
Interview Vol.118
大好きな壁画アートを大阪を起点に国内外で描き、
人々に幸せをもたらしたい!
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第118弾の今回は、大阪府を中心に全国や海外で壁に絵を描く活動に取り組む今川咲恵さんに話を伺いました。

今川咲恵さん
幼稚園や街の施設、
海外の保護施設で
壁画を描く活動を展開。
現在の活動について教えてください。
今川壁に絵を描く仕事をしています。大阪に住んでいますが、依頼があれば全国どこへでも行きます。また1年に1回ぐらいですが、海外にある子どもの施設の壁に絵を描く活動も行っています。その他にもアートイベントや百貨店の催事にも出て、アート作品を販売しつつ壁画の仕事の紹介をしたり、病院でアートセラピーを行ったり、ワークショップやライブイベントなども行ったりしています。また革製品の企業ともコラボし、デザインのひとつとして私のアートを使ってもらっています。

壁画を描く今川さん(大阪の製薬会社の社員食堂の壁)
壁画アート活動をすることになったきっかけを教えてください。
今川もともとは保育士として働いていました。そんなに夢を持っていたわけではなく、「楽しく生きていきたい」という思いがあって、保育士ならそれが実現できそうだなと思いました。実際に働いてみたらとても楽しくて、絵を描くことも子どもも好きだったので、子どもたちと一緒に絵を描いたりしていましたね。何年か勤務していると、もっと楽しく子供と過ごせるかな?との追求心で自分で託児所を開設してみようと思い立ちました。
託児所開設の準備期間中、友人がカフェを開くことになり、仲間と一緒にDIYを手伝いました。友人が「壁に絵を描いてほしい。描いてくれたらビール飲み放題にする」というので、ビールにつられて手を挙げて(笑)。描くのは初めてでしたが、描き始めたら「なんて楽しいんだろう」と感じました。こういうことをしながら生きていけたらいいと思いましたね。託児所を開く借家にもお願いして壁に絵を描いて、「壁に絵を描きたい」と周囲の人たちに話すうちにいろいろなところで描かせていただくようになりました。託児所運営と壁画アートは同時に始まったという感じですね。
私は保育園勤務時代、生活発表会で行う子どもたちの劇の背景を描くのが得意でとても頼りにされました。他の先生は下書きをしてから描くのですが、私は下書き無しで、1時間くらいで描けます。だから大きなところに絵を描くということは最初から抵抗なく始められました。
また子どもも好きだし、いろいろな仕事をしている親御さんと話をすることもとても好きで。今は託児所を辞めて、壁画作家として活動をしていますが、保育園や幼稚園から依頼を受けるときに「元保育士です」というと安心してもらえたり、子どもたちのワークショップを任せてもらえることもあるので、この道筋を辿ってきてよかったと思っています。

高知県土佐市の公衆トイレの壁画
どんな思いを込めて壁に絵を描いていますか?
今川一番の理由は、描くのが楽しいということです。海外の壁画アート活動は、特にインドへ行くことが多いですね。以前、偶然出会ったインド人の女性がアートと教育で子どもや女性の未来を変える活動をする団体の方で、その方たちが運営している施設の壁に絵を描いています。インド人の女性とも、「お金がない子たちは当たり前のように観光客のお金を盗んだりするけれど、その子たちが犯行前に壁画を見てなんかきれいな絵だな。今日はもうやめようかなと思ってくれたらいいよね」と話していて。私が描く壁画を見て気分がよくなる人が増えて、それが世界平和の本当に小さな一歩になればいいと思っています。

インドの小学校にて今川さんの壁画
Oh!me大津テラスの壁面にもアートを描かれていますが、きっかけを教えてください。
今川最初にいただいたオファーは、壁画ではなく、メインビジュアルのキャラクター制作でした。お仕事をしている中で、「もし壁に絵を描きたい店舗があればぜひお声がけください」とお伝えしていたのですが、Oh!me大津テラスの建物の壁に描かれていた以前の絵を変えなくてはいけないということを聞きつけ、壁面に絵を描かせていただきたいと志願しました。制作期間中は、市民の方や近くの保育園の園児にも色塗りに参加してもらって、盛り上がりましたね。
奈良県の三郷町役場にも壁画を描きましたが、その時も町民参加型のプロジェクトとして行いました。参加型にすると皆さん自分が描いた絵に愛着も湧くし、本人だけじゃなくて家族や友人にも「これ見て!」と話題にもなるし。自分の街を好きになるひとつのきっかけになると実感しました。
大阪にある幼稚園の壁画は最初に描いてから10年経って、今また描き直しています。描き直す時に一旦消したら街の人たちから「なんで消したの?」といわれたらしく、また私が描くことになったとわかったら皆さんが喜んでくれて。ちゃんと私の壁画が街に愛されているんだなと感じました。

Oh!me大津テラスの外壁にペイント
いろいろな人とつながり、
人も、自分の心も助けられる。
だから壁画を描くのは楽しい!
今川さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
今川なぜこんなに壁に絵を描くことが好きなのだろうと考えた時に、2つの理由が見つかりました。ひとつは、私がいろいろな場所に行くことが好きだということ。自分と違う世界に生きる人たちと関わるのは本当に楽しくて、「そういう考え方も生き方もあるんだ」と思うと気持ちがよくなって、優しい気分になれます。いろいろなところへ行ける仕事は、自分自身ちょっと特別な存在として見てもらいたい、という思いもあります。その中で壁に絵を描く仕事が自分に一番合う方法だと思いました。もうひとつは、自分がすごく健康であること。私はもったいないと思う性分でなんでも使い切らないと気がすまないタイプです。だから私の健康な体をちゃんと使い切って終わりたい、そう考えた時に、普通の仕事では気持ちも体力もちょっと有り余ってしまいます。壁画は暑くても寒くても描くし、高いところにも登るし、毎回知らない人と出会ってその人の思いをきちんと引き出して描かないといけないから心も体もすごく使います。でもなんか楽しいからへっちゃら。せっかく健康に産んでもらったのだから、それを使い切りたいですね。
あとは、楽しくてやってきた壁画がインドの子どもや女性を救うことにもつながっている。また自分にとってすごく悲しいことがあっても、絵を描く自分でいることが自分に光を与えてくれる。「あってよかった」といわれる壁画を描き続けること、それが私の“EVOLUTION✕LOVE”です。このあと5回くらいの人生、壁画作家がいいですね。まだまだ描き足らないから(笑)。

東大阪市のカフェの壁画
10年、20年後はどうなっていたいと思いますか?
今川どんどん大きな作品に更新していきたいですね。世界を壁画だらけにして、今より平和になっているといいですよね。
今川さん、ありがとうございました!さまざまなアートプロジェクトを通して防犯上の意味からも活性化の視点からも街を明るくする活動を行う今川さんを、今後も応援させていただきます。