空でつながろう

Interview Vol.138 個々の発信を大切に、
人やモノ、コト、まちの色を見い出し、
豊かさを提案する活動を滋賀・彦根で展開。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第138弾の今回は、1人ひとりのいろを大切にしながら人やモノ、コト、場所の魅力を再発見する活動を行う「株式会社いろあわせ」の北川雄士さんに話を伺いました。

個々の発信を大切に、人やモノ、コト、まちの色を見い出し、豊かさを提案する活動を滋賀・彦根で展開。

北川雄士さん

ストーリーや共感を作り、
価値を「見える化」する。

現在の活動について教えて下さい。

北川株式会社いろあわせを経営しています。滋賀県で働く人を増やすために合同企業説明会やインターンなどの運営、人材育成研修などを行っています。実際にインターンや就職イベントをきっかけにそのまま地域で働くということを選択する学生は、毎年増えていますね。またシティプロモーションの企画・運営や移住計画など、まちづくりに関することも行っています。

彦根市で活動することになったきっかけを教えてください。

北川大学時代に、シナジーマーケティングという会社で長期インターンシップを経験させてもらいました。当時まだ10名ほどの会社で、飛び込み営業をしていましたが、全然売れなくて、いかに自分は力がないかということを思い知らされました。卒業後は某広告代理店に入社して、僕自身は何も変わっていないのに初受注が1億円のテレビCMで、「これはあきらかに僕の力ではない」ということに気づきました。その時に、「一生働くならいい会社だけど、いつかこれが当たり前っていう感覚になったら、辞めなくなりそうだな」って感じましたね。もともと実家が商売をしていた影響もあって、独立しようと思っていたので、辞めて、シナジーマーケティングの社長に出資の相談にいったら「独立もいいけど、ウチの会社も面白くなってるで。手伝ってくれんか?」っていわれまして。そこで7年半ほど人事の仕事をさせてもらいました。僕が手伝い始めたときは30人ほどの会社でしたが、辞めるときは250人に増えて、その間に上場も経験させてもらって、いわゆるITベンチャーの急成長フェーズをひと通り経験させてもらった感じです。恩返しのつもりで入った会社でしたが、たくさんの人と会う経験、会社が成長するフェーズでの経験など、僕自身もまた新しい経験をさせてもらうことができて、さらに恩をいただいたような数年間でした。

ただ「一生ここの会社にいるのか」と葛藤した時に、僕自身がマーケティングエンジニアリングを生業にしていくことに対してコミットしきれなかったため、独立することを決意しました。

フリーランスで1年半の後、会社を設立しました。会社設立のときに考えたのは「社会に問いを立てたい」と思ったからです。北川個人ではなく、法人としてどういうテーマと向き合うのか(=経営理念)を立てることに意義があると感じて会社にしました。何をするかは決めきれなかったのですが、「滋賀を盛り上げる」ということだけを決めて、生まれ育った滋賀県で会社を立ち上げました。

個々の発信を大切に、人やモノ、コト、まちの色を見い出し、豊かさを提案する活動を滋賀・彦根で展開。

カフェconecone.を立ち上げ時の様子。
サポートを含め「地域側」になるよう、商店街組合の理事も務め、地域の祭りの企画や運営行う。

「いろあわせ」はどのような活動を行っていますか?

北川会社、人、モノ、まちの魅力を再発見して滋賀県の中にいる人たちが機嫌よく過ごせるような場作りをしています。例えば学生と企業なら採用ですし、上司と部下なら人材育成や組織開発などです。消費者と店ならブランディングになりますし、行政と市民ならまちづくりですね。いろいろなことの間でうまくいっていないことを言葉やデザイン、時にはイベントなどで表現し、魅力として伝えることを行っています。その時はどちらに対しても理解を示し、好意的な関わりを持つことを大切にしていますね。

個々の発信を大切に、人やモノ、コト、まちの色を見い出し、豊かさを提案する活動を滋賀・彦根で展開。

2025年関西万博の「滋賀魅力体験ウィーク」出展時の様子。謎解きで滋賀の魅力発信。

北川さんにとっての地域活性を教えてください。

北川地方活性は衰退したものを蘇らせるという文脈で言われることが多いです。年輩の方々が「あの頃はよかったよね」とよくいわれますが、それはその方たちのロマンであって、若い人たちは「そんなの知らんし」です。今あるものをどういうふうに楽しくするかだけなので、僕なら、シャッター商店街があったら「衰退して悲しい」とは思わず「自由に使っていい箱を用意してくださってありがとう」と感謝しますね。年輩の人たちと同じように「昔はよかった」といっていると道は開けない。もう価値がない、ではなく価値をちゃんと見える化できていないだけ。じゃあどうすればいいかというと、ストーリーが大事だと思います。何かこうできたらおもろいやん、というストーリーや共感を作ることで「じゃあやろう」という人たちがじわじわと増えて。そこから形になっていくことが大切です。

いろあわせでは、例えば就活のイベントを学生も採用側もノースーツにしてみるとか、先入観をなくすために、あえてブースに会社名を設けずに担当者が会社の魅力について話すなどして学生が持つ業界のイメージを払拭しています。

ひこにゃんも人気はあるけれど収益化できていないので、ファンの人の声に耳を傾けている中で、今年は「ひこにゃんディナーショー」が実現しました。

常に誰に何を提供するかということを徹底的に考えて、否定せずにいいと思うことをやる。それが自分も周りの人たちも楽しいし、お金も回っていくことだと考えています。

僕は滋賀をどうするとか、ビジョンを持ってチャレンジするという、熱狂的なストーリーは実は弱いと思っています。ビジョンが弱くても、自分たちが今の居場所をどうやって楽しくできるかを考える人が増えていけば、結果として滋賀県が面白くなると思います。

個々の発信を大切に、人やモノ、コト、まちの色を見い出し、豊かさを提案する活動を滋賀・彦根で展開。

次年度の行政の事業計画を立案する「しが若者アイデアソン」の様子。

「色即是空」「空即是色」の世界観で、
自分の意思で動ける人を増やしていく。

北川さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

北川僕は社員に「半年後何をやっているかわからん会社だからよろしくね」とよくいいます。常に楽しいチャレンジをしていきたいと思う気持ちと同時に、目標を定めないことを意識していて、創業以来、数字的な目標は作ったことはありません。数字を追うのは一見正解だけど、ずっとそこだけを見ていると疲弊するし、数字を達成することが目的になってしまいがちです。自分のスタイルやペースを大切にして、ちゃんと人を信頼していく、その自分に対して怖れを持たず堂々とできれば、結果的に数字はついてくるのだと思っています。創業の想いも大切ですが、もっと大切なのは、今いる人たちの意思です。すべてのものは変化の連続であり、永遠に変わらないものはないと理解することで執着を手放し苦しみから解放されるという空海の教え「色即是空」の世界観ですね。反対に実態がないからこそさまざまな形となって存在できることもあるという「空即是色」という考えもある。そういう社会を作っていけたらいいと思っています。それが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。

10年、20年後はどうなっていたいと考えていますか?

北川10年後どうあるべきかと考えないといけない、という風潮がもしあるならば、それに対するアンチテーゼで生きていると思いますね。今を生きて、自分と関わる半径5mの人を笑顔にしていきたい。反対にいえばそれ以外のことは考えていないと思いますね。

北川さん、ありがとうございました!自分のスタイルやペースで自立していける人が増えることをめざして活動を続ける北川さんを、今後も応援させていただきます。