空でつながろう

Interview Vol.125 地域商社「こゆ財団」を立ち上げ、
「地元にもう一度、共感と期待を。
〜稼いで町に再投資する〜」

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第125弾の今回は、宮崎県新富町で一般財団法人こゆ地域づくり推進機構を立ち上げ、農産物のブランドづくりや持続可能なまちづくりに取り組む、代表理事の岡本啓二さんにお話を伺いました。

「持続可能なまちづくり」へ
しっかりと取り組める
財団の設立へ。

岡本さんの現在の活動について教えてください。

岡本2017年に一般社団法人こゆ地域づくり推進機構を立ち上げて、まずは3年間、執行理事を務めました。その後、2022年からは新富町長の秘書室長に。そして2025年からは財団の代表理事に就任しました。

地域商社「こゆ財団」を立ち上げ、「地元にもう一度、共感と期待を。〜稼いで町に再投資する〜」

岡本啓二さん(財団設立当初)

地域商社「こゆ財団」を立ち上げ、「地元にもう一度、共感と期待を。〜稼いで町に再投資する〜」

こゆ財団外観

そうした活動を始めたきっかけは?

岡本私は生まれも育ちも新富町。大学を出て町役場に入り、町を盛り上げたい一心で、子どもたちのイベントをやったり、農業の新しい取り組みに挑戦したりしてきました。でも、少子高齢化が進む町の姿を見て、「このままじゃだめだ」と感じるようになったんです。

そのときに思ったのが、「町のためには、ちゃんと稼げる仕組みが必要だ」ということでした。役場の仕事だけでは“稼ぐ”ことが難しいし、補助金で支える仕組みはあっても、肝心の商売人自体が少なくなっていた。だからこそ、役場と一緒に走れる法人を作ろうと考えたんです。 そこで当時の町長に「稼いで町に再投資できる法人を」と提案し承認を得ましたが、予算はゼロ(笑)。自分で資金を調達する前提で「まずはふるさと納税の業務に携わらせてほしい」と申し出たのが出発点です。そこから、返礼品の開発とラインナップ強化、PRや運用体制の再設計、そして事業者の開拓と共同の商品開発に本気で取り組むと、年間2,000万円規模だった寄付は9か月で4億円へと伸び、ふるさと納税の可能性を確かな手応えとしてつかみました。この成果を一過性にせず、町の意向を真ん中に据えて持続可能なまちづくりを進めるため、自治体が外部に委託する代わりに地元の財団に任せてもらう構想を議会に提案。2016年12月の初回は否決されましたが、ガバナンスや業務範囲、資金の循環を磨き直して丁寧に説明を重ね、2017年3月に可決、同年に財団を設立し、役場からの出向という形で主たる業務としてふるさと納税の受託運営を担い始めました。外に流れていたお金とノウハウを町に残す——その狙いどおり、返礼品は当初の約50品から、町内の店舗や農家を一軒一軒訪ね、東京で肉の試食会も開きながら最終的に300品へと拡充し、地域の魅力が可視化され寄付の裾野が広がりました。増えた収益はライチのブランド化や空き家の宿泊施設整備といった次の投資へつながり、ふるさと納税を起点に「町の意向×民間の実装」という循環が、静かに、確かに回り始めています。

地域商社「こゆ財団」を立ち上げ、「地元にもう一度、共感と期待を。〜稼いで町に再投資する〜」

1粒1000円「新富ライチ」

岡本さんにとっての地域活性を教えてください。

岡本地域が元気になるかどうかは、結局「人」だと思っています。面白い人がいれば、そこにまた人が集まるし、町もどんどん生き生きしていく。だから「やりたいことは新富町で何でもできるよ」という空気を作って、その挑戦を支えるのが僕たちの役割だと思っています。

これからは100の事業を生み出して、それぞれが小さなコミュニティになって広がっていけばいいなと思っています。来年度からは町の文化会館の運営も担う予定なんですが、ここも新しいチャレンジの舞台にしていきたいですね。小さくても挑戦が次々に生まれる町って、絶対ワクワクしますから。

地域商社「こゆ財団」を立ち上げ、「地元にもう一度、共感と期待を。〜稼いで町に再投資する〜」

毎月第3日曜日に行われるこゆ朝市

仲間とともに行動を
継続する大切さを実感。

岡本さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

岡本財団を立ち上げたばかりの頃、「自分が犠牲になってでも全力で頑張れば、地域が面白くなり、周りのみんなが笑顔になれる」と考えていました。

その思いだけで、朝から晩まで走り続け、成果を求めて必死に働きましたが、現実はそう甘くありませんでしたね(苦笑) 何度も壁にぶつかり、心が折れそうになる日もあって、「自分はいったい何のために財団をつくったのだろう」と、自問と後悔を繰り返す日々が続いた事を覚えています。

今振り返れば、あの頃の私には「愛」という大切な視点が欠けていました。

仲間を信じ、支え合い、感謝しながら前に進むという、当たり前でいて一番大切な想いを見落としてましたね。

その教訓から、「一人でできることには限界がある。仲間や家族、地域のみんながいてくれるからこそ、想像を超える未来に挑戦できる」。がむしゃらに突っ走るのではなく、互いに手を取り合い、笑い合い、支え合いながら前へ進むことをとても大事にしています。

それこそが、私にとっての “E_V_O_L_U_T_I_O_N × L_O_V_E” です。

地域商社「こゆ財団」を立ち上げ、「地元にもう一度、共感と期待を。〜稼いで町に再投資する〜」

新富町の風景

10年、20年後のビジョンを教えてください。

岡本これからは「半々ビジネス」を増やしていきたいんです。半分は地域のために意味を持ち、もう半分はしっかりビジネスとして稼ぐ。その両立を目指すことで、地域が持続可能であり続ける仕組みを作りたい。

そのために、これからもチャレンジを続けていきたいと思います。

地域商社「こゆ財団」を立ち上げ、「地元にもう一度、共感と期待を。〜稼いで町に再投資する〜」

財団:目的、ビジョン、ミッション

岡本さん、ありがとうございました! 財団設立からこれまでの歩み、そして仲間と共に進めてきた数々の挑戦。岡本さんの「稼いで町に再投資する」という想いが、これからどんな未来を描いていくのか楽しみです。