空でつながろう

Interview Vol.100 今までになかったような若者目線の企画を生み出し、
徳島の主人公となる若い人を増やしていきたい。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第100弾の今回は、学生コミュニティを運営し、企業や行政と共同プロジェクトを行いながら、徳島を盛り上げる活動をされている香川紘輝さんに話を伺いました。

今までになかったような若者目線の企画を生み出し、徳島の主人公となる若い人を増やしていきたい。

香川紘輝さん

整った環境の中で
何かを作るより
ゼロから生み出したいと考えて、
地元の徳島で起業。

現在の活動について教えて下さい。

香川鳴門教育大学大学院の教育心理学部に通いながら、2023年に徳島県鳴門市で「株式会社エンターラル」を立ち上げて、人材育成✕まちづくりをテーマに約100名の学生コミュニティを運営しています。特にエンタメを大切にしていて、ただまちづくりや人材育成をするのではなく、学生たちがワクワクしながら活動できるということを大事にしています。県外でも若者のコミュニティを作っています。また大学生のアウトリーチ事業として、企業や官公庁とのマッチングを行い、共同プロジェクトを行っています。企業の採用や販売促進、自治体との共同イベントの開催などを行いながら、学生の成長を促しています。大学進学でせっかく徳島に来てくれたのに、4年後に徳島で就職する割合は1割にも満たずに、優秀な人材は外へ出ていっちゃうんですね。そうすると、そんなに就職に対して熱量がない子たちの中で企業は人材を取り合わなければいけないし、結局大手の企業に行ってしまう。だから僕たちが、徳島にいるときに地元の企業や官公庁と関わる機会を作るとともに、熱量の高い学生を増やすことでそういう流れを変えられたらと思っています。行政とは、移住起業支援や若者応援プロジェクト、定住促進コンテンツ創出など若者ならではの企画力や発信力を使った課題解決に取り組んでいます。徳島県からは「徳島若者回帰アンバサダー」というプロジェクトを請負い、県内に住む大学生がアンバサダーとなって、県内のいろいろな企業を取材して、若者目線で企業の魅力を発信する事業をしています。

今までになかったような若者目線の企画を生み出し、徳島の主人公となる若い人を増やしていきたい。

香川さんが運営する学生団体メンバーの皆さん

鳴門市で活動することになったきっかけを教えてください。

香川教員一家に生まれて、僕も教員になりたかったというよりは教員しか知らなくて、全国で教員採用率No.1といわれる地元の鳴門教育大学に入学しました。教育学部は1年から実習があって、正直僕は指導も得意だし子どもにすごく好かれていたから、教員に向いていると思っていました。でも実習2日目で、「教科書に書いてあることって僕以外でも教えられるな」と思って、全く教科書に関係ないこと、その時は小学校3年生に彼女の作り方とか教えました。そうしたらめちゃくちゃ怒られて「ああ、めざす道はもう教員じゃないな」って思いました。初めて教育に疑問を持ちましたね。僕は嫌だと思ったら絶対嫌なのでその時から教育の道を外れました。どんな人間になりたいかと考えた時に、とにかく男にも女にもモテる人になって、死ぬ間際もなんかいい意味でふざけていたいなって思って、起業したいと思いました。

でも当時は経営学も何も知らなかったので「これはだめだ」と思って、次の日に休学届を出して大阪に行きました。最初はイベントに参加して、そこで出会ったベンチャー企業の社長に弟子入りさせてくださいって頼んで、半年間ぐらい無休で働きながらビジネスを学びました。その後独立して、旅行代理店と一緒に海外ツアーを企画したりしました。

でもそれも、教育実習の時と同じように「僕じゃなくてもいいや」って思ってしまって。大阪にはいろいろな選択肢や環境、人が揃っているからやろうと思えば何でもできると思いましたが、揃っているものの中で何かを作るよりも、ゼロから作りたいなと考えました。その瞬間から大阪じゃないと思い始めて徳島に戻りました。徳島には相変わらず熱い学生はいませんでしたが、環境が整えばきっと集まってくると確信したのでこっちに戻ってきました。

実際に起業してみてどうでしたか?

