空でつながろう

Interview Vol.12 行政と地域で創る、鯖江のミライ。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第12弾の今回は、福井県鯖江市で、空き家の利活用や林業での将来を考えながら地域活性化活動を行なっている根本さんにお話を伺いました。

行政と地域で創る、鯖江のミライ。

写真の真ん中 根本さん

人とのつながりがくれた、
「鯖江で生きる」理由。

Q.現在の活動に至ったキッカケを教えてください。

根本私は福井県敦賀市出身で、大学卒業後に敦賀に戻って就職しました。もともと私は地元愛が強く、いつか敦賀の活性化に携わりたいと考えていました。そこで新しいスキルを身につけるために一度福井を出て、大阪の会社に転職することにしました。大阪では求人広告の営業として、チームプレイや目標達成に向けたモチベーション管理などを学べたと思います。面接時のエピソードがあって、「いつかは福井に帰って地域振興に貢献したい」という話をあらかじめしていたんです。それでも採用していただいた会社には今でも本当に感謝しています。そして4年ほど働いたタイミングで「そろそろかな」と思い、上司に福井に戻る決意を伝えました。

Q.敦賀市出身の根本さんが、同じ福井でも鯖江市を選んだのはなぜですか?

根本大学時代の友人の話がキッカケでした。鯖江は福井の中でも地域振興に熱心で、(JK課やゆるい移住など)面白い取り組みをしていることをそのとき初めて知ることになりました。移住前に訪問したときも、その友人や市の職員さんが生き生きと鯖江について語っている姿勢が印象的で、興味が深まりました。“生き生きした人”の魅力がある地域だと、4年住んだ今も感じます。

もちろん敦賀に戻ることも考えましたが、当時はまだ敦賀で、面白いまちづくりの動きを見つけることができず...。行政や地域に移住者を受け入れる風土が根付いていて、若手移住者も多かった鯖江で活動することを決めました。

行政と地域で創る、鯖江のミライ。

鯖江の皆さんと根本さん

Q.地域おこし協力隊としての活動期間(3年間)を過ぎても、鯖江で暮らしていらっしゃいますね。変わらず鯖江で暮らしたいと思える理由を教えてください。

根本私の鯖江での最初のミッションは、空き家の利用促進でした。そのミッションを最初にいただいた時、行政の担当者の方が、たくさんの地元の方と出会わせてくれました。そのおかげでスムーズに地域にも馴染めたし、プロジェクトを通してさらに友人・知人ができた。そうしてどんどん土地や人への想いが深くなり、任期が終わった後も鯖江に住み続けることにしました。

このほか、地方でパラレルキャリアを実現するモデルケースになりたいという想いもあります。今はフリーランスで、民泊の運営や移住促進、地域おこし協力隊の現役メンバーのサポート、さらには友人のドローンスクールの講師をしています。

フリーランスとして色々な仕事に関わってみようと思えたのは、鯖江の風土も影響しています。ご存知の方も多いと思いますが、鯖江はメガネの町。工程ごとに独立して会社があるため、人口に占める自営業の割合が多いのです。活動の中で地域の自営業の人と話す中で、「生きていく方法は様々なんだな」と気づけたこともあり、引き続き鯖江で暮らすことにしました。

林業が生み出す新しい鯖江のこれから

Q.根本さんにとってのEVOLUTION × LOVEを教えてください。

根本鯖江で暮らすうちに、林業に興味を持つようになりました。キッカケは「山林舎」という、山林をおもしろく活用しようと企画している団体との出会いです。福井では林が手つかずの状態で残っていると知り、「じゃあ他の県ではどうしているんだろう?」と考えるようになりました。そこで去年の12月、和歌山で林業を営んでいる会社に1ヶ月弱、実地研修に行きました。

研修を通して学んだのは、意外にも、“自分らしい生き方”の実現。その会社では朝早くから仕事をスタートして、昼には終わり。あとは自分の時間という就業規則。だからみんな午後以降は家事や買い物をしたり、家族や自分の時間を過ごしたり、自分らしく暮らしているのですよ。「自分らしく暮らす」っていいな、と改めて強く思うようになりました。

現代は働き方が画一化されているけど、「鯖江に来れば自分らしい生き方ができる」ということを林業を通して伝えたい。それが、私にとっての「進化する愛」だと思います。

行政と地域で創る、鯖江のミライ。

SDGsフェスの山林舎ブースにて

Q.今の活動にあたり、足りていないことや困っていることはありますか?

根本やっぱり、福井の林業と移住を盛り上げていける仲間ですね。林業は重要なインフラ産業で、既存組織の組織力も強い業種です。とはいえ地域や林業の未来のためには、新しい仕組みを考えたり若手の参入が欠かせません。そのためにも、同じ志を持つ仲間を増やす必要性を感じています。

林業という大きな産業構造を一人で変えることはできません。また、「どこから手を付けたらいいか」というのも未開拓な状況。そのため一緒に現状を分析し、動いていく仲間がいたら心強いですね。

行政と地域で創る、鯖江のミライ。

森林作業道の地拵え研修

Q.最近の若者(主に学生〜社会人3年目)との接点はありますか?彼らと接することで感じることはありますか?

根本色々な取り組みの中で若い人と関わって感じるのは、仕事以外の自分の時間、自分の人生について深く考えざるを得ない子が多いということ。今の若い子って、目的思考の教育を受けている世代だと思います。つまり、何か目的ややりたいことがないとダメだと感じてしまう。

仕事においても、「なぜ働くのか?」「なんのために人生の貴重な時間を“仕事”に使っているんだろう」と困っている子が多いです。

「私は鯖江での生き方で目的や明確なゴールがなくても、生きたいように生きていれば良い。」と思えるようになりました。そして同じように、地方での暮らしを選んでいる若い人たちも、悩むことはあれど「自分は選んでここにいる」と納得感を持っている人が多い印象です。

たとえば鯖江では、日曜休みの商業施設や個人店が珍しくありません。都会では日曜休みの商業施設ってほとんどないですよね。でも鯖江で日曜休みが多いのは、「自分のお店で、自分が作っている環境だから、自分の人生に合わせたものにする」という考えがあるから。そういう気質の中で生きているので、気持ちにゆとりというか余白がある人が多いと思います。

   ありがとうございました!行政はもちろん、人との出会いから次々と新しいミッションを見つけていく根本さん。次はどんなつながりが生まれ、鯖江の活性化につながるか楽しみです。今後の根本さんの活動にも注目しつつ、微力ながら応援させていただきます。