空でつながろう

Interview Vol.133 公務員×中小企業診断士の2つの顔を
最大限活用しながら「まちの親愛なる隣人」として
大津市をもっと盛り上げたい!

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第133弾の今回は、滋賀県大津市役所で企画調整課の遊撃部隊として勤務しながら、中小企業診断士として地域の中小企業の経営支援も行う長谷川祐介さんに話を伺いました。

公務員×中小企業診断士の2つの顔を最大限活用しながら「まちの親愛なる隣人」として大津市をもっと盛り上げたい!

長谷川祐介さん

「世の中の役に立ちたい」思いで
公務員になり、中小企業診断士へ。

現在の活動について教えて下さい。

長谷川大津市役所の企画調整課に所属し、主に地方創生に関する仕事を行っています。具体的には、シティプロモーション、空き家の掘り起こし・利活用促進や、人口減少が著しい地域の活性化などを企画立案し、自ら実行しています。また、「一般社団法人Community Boost Consulting」の代表(無報酬)を務め、持続可能なまちづくりや地域活性化の支援、企業診断や経営計画策定など経営に関する支援を行っています。主に商工会経由で中小企業の経営支援にあたっており、経営状況を見える化し、状況に応じてDX化のサポートなど、伴走支援を行うことが多いですね。

大津市で活動することになったきっかけを教えてください。

長谷川もともと、総合化学メーカーで5年間、プロセスエンジニアとして働いていました。工場の最前線で、いかにオペレーターの安全を確保しながら効率的にものづくりを行うか、という仕事です。大きなプロジェクトにも携わらせていただき、仕事は非常に充実していたのですが、常に「この仕事は誰の役に立っているのだろう」というモヤモヤとした思いを抱えていました。BtoBの仕事なので、消費者の姿が見えなかったんです。

「世の中の役に立っていると実感できる仕事がしたい」と思っていたちょうどその時、石破さんが地方創生を打ち出し始めました。「これはおもしろそうだ。これからは地方の時代だ」と考えて、公務員に転職し大津市役所で働き始めました。

ある時、仕事で指定管理業者を選出する際に貸借対照表や損益計算書を読む必要があったのですが、民間企業出身にも関わらず、全く数字が読めず悔しい思いをしました。私は市役所を飛び出して地域や民間の人と交流するのが好きで、例えばOtsu Living Labなどに所属しています。これまでさまざまなプロジェクトに関わらせてもらったのですが、やっぱり数字が読めないことが悔しくて。公務員として民間のプレーヤーに貢献できないかと考えていた時にコロナ禍になり、時間ができたので頑張って勉強をして、中小企業診断士の資格を3年かけて取得しました。

それでも、資格を取っただけでは企業や経営者、民間の役には立ちません。もっと覚悟を見せる必要がある、私も法人を作れないかと考えて、「一般社団法人Community Boost Consulting」を立ち上げました。

公務員の仕事は2、3年で異動があるのでなかなか専門性を高めることはできません。しかしながら、中小企業診断士としての活動は、ライフワークとして取り組み、その活動で得た知識・ノウハウ・人脈等を大津市政課題解決に活かしていきたいと考えております。

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Otsu Living Labの皆さん

一般社団法人を立ち上げて変化はありましたか?

長谷川市役所は、身近なようで身近ではない存在だと思います。だからこそ自分は「大津市の職員の長谷川さんなら知っている」と言われるような人になりたくて、市役所で待つのではなく、自分から積極的に地域のワークショップやイベントに顔を出すようにしています。そこで困っている人がいたら「気軽に相談してくださいね」と声をかけて。自分がこうやって活動することで、「市役所って身近な存在なんだ」と感じてもらえることが徐々に増えてきていると思います

中小企業診断士として支援させていただく際も公務員であることを堂々と伝えます。それによって、市役所の人と知り合えたと思ってもらえたらいいと考えています。そういう意味では、うまく公務員という立場が活きていると思いますね。

最近よく「いつ公務員を辞めるんですか?」と聞かれますが、私は辞めるつもりはありません。人々の生活を支えるには、経済原理だけでは進められないことがあります。その時、ノンプロフィットの仕事ができる公務員の存在はとても貴重です。

例えば空き家の利活用でいえば、不動産会社が通常の売買をすると、「安いから買ったが地域のコミュニティには入りたくない」という人が住むかもしれません。それは買った人の自由で問題はないと思いますが、地域の皆さんが大事にしてきたことも守っていかなくてはならない。そういう視点に立った空き家の利活用を考えることができるのは、公務員だからこそだと思っています。公務員視点で考えると、地域の皆さんに喜ばれ、地域の活力やコミュニティの維持にもつながります。

一方で、産業は経済原理で成り立っているのも事実で、両者のバランスが重要なのですが、その感覚は、経済原理を肌で学ぶことのできる中小企業診断士の活動が活きています。

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企画調整課職員としての移住者交流会を開催した時の様子

長谷川さんにとっての地域活性を教えてください。

長谷川地域全体を見ることができる私の立場でやるべきことは、人と人をつなぐことです。例えば、都会の人と、人口減少が著しい地域に住む人をつなぐことができるのは、私のような立場の人間だと思っています。また経営状況も見られるという視点から、この人とこの人がつながったらおもしろいとか、もっとまちが活気づくだろうと考えてつなげる。その積み重ねが地域活性化だと考えています。

地方は、東京や大阪みたいにリソースが豊富にあるわけではないので、地域で同じことをやるのは非効率なこともあります。だから同じことをやっている人がいたら協力して地域経済を作っていけるようにしたり、人が足りない時には協働したりしないと、地方は成り立たないんです。

私は、中小企業診断士としての現場感覚もきちんと持っています。その安心感を地域の人に持ってもらいながら動いていきたいと考えています。滋賀県はまだまだポテンシャルがあるまちですからね。

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中小企業診断士として創業塾のセミナー登壇

公務員の壁を乗り越えて
地域に寄り添える人を増やしたい。

長谷川さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

長谷川やはり、公務員と中小企業診断士としての側面を持って活動をしていることです。たった1回の人生だし、悔いがないように生きようと思って壁を超えましたが、これからはそういう人が増えてくると思います。どこも人材難の中、公務員だからといって公のことだけをやっていても間に合わない。

実際に他の県でも朝はバスの運転手で昼から県庁で働く人や、耕作放棄地でホップを作って一般社団法人でビールを作る公務員もいます。すぐには無理かもしれませんが、そういうマインドを持った人が一歩踏み出せるような道筋を作れたらいいと思っています。それが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。

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大津市役所勤務時の長谷川さん

10年、20年後はどうなっていたいと考えていますか?

長谷川公務員は転勤がないため、ずっとその地域にいる存在です。だからこそ、もっと公務員が、人としての観点で地域の貴重な経営資源として活躍できれば、さらに地域はよくなっていくのではないでしょうか。私は中小企業診断士という手段で地域と関わろうと決めましたが、それだけではなくやれることはたくさんあります。若い公務員の方々が何かしらの形で地域に関わってくれるようになると、もっとまちは活性化すると思いますね。

長谷川さん、ありがとうございました!公務員という立場を最大限活用しながら、地域の皆さんと深く関わり、活性化につなげていく長谷川さんの活動を、今後も応援させていただきます。