空でつながろう

Interview Vol.108 福島県いわき市
小名浜港のライトアップ活動を通して
交流人口を増やし街をあかるくしていく。

長谷工グループのインキュベーション組織「UXDセンター」が行う共創プロジェクト「EVOLOVE(エボラブ)」は、2025年、日本各地の“街を明るくする”活動を開始します。

あなたにとって“明るい街”とはどんな街でしょうか?商店街に活気がある街、街灯が増え夜も安心な街、若い世代が移住してくる街、大学を卒業したら子どもたちがまた戻ってくる街、多くの観光客が遊びに来る街、季節ごとに花が咲き乱れる街。あなたの街をもっと“明るい街”に変えるために、みなさんはどんな活動をしているのでしょうか。

今回は、福島県 小名浜港のイルミネーションライトアップやさまざまなイベント活動を通して街全体の活性化に取り組む小名浜まちづくり市民会議の上野台祐一さんと山内朋之さんに話を伺いました。

福島県いわき市 小名浜港のライトアップ活動を通して交流人口を増やし街をあかるくしていく。

上野台祐一さん(写真左)と山内朋之(写真右)

震災やコロナで
冷え切った街に、
イルミネーションで元気を。

お二人の役割を教えてください。

上野台札幌を拠点に、現代アートの作品を作っています。また2012年に「一般社団法人プロジェクタ」を立ち上げ、展覧会やアートプロジェクトの企画運営、公共空間や商業施設でのイベント運営、ギャラリーや公共空間などのスペース運営を行っています。

山内小名浜まちづくり市民会議の事務局長をしています。10年ほど前から、まちづくりの仕事を手伝っています。

現在の活動について教えてください。

小名浜まちづくり市民会議「アクアマリンパーク交流人口500万人構想」を掲げて、小名浜港のアクアマリンパークでイルミネーションのライトアップを行っています。アクアマリンパークは小名浜港1・2号埠頭の間の親水エリアで、水族館や観光物産センター、小名浜さんかく倉庫などが集まります。ここで夏だけではなく冬にも人が集まるようにと、自分たちでブルーをモチーフにLEDのイルミネーションを作って始めました。また昼夜問わず年間を通して人が集まるようにスケボーやスリーオンスリーなどができる遊び場作りも行っています。

その他にも私たちは花火大会の実行委員会も担当しています。ここで1万発以上の花火が上がって、桟敷席もできて夏は本当ににぎわいます。

「街をあかるくする活動」としてのライトアップについて、取り組みのきっかけを教えてください。

小名浜まちづくり市民会議もともと小名浜にはまちづくりに関する団体が複数あって、それをひとつにまとめて活動しようということで2000年に「小名浜まちづくり市民会議」が立ち上がりました。以来、港とまちが一体となったまちづくりに民間ベースで取り組んできています。

まずは小名浜に海上博物館を作ろうという先輩方の長年の活動が実を結んでアクアマリンふくしまが完成し、その後海産物を中心とした商業施設ができたり、市民が一体となって20年くらいかけて、この場所をなんとかしようと頑張ってきました。2011年の震災直後は街全体が冷え込み、小名浜港も震災以前は年間200〜250万人ぐらい人が集まっていたのですが、震災で港が破壊されて人がガクッと来なくなって。それでも少しずつ元気になってきたと思ったら、今度はコロナ禍でさらに元気がなくなってしまったという時期がありました。

それにここは港なので、夏はけっこう人が集まるのですが、冬は人が来ません。また、田舎なので夜は暗くなります。なんとか明るくできないかと思い、コロナ直前からライトアップを始めて、コロナ明けから本格的に行うようになりました。

今後は、春はピンク、夏は涼し気な色にと季節に応じて色を変えながら、色とりどりの港の風景を作っていこうと考えています。また街灯があまりないものですから、道端に間接照明を取り付けるなど、港だけではなく街にフィードバックできるようなことも考えています。

