Interview Vol.129
兄弟で店を継ぎ、生まれ育った
大津市石山寺地域のために
店と街のPRに力を注ぐ。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第129弾の今回は、滋賀県大津市の名刹、石山寺門前で飲食店を経営しながら店と街のPR活動に尽力する井上貫太さんに話を伺いました。
井上貫太さん
100年フードに選ばれた
「大津のうなぎ」のおいしさを
もっと発信していきたい。
現在の活動について教えて下さい。
井上大津市の石山寺参道にある、鮒ずしや佃煮の店「至誠庵」と、石山寺の名物である志じみ釜めしや鰻を提供する「湖舟」で、跡継ぎとして仕事をしています。もともとは「至誠庵」のみの経営でしたが、10年前にМ&Aで「湖舟」も営むことになりました。古くから、石山寺周辺の店舗で構成されている石山観光協会にて役職を与えていただき、観光振興をはじめ、地域発展に微力ながら取り組んでおります。最近は、大津市の食文化として「うなぎ」が100年フードにも認定されました。大津市内にあるうなぎ屋さんと観光協会と共に大津市の食文化を発信することで、観光客の方々に大津市に来ていただきたいと考えております。また大津市民の方々にも「大津のうなぎ」が地域の食文化であることを根差すために、奮闘しております。
井上貫太さんが運営する飲食店「湖舟」
大津市で活動することになったきっかけを教えてください。
井上生まれ育ちも大津のわたしですが、小学校3年の時に父が亡くなりました。父が鰻を焼いている姿を見て「かっこいいな」とずっと思っていました。私たちも大きくなり、弟が料理の道へ進んでくれたので、兄弟で「石山寺で鰻屋さんができたらいいね、その店が有名になって石山寺に来る人が増えたらいいよね」と話していたので、父が亡くなったのをきっかけに2人で「湖舟」にて父がやっていたうなぎ事業を復活させることができました。
生前、父は石山寺や石山寺周辺に店舗を構える人たちや観光協会の方々と一緒に事業を行い、地域のことに熱心に活動していたこともあり、先代座主がその仲間の人たちに「「あの兄弟を地域で育ててやってくれよ」と仰っていただき、地域の方々が僕たちの父親代わりのようになってくれました。皆さん、自分の事業を営みながら地域の発展のためにも力を尽くしている方々の、すばらしい背中を見せてもらっているおかげで僕たちも成長できたし、今では、そんな背中に追いつけ追い越せの気持ちで精進しています。そこには、いままでの恩返しの気持ちで自分たちの商売をしっかりとやっていき石山寺地域の観光発展につなげていきたいと考えるようになりました。
滋賀県名物の「ふなずし」大津の食文化「うなぎ」については、うなぎは、大津市にきたらうなぎを食べてほしい!観光を支える大事な食でこれからどんどん発信していきたいです。昨年、開催された「うなぎフェスイベント」では、1日目雨にもかかわらず多くのお客さんがご来場いただきました。注目度はあると実感したので、これからも出店などで「大津のうなぎは100年フードに認定されていて、大津の食文化の一つですよ」という認知を広げていきたいと思っています。
滋賀の最高級の味を詰め込んだ、炭火焼き近江牛とうなぎのかば焼き重。
井上さんにとっての地域活性を教えてください。
井上まず、住む人が増えることが大切だと思います。観光客も、もちろん増えてほしいと思いますが、まちに住む人を増やすことが地域活性につながると考えます。京都のように、毎日たくさんの観光客が訪れる街なら、どんどん観光客が増えることが重要だと考えるかもしれませんが、大津市はまだそこまでなっていないと感じます。むしろ地元に住む私たちが知っている「大津市ってこんないいところだよ。こんなに行くところがあって楽しい街だよ」という生活の中で当たり前の出来事を、もっと外に向けて発信していければいいのではと思っています。
僕自身は、石山寺地域に関する思い入れが強いので、まずはこの地域が発展することが一番重要です。そこから他の地域に伝播して、歴史や文化がたくさんある大津市や滋賀県が住みやすい街ということを発信して豊かになっていければいいと思っています。
古き良きを継承し、
石山寺地域と店の魅力を
伝え続けることが使命。
井上さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
井上親の代から石山寺門前で商売をしてきて、父が亡くなった後、その父が抱いていた思いを地域の人々が教えてくれたその時から、僕の中で「将来は石山寺の門前で商売がしたい」という気持ちはずっと変わりませんでした。石山寺は、僕にとっては子どもの頃の遊び場という認識でしたが、国宝や重要文化財がたくさんあったり、天皇のご命令がないとご開帳できない勅封秘仏があったりと、日本中でも貴重な寺宝が多くあるところでもあります。また多くの人々に信仰される、いわば人々に寄り添う寺でもあります。そんなすばらしい石山寺をもっと広く知ってもらいたいと中学生の頃から考えるようになりましたね。石山寺を深く知ってもらって、石山寺に参拝される方にうちの店を知ってもらいたい、という気持ちは20年変わっていませんし、これからもその思いを持ち続けていきたいと思っています。約1300年と石山寺長い歴史の中で、僕らが携わらせていただいている期間は約数十年と短い。でも携わらせて頂けるこの貴重な間は、古き良き歴史と文化を継承していくこと、また僕らの下の世代の人たちにもその魅力をどう伝えていくのかを自分の使命とすること、それが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。
10年後、20年後はどうなっていたいですか?
井上僕にとっては、やっぱりこの石山寺周辺地域が一番大切です。石山寺をまちの象徴として、このあたりが滋賀県で一番住みやすい街になっているといいと思いますね。そのためにもっと学んで力をつけていきたいと思います。
また、最近はリラックスやゆとりの時間というのも重要なキーワードになってきているので、そういうところも打ち出していって、観光振興並びにこの地域や滋賀県に住む人が増えたらいいと考えています。仕事としては、将来、僕が代表になったら県内外のいろいろな地域に店舗を構えて、「この店ってどこから来てんの?」「滋賀県の石山寺に本店があるらしいで!」と言われるようになって、「じゃあ、滋賀県に行ってみたいな!」と思ってくれる人が増えるようになったらいいとも思います。滋賀県のお酒や食材など、滋賀県の味にこだわる店がいくつもできるといいなと考えています。
石山寺地域・大津市から滋賀県の観光振興・地域発展をさせるために、より多くの方々を惹きつけられるような活動をこれからも続けていきます。

井上さん、ありがとうございました!地域の皆さんへの感謝の恩を忘れず、店のPRだけではなく石山寺地域・大津市全体の魅力をより広く発信しようと頑張る井上さんの活動を、今後も応援させていただきます。