空でつながろう

Interview Vol.146 群馬県前橋市の住宅団地を拠点に
官・民・学と地域が一体となって
まちづくりを考えていく。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第146弾の今回は、研究室の学生や地域とともに、群馬県前橋市で団地再生プロジェクトを運営しながらまちづくりを推進する前橋工科大学准教授の堤洋樹さんに話を伺いました。

群馬県前橋市の住宅団地を拠点に官・民・学と地域が一体となってまちづくりを考えていく。

堤洋樹さん

できることは片っ端からやる。
それが持続可能な地域社会のカギに。

現在の活動について教えて下さい。

堤研究室で学生らとともに公共施設の運用管理や自治体のファシリティマネジメントなどを中心に研究を行っています。公共施設を中心とした整備やまちづくりについて、これまで自治体の職員だけで進めていたことを、住民や企業とも組んで1つずつ実現していこうという取り組みです。

また、もともとは建物の長寿命化を実現させたいという思いが大前提ですので、建物のハードとソフト両面から、維持管理や再整備手法について検討や活動を行っています。

その他にも全