福島県いわき市 小名浜港のライトアップ活動を通して交流人口を増やし街をあかるくしていく。

ライトアップ時の様子

ライトアップ活動に対する想いを教えてください。

小名浜まちづくり市民会議小名浜港の背後地には以前貨物ターミナルがあったのですが、津波ですべて失われてしまいました。その跡地に完成した大型商業施設やシャッター街となってしまった市街地とのつながりを作り、アクアマリンパークを活かしつつ回遊性をアップして市内への誘導とにぎわいを生み出していきたいと考えています。まだ取り組み自体が中途半端な状況なので、若い人にどんどん参加していただいて楽しい場所にしていきたいと思っています。

ライトアップを行ったことでどんな変化が起きましたか。

小名浜まちづくり市民会議これまで冬はあまり人が来なかったのですが、イルミネーションライトアップに関してはクリスマスツリーの設置などで、ある程度認知されてきた感じがあります。大型商業施設で買い物をしたお客さんが立ち寄って見物して、子どもたちを遊ばせて帰る、というようなスタイルももう定番化していますね。スリーオンスリーやスケボーに関しては、なんといってもガランとして暗いところなので、もう少し場所自体を明るくしながら頑張っていきたいと考えています。

ただ、港なので風が強くて、せっかくライトアップを見に来ても寒すぎて帰ってしまう人も多い。これからは季節がよくなってきて、夜風も気持ちいので昼夜問わずにもう少し人が集まるのではないかと思っています。

ここはサッカーJ2のいわきFCのスタジアムの候補地に上がっていますのでより一層人がたくさん集まる場所にしていければと思います。ただ、弱点もありまして、陸の孤島というか交通アクセスがあまりよくないのですよ。最寄り駅もけっこう遠いし、インターも遠いし。でも今年の夏にはいわき小名浜インターができる予定にはなっているので、少しはよくなるかなと思っています。

福島県いわき市 小名浜港のライトアップ活動を通して交流人口を増やし街をあかるくしていく。

クリスマスマーケットでのライトアップ

小名浜まちづくり市民会議と地方活性とのつながりについて教えてください。

小名浜まちづくり市民会議いろいろな人に関わってもらいながら、共感共鳴しあいながら楽しくまちづくりをしていけば、それが地方活性につながるのではないかと考えています。

まちづくりのベースとなるグランドデザインは20年の間に3回ほど変わりました。その間に世代も変わってきているので、もっと若い世代の方に参加していただいて新しい風を入れたいと思っています。

港という特性を活かして、夏はバナナボートやジェットスキーなどのイベントを開催しながら若い人たちを集めています。そういう人たちにどんどん私たちの仲間になってもらいたいですね。それが地方活性になると思っています。

若い世代へ活動を引き継ぎつつ
次の課題についてまた取り組んでいく。

お二人にとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

上野台私たちは30代の頃からさまざまな青少年事業に取り組んできました。まちづくりに関しても、こういう街を子どもたちに残していきたいという思いで、それこそいわきラブ小名浜という気持ちで目標を立てながら活動してきました。小名浜港も「こういう港にしたいよね」という思いでいろいろやってきて、明るい街にするための形はできたと思っています。これを続けていくことが私の“EVOLUTION✕LOVE”です。

山内上野台さんは常に思いついたことをすぐ行動に移す、そこがいいところです。私はこうした一生懸命やっている人をちゃんと手伝いながら、「以前の街はこうだったけれど、先輩方がこうやって頑張ってきたから今こうなっている。やれば変えられるんだよ」ということを若い世代にきちんと伝えていきたいと思っています。それが私の“EVOLUTION✕LOVE”です。

10年、20年後はどうなっていたいと思いますか?

小名浜まちづくり市民会議市民会議の活動も20年以上経ち、その都度軌道修正はしていますが、街の交通網をどうするか、また役所や行政の機能をどうしようかと考えなくてはいけないことは山積みです。実際に自分たちも年をとってきて、免許を返納したらどうなるのかとか、若い頃とはまた違う視点で物事を見るようになりました。子どもの数が減ってきているという課題もあります。だから10年後も今と同じように、何かを考えてなにか動いてというようなことを変わらずにやっているんだろうなとは思っています。

上野台さん、山内さん、ありがとうございました!小名浜港を賑わいの拠点に、街全体を明るくしようと地域愛を持って活動を続けるお二人を、今後も応援させていただきます。