香川大阪で2年間何かやっていた若造が徳島に帰ってきても通用しないと思ったので、まずは行政から仕事をもらって実績を積みました。そのおかげで企業からも信頼を得られるようになりました。僕自身は日々、勉強させてもらっていますね。例えば都会では2歩進めばできることも、徳島ではもう10歩くらい遠回りしなくてはいけないこともあるし、都会では多少尖っても若さとして認められたことが、徳島では礼儀を通さなくてはいけないとか。そういうのは全然できなかったので、常に意識しています。

また徳島に帰っていろいろな人と関わる中で、否定から入る大人ばかりではなく、僕たちが考えていることをおもしろいねと言ってくれる人もいることに気づきました。最初に仕事をいただいたのは鳴門市役所です。農業と県内外の大学生を対象に、農業と別の仕事を組み合わせた生活スタイル「半農半X」のモニターツアーを実施しました。鳴門市役所の方は「おもしろいことを待ってました!」みたいな人が意外と多くて、徳島に戻って起業してよかったなと実感しています。

今までになかったような若者目線の企画を生み出し、徳島の主人公となる若い人を増やしていきたい。

自治体との共同ツアーイベント時の様子

香川さんにとっての地域活性を教えてください。

香川現在、県の事業にも参加させていただいていて、彼らは県の代表として、自分たちで徳島の魅力を発信したり、自らいろいろな場所に足を運んで徳島の魅力をPRしています。そういう意味では行政と学生との距離が近くなって、学生がまちづくりに入りやすくなったと思っています。また僕は企業訪問には極力学生を連れて行くようにしていますが、企業が「これは大事でしょ」と思っていることは意外と学生にはどうでもいいということや、就活では逆に学生が企業を見ていることなどを伝えます。そうすることで古い観念に凝り固まっていた企業側の意識が変わってきたと感じています。僕の周りにいる学生は本当に優秀な人が多いんですよ。こちらが次に考えていることをすぐに言語化するし、勝手に企画を作って契約を取ってくる子もいるし。そういう学生と一緒に採用や人材育成を行う企業は、「ここまでやってもいいんだ」「そこまでやらせたほうがいいんだ」と概念が変わってくるわけです。だからこれからももっと学生と企業を繋げていきたいと思っています。

これから先は「徳島の若者といえばこいつらだ」と言える人材を作りたいと思っていますね。世代が上の人からは「こいつらに任せられる」、学生からは「こんな奴らについていきたい、こういうふうになりたい」と思ってもらえる、徳島の希望になれるような人を生み出したい。コミュニティのメンバーがそういう人たちになってくれたら嬉しいですね。まちづくりをすることがかっこいいこととなり、「住んでいるのは俺たちなんだから俺たちが作っていこうぜ」みたいな形になればもっと若者は増える。それがゆくゆくは地域活性につながると思っています。

今までになかったような若者目線の企画を生み出し、徳島の主人公となる若い人を増やしていきたい。

子供達を交えたイベント時の様子

若者がまちづくりを
かっこいいと思えるように
アップデートしていく。

香川さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

香川僕は、地域の主人公として圧倒的な力のある若者を増やしていきたいと常に思っています。今、学生イベントはもちろん、SNS運用や営業、さらにはテレビ局さんとSNS上で番組制作など、いろいろなことに挑戦しています。それも「徳島なのにこのレベルの仕事ができるんだ」というものを作っていきたいと思っていますし、イベントも「こんなアーティストが来るんだ」「こんな規模のものができるんだ」といわれるようなものを作りたいと考えています。教育でも最近はやっているボードゲームとキャリア教育をかけ合わせたりとか、徳島に今までないようなものを作ることが、僕が仕事をやる理由。徳島におもしろいことを増やし続けて、気がつけば5人に3人がまちづくりに携わってる、という形にアップデートしていきたい。それが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。

今までになかったような若者目線の企画を生み出し、徳島の主人公となる若い人を増やしていきたい。

外部講師として高校で授業を行う香川さん

10年後、20年後はどうなっていたいですか?

香川学生にはもちろんここに残ってほしいですが、一方で外に出て成長することも大切だと思っています。外に出て「やっぱり徳島のために何かしたい」と戻ってきてくれて、20年後も一緒に徳島に関わってくれる人が増えていてほしいですね。残る人と、外に出ても徳島と関わる選択肢を持っている人、この両輪があればすごくいいなと思っています。

香川さん、ありがとうございました!若者ならではの考え方やアイデア、熱い思いで徳島をもっとおもしろくしていきたいという香川さんの思いがひしひしと伝わってきました。香川さんの幅広い活動を、今後も応援させていただきます。