空でつながろう

Interview Vol.7 「川港」江津で
人を繋いで築く未来

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第7弾の今回は島根県江津市で活動をしている藤田さんにお話を伺いました。

「川港」江津で人を繋いで築く未来

左から3番目 藤田さん

NPOから始まった
地元・地域活性への取り組み

Q.現在行っている活動に至ったきっかけは?

藤田2010年ぐらいから江津市が企業誘致ではなく人材誘致を目指すことになり、ビジネスプランコンテスト、通称「Go-Con(ごうこん)」が始まりました。U/Iターン者向けの地域課題解決するビジネスコンテストですが、せっかくチャレンジしに来てくれる人達に対して、地域側の受け皿がないとうまくいかないんじゃないか?という議論になり、サポート役という位置づけで2011年に「NPO法人てごねっと石見(いわみ)」というNPO団体が設立され、私が理事長をしています。

それまでは、地域活動の知識もなければ、NPOについては何も分からない状態でした。これから何をどうすれば良いか考えていると、設立当時「Go-Con」で大賞を取った方と同行する事が多く、江津のいろいろな地域課題を見つけながら活動している様子を見て、こうやって解決して行くのかと学ばせてもらいました。それと同時に地元の自分たちが何も知らない事、何もしてないという事に対してすごく違和感が出てきて、江津市外から来る人の方が一生懸命頑張っているんだから、自分にも出来ることはないかと考え始めました。

2012年に、江津の商店街の地域マネージャー/コーディネーターを育成するプログラムがある事を知りました。そのプログラムを通して商店街に関われたら良いなと思い、自分も初めて「地域」に個人として直接関わり始めました。街や駅前が衰退している事を「行政のせい」とか、「経済のせい」だと言っている地元民の声に気づき、まずは、そのイメージを変える事が先だと感じました。その一歩として、シャッター街となっていた駅前の空き店舗を活用したイベントを行ってみると、5年間ぐらいで空き店舗が30店舗埋まったのです。これをキッカケに「駅前は寂れていて、こんな場所に投資する価値はない」と言っていた市が、「若者が街を盛り上げようと頑張ってくれているから」と投資し、駅前に残っていた古いビルやデパートを取り壊し、新たに「パレットごうつ」という公共施設を2016年に建ててくれました。

自分のアクションによって、行政も含めて街が変わる瞬間を初めて体感したときに、ほとんどの人は「解決方法」を知らないから、行政や他人に任せっきりにしていたんだなと思いました。でも今回のように私たち民間が動けば、駅前も街も変えることができる事を学びました。だからみんながもっと参画してくれて、一緒に活動できるようになればと思っています。

「川港」江津で人を繋いで築く未来

Go-Con(ごうこん)参加された皆様で写真撮影

Q.海外に住んだ経験がありますね。今の活動に影響していますか?

藤田ロンドンに行きましたが、もう明らかに日本とは違うんですよね。授業で美術館やギャラリーに行ったり、劇場で劇を見てそれに対してディスカッションしたり。この学びを、江津に持って帰りたいと思いました。もし自分が学生時代にこういう環境があったら人生が変わっていただろうなと思いました。海外に行って思ったのは、やっぱり江津の事でした。江津市は「素通りの町」と呼ばれるくらい何もないと自虐的に言われるのですが、地元の人たちが自身をもって魅力をアピールできるように変えていきたいと思うようになりました。

地方創生と人つなぎ、
若者に秘めた地域活性の力

Q.あなたにとっての Evolution x Loveは?

藤田「地元“愛”の進化」というテーマだと、私の中では2つあります。人と人とを繋いで、この人がこの人に会ったらこんな価値が生まれるんじゃないかなっていうのを想像するのがすごく好きなので、色々な人たちが巻き込まれながら変化していく姿を見るのが一番面白いですね。昔からパズルが好きなのですが、このパズルを組み立てる感覚に近くて、一つの大きな絵が出来上がるのをイメージしながらコーディネートするつもりでやっています。人を繋げることで化学反応みたいなものが見えてきて、街も元気になっているのを感じます。このような「人興し」によって江津市をより元気にする進化が一つ目。

2つ目は、「学生の進化」です。2年前ぐらいから、高校の「地域活性部」という部活動の指導員をしています。高校生たちが自分のやりたいことを地域でやるための部活動ですが、自分から声をかけられなかった人見知りな子が、町に出てイベントやボランティア活動を繰り返していくうちに、自分から話しかけたり、自分の意見をきちんと述べるようになったりしていきます。私も学生たちが成長して行く姿を見て嬉しいですし、一つでも多くの体験、経験をさせてあげたいと思います。部活名の通り、「これからの江津」を若い力と一緒に活性化させたいと思います。また、若い人が地域に入ると、やっぱり地域の方もすごく元気になるんですよね。「子どもたちのためならば頑張ろう!」ということで未来に向かうエネルギーが湧いてきますので、そこがまた地域の力を引き出すきっかけとなれば良いと思っています。

Q.これから取り組みたい課題はありますか?

藤田他の地域の「地方創生」について、知りたいです。色々な形の地方創生のあり方っていうのが全国各地であるのだろうなと思うと、どんなことをしているのか聞いてみたいです。江津市は教育をコアとした地方創生のあり方にトライしていますが、その街らしい地方創生のあり方っていうのは、どういうものなのだろうか?というパズルを組み立てたいとずっと思っているので、共有できる機会、そういう人たちと知り合える場があれば参加したいです。

「川港」江津で人を繋いで築く未来

地域活性部の高校生の皆さんと

Q.地方の若者について

藤田若者たち自身には問題はないと思っていますが、日本、日本の各地域を知らないのではないでしょうか。昨年、大学生の長期インターンシップを受け入れたのですが、参加した学生たちが「自分はずっと海外に行きたいと思っていたけれど、海外に求めた刺激が地方にもあった」と言っていました。海外って、自分の生まれ育った地域と明らかに違っているから、それを刺激として求めて行くのですけれど、意外と日本の中にも刺激的な未知のところがあって、そこを知る事が重要だと気づいてくれました。自分がどこで、何と、どう関わるのか?というのは海外に行かなくても、十分学ぶことができるはずです。

あとは、私たちの時代と違って、情報へのアクセスが簡単にできるから故に、少ない情報で「これってこうだな」というイメージで判断してしまうことがあるような気がします。実践した経験が無かったり、体験した人の話を聞く機会が少なかったりするため、勝手に決めつけてしまうところがあるので、実際に自分が体験したら全く違う結果が出てくるのではないかな?と思います。やっぱりそこの面白さは知ってほしいです。

   ありがとうございました。藤田さんの地元愛をたくさん感じましたし、若い方をはじめ関係者の方々が日々増えて行くことで江津市がさらに盛り上がるのではと思います。今後情報更新を楽しみにすると共に今後のご活躍を願っております。