Interview Vol.130
オーダースーツづくりを通して
日本や世界から注目される
滋賀県守山市をめざす。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第130弾の今回は、滋賀県守山市でオーダースーツの店「DAVID LAYER」を営み、国内外にその名を広めて地域活性化に貢献する伴野友彦さんに話を伺いました。
伴野友彦さん
好きなことを楽しむ事で、
生まれ故郷の滋賀に恩返しをしたい。
現在の活動について教えて下さい。
伴野滋賀県守山市でオーダースーツ専門店「DAVID LAYER」を営んでいます。今年で14年を迎えます。現在、本店の守山店をはじめ東京・代官山、ニューヨーク・ブルックリンの3店を展開しています。
メンズとレディースのスーツだけではなく、シャツやネクタイ、ベルト、シューズなどトータルコーディネートもオーダーで承っています。
守山市で活動することになった地元への思いを教えてください。
伴野生まれて45年間住み続けている滋賀県守山市に対して恩返しがしたいと思い、ここで店を開きました。もともと「滋賀県から世界をめざす」という思いが強かったこと、それを証明したいという思いがありました。東京や大阪、名古屋などいわゆる日本の都心部には何かを成し遂げやすい環境が整っていますが、それを地元の滋賀で実現することにやりがいがあると感じました。
開業してから14年が経ち、滋賀県のお客さんはもちろんのこと、紹介でお客様が徐々に広がっていろいろなところから来ていただけるようになりました。本当に地域のお客様に助けていただいたと感謝しています。
守山市で独立したきっかけを教えて下さい。
伴野中学時代、バスケット部に所属していて、先輩との間に起こったささいなことが原因で僕は先生からの評価が悪くなり、試合に出してもらえなくなりました。その時から「相手が先輩でも自分で言うべきことは言おう」と、周囲を気にせずやりたいことをやることにしたのです。
勉強は苦手でしたが、高校3年の時に「大学へ行きたい」と思い始め、先生に「最後まであきらめなかったら可能性はある。簡単にあきらめるな」と言われて火がつき、必死に勉強して大学に合格しました。そこで「最後まであきらめなかったら可能性はある」ということを体験しました。生まれ育った滋賀でのこの2つの経験が、今の自分につながっている。だから滋賀に恩返しをしたいという気持ちが芽生え始めました。
大学時代にいろいろな人とつながりを持ちました。その頃から、自分で経営をしたいという気持ちが生まれてきました。会社に務めるということに違和感があり、「自分が好きな仕事をしたほうが絶対に人生は楽しいだろう」と考えていました。でも何をしたらよいかわからず、「とりあえずスーツを着て働きたい」と就職しました。2週間で辞めてしまいましたけれどね(笑)。
その後24歳で安定した人生のためにまた企業に就職しました。しかし型にはまった生活が嫌になって。その時にオーダースーツの店と出会ったことで「今動かな、絶対に後悔するな」と考え、妻や両親の反対も押し切って念願の店を持ちました。「きっと将来、この経験が自分のストーリーになる」と信じていましたね。
最初は家賃1万円のトイレや試着室もないようなところで、弟と2人で「DAVID LAYER」をスタートしました。お客さんは月に1人か2人で、お金もないし、がむしゃらに行動してましたね。僕には成功者ではなく、常に成長者でいたいという思いがあって、とにかく成長するイメージしか考えずに走ってきました。
伴野さんにとっての地域活性を教えてください。
伴野SNSが普及し出してから、「まずは知ってもらうことが大切」と考えて、「DAVID LAYER」や僕自身が有名になるように発信してきました。交流会も手当たり次第顔を出しましたね。3万人くらいは名刺交換したと思います。
地域活性化に大切なことは、都会からここへ買い物に来てもらうこと。田舎から都会へ買い物に行くのは当たり前ですが、その逆は難しい。そのことを意識しながら、滋賀県だけではなく京都、大阪、神戸、奈良や三重などをターゲットに、オーダースーツのすばらしさを発信し続けてきました。新庄剛志さんが日本ハムファイターズの監督就任の際に着用されたスーツを作らせていただいたことや、ミラノやパリのファッションショー出展など、多くの実績も追い風になったと思います。
DAVID LAYERのスーツデザイン
日本ハムファイターズ 新庄監督が
就任記者会見時に着用されたスーツデザイン
「なぜ滋賀でやっているのか?」といろいろな方からいわれ続けましたが、「滋賀でもできる」ということをずっと証明したいと考えていましたし、また全国から来店されたお客様から「このあたりでおいしいところないですか?」と聞かれる、こういう地域との架け橋がまさに僕のやりたかったことでした。この架け橋が地域活性化につながるし、街にお金を落としていただくことで地域貢献にもなっているのではないかと思っています。日本だけではなく、世界に通用する仕事をして世界中の人に滋賀を知ってもらいたいという気持ちもありますね。
ちなみに僕は、外国人に自己紹介するときに伴野 友彦なので「I’mトモ・クルーズ」といっています(笑)。またスーツも、和柄のものや2色使いのものを着用するようにして、とにかくインパクトを与えて、僕たちの店自体を観光拠点にしていきたいと考えています。でもまだ全然満足はしていない。ずっと滋賀を活性化し続けていきたいと思っています。
ファッションショー出展時、モデルさん着用のスーツチェック
お客様に愛を伝えることで
個性を最大限引き出す
世界に1着のスーツを。
伴野さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
伴野この仕事を通して出会うお客様に「愛着が湧く、愛のオーダースーツ」を作り続けることがテーマです。お客様の“好き”のその上には何があるだろうと考えたら、その答えは感動です。お客様が感動するようなオーダースーツを作りたい、さらにその感動の上には何があるのだろうと考えると、幸せがあると僕は考えています。着ることで幸せを感じてほしいなと。その幸せの先に何があるかと考えたら、愛着です。だから僕は、着る人が常に愛着を感じられる、そんな愛を伝えられるオーダースーツを作る「DAVID LAYER」を発展させたいと思っています。
今、世界の人口は80億人いますが、うちの店なら組み合わせ次第で150億通りのスーツができる。まさにお客様の個性を最大限に引き出す愛のオーダースーツを作ることができます。時にはお客様からクレームをいただくこともあり、まだまだ愛が足りなかったんじゃないか、より満足していただくにはどうすればよいかと学ばせてもらうこともたくさんあります。そのためにお客様と真摯に向き合い、自分たちの目標やビジョンを日々進化させ続けること。滋賀県で愛のあるスーツブランドを発展させ続けること、それが僕にとってのEVOLUTION✕LOVEです。
DAVID LAYERスタッフの皆さん
10年、20年後はどうなっていたいと考えていますか?
伴野滋賀発のスーツブランドとしてより多くの人に認識していただき、「DAVID LAYER」をひとつの観光名所として発展させたいですね。外国の方からも滋賀はnear京都ではなく、琵琶湖だけではなく、「DAVID LAYER」がある観光地、と認知してもらえるようにしていたいです。
また社員を今より幸せにしていたいと思います。アパレルや美容関係はどうしても給与面が低いイメージがあります。それを覆したいとずっと考えていて。自分たちの店だけではなく、業界全体が、若い人たちに夢を与えられるような場所にしていきたいと考えています。
ニューヨーク ブルックリンの店舗付近にて

伴野さん、ありがとうございました!愛を伝えるスーツづくりを通して地域を活性化し、業界全体を盛り上げていこうと国内外で活動し続ける伴野さんを、今後も応援させていただきます。