Interview Vol.136
すべては「人」がキーワード!
高島市で情報発信活動をしながら、
人と人、人と未来をつないでいく。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第136弾の今回は、滋賀県高島市で地域情報のサイトやコミュニティスペースを運営して人と人をつなぐきっかけづくりを行う田中可奈子さんに話を伺いました。
田中可奈子さん
「ご機嫌な人」を増やすことが
地域活性化の源に。
現在の活動について教えて下さい。
田中地域情報発信サイト「たかしまじかん」と、「コミュニティスペースwacca」を運営しています。また合同会社「core」を設立し、PRプロデューサーとして企業の広報活動のサポートを行ったり、行政や観光協会、商工会の依頼を受けて様々な活動支援を行ったりしています。
wacca内観
高島市で活動することになったきっかけを教えてください。
田中私は岡山出身で、もともと地元の企業で正社員として働いていました。でも将来のことを考えて、仕事の合間にWebの勉強をしました。もともと東京に関心があったので、Webのスキルが身についた段階で上京し、化粧品会社やメディア会社でWeb情報発信の仕事などに携わりました。
高島市へ移住したきっかけは、東京で知り合った主人と結婚したことです。主人は高島市へ帰ることが決まっていたので、こちらにある本社への転勤のタイミングで引っ越しました。子どもも生まれましたが、何か仕事をしたいと考えつつ暗中模索をしていました。高島は自分が考えていた以上にローカル。お店や子育ての情報を検索してもなかなか自分が思うような情報が手に入りません。でも地元雑誌のライターをしていると、いろいろな情報が入ってきて、何もないわけではないということがわかってきました。人とつながりだしたら、意外とこんなことがあるんだ、そんな人がいるんだってことも見えてきました。だったら自分が伝える側になればいいと考えて、2017年にWebメディア「たかしまじかん」を立ち上げました。そこが今の自分の原点ともいえます。
「たかしまじかん」を運営するうちにいろいろな人と関係を構築することができて、行政の移住政策やまちづくりなど、いくつかのプロジェクトに関わらせていただいています。こうした活動を通して出会った人たちとマルシェやイベントを運営するようになりましたが、思うように活動できる場所がなかったことから、自宅の敷地内の納屋を整理して2020年に「コミュニティスペースwacca」を作りました。ここでは音楽イベントや、オンラインイベントを開催したり、企業の研修や行政の会議に活用していただいたりしています。
またさまざまな店を取材する中で、意外と自分の店の商品やサービスの魅力を発信できていないところが多いとも感じました。その時にちょうどWebマーケティングの起業塾とPR塾に出会って。そこでもいろいろな人に関わり、あらためてPRの重要性を実感し、会社を立ち上げました。私がやることで、地元の方々に、主婦でも、それなりに高齢でも、いろいろなことができるということを示すことはひとつの刺激につながっているかなと感じています。
発酵ワークショップ
「たかしまじかん」や「wacca」を立ち上げてから変化はありましたか?
田中「たかしまじかん」は1人で取材して動いているので、時間はかかっていますがだんだん認知度が高まってきたと思います。最初は皆さん、Webに情報を出すことに関する抵抗があって、例えば取材に行くと「どこの誰ですか?」とか「どこからお金はもらっているんですか?」とか聞かれて。でもSNSで情報を発信するということが当たり前のような世の中になってきて、比較的肯定感を持って捉えていただけるようになったと思います。こうやって多くの店や人とつながり、そのおかげで「田中さんに聞けば誰か知っている」と言っていただけるまでになってきましたね。また私の発信をきっかけに移住したとか、実際に私に会いに来てくれて話して、移住に前向きになったとかいう嬉しい変化もあります。私が人と人をつないだり、お店を紹介したりするハブ的な動きをすることで、その先に新しいことが生まれて街に変化が起きたらいいと思っています。
「wacca」は当初、コワーキングスペースとしてオープンしたのですが、やはり地方ではコワーキング事業がなかなかニーズがないので今はイベントスペースとして活用しています。それでも、場ができたことによって「ちょっと行っていいですか」と連絡があったり、人と会うきっかけにつながっていい関係が生まれていますね。また企業の研修などで使っていただくことで関係人口も増えてきていると思います。
関係人口創出のためのキャリア座談会
田中さんにとっての地域活性を教えてください。
田中結局、人だと思います。やっぱり住んでいる地域に好きな人がだんだん増えてくると、その人が大切にしていることや、その人の背景にある景色だとか、その人を育んだ環境までもがすべて愛おしいと思えて、それが高島市への思いと重なっていくことが地域を活性化する源だと考えています。行政の仕事に関わっていると、どうしても課題に目が向きがちになったり、また都会との比較が物差しになって、例えば人口が減ったら衰退とか考えてしまいがちです。それは事実として受け止めて考えていき、その一方で、地域を活性化するには滋賀や高島市で「ご機嫌な人」を増やすということが一番大事だと思っています。その人が求める価値がここにあるかどうかが大切。お金があるとご機嫌、という人には難しいかもしれませんが、ここには自然があって、自分のやりたいことを自分サイズで叶えることができる選択肢がある。私のように選んで滋賀県に来たわけでもない人でも、何らかを選択し、できることが増えるようになることが重要で、それでご機嫌になれる人が増えたら、もっと地域が元気になると思っています。
自分で生き方を選択できる人に。
そのきっかけづくりをしていきたい。
田中さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
田中やっぱり人が鍵です。女性は結婚や出産という影響を受けることが多く、例えば人生の中で仕事をする時間は結構長いですが、その仕事を楽しめず、家に帰っても子育てや妻の役割があって、生きることに対して自らが選択することが難しいです。そうではなくて自分で生き方を選択できる人が増えたらいいと思っています。私のちょっとしたお節介や行動が小さな芽を出して広がって、その先でまた新しいことが生まれるとか、その人の可能性を広げるためのきっかけとして私という存在があればいいなと考えています。「wacca」は円という意味ですが、その円の中心に私がいるのではなく、自分がきっかけで行ったイベントに人が集まって縁ができていく、それが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。
音楽イべント
10年、20年後はどうなっていたいと考えていますか?
田中私が蒔いた種が、時を経ても形を変えてつながっていけばいいなと思っています。例えばなにかにチャレンジする人がいて、形が変わっても次の世代にそういうマインドがつながっていけばいい。自分が受け取って終わり、ではなく、受け取った人がもらった人に返せなくても、別の方につないでいけるような。例えば私という名前が消えても、「田中さんって目立っていたよね。でも目立つって別に変なことじゃないよね」とか、そういう多様な価値観が何らかの形で残っていけばいいと思います。

田中さん、ありがとうございました!人と人、人と場をつなぐハブとして縁のきっかけを作り続けていく田中さんの活動を、今後も応援させていただきます。