志のある人と一緒に活動できるような場所を作っていければと思っています。

湯のまち山鹿で築く Next innovation

旧小学校の体育館

「農業」というテーマから広がる
山鹿市の未来と可能性

Q.あなたにとっての EVOLUTION × LOVEはなんでしょうか?

中原「農業」と言えるかもしれません。元々幼少の頃から身近にあった農業ですが、大学を卒業するぐらいから何かできればとずっと考えていました。そんな中農業をやりはじめると、地方に人がいないっていう課題に直面します。こうすれば良くなるという解決策は分かっていても、人がいないとそれが実現できないのです。そうするとどうやって地方に人を呼んでこれるのかというのが、課題になります。人口の減少問題もある中で、特に生産年齢人口と言われるような、産業を担う若者が減少していて、それに伴い地方の産業も衰退しています。そうすると若者の就機会も失われ、さらに人口減少に繋がるという悪循環が生まれるのです。その悪循環を断ち切り、好循環に変えていくきっかけをつくるためにも、事業をいかにつくるか、人をどうやって呼び込むかなどを考えています。農業が抱える課題に端を発し、そこから連鎖する課題を一つ一つ解決していくことが、私にとってのEVOLOVEだと思います。一歩一歩進んでいくことですね。ただ、どのような課題も当然一人では解決できません。熊本に引越して来てから、多くの出会いがあり、課題解決に向け沢山の仲間、企業の方々と連携して取り組むことが出来ています。1人では解決出来ないことを、多くの方と知恵を出し合い支え合いながら解決していく、というのもEVOLOVEかもしれません。

   ありがとうございました。中原さんの熱い想いが熊本山鹿から広がっていき、日本のみならず世界各国と繋がることを応援したいと思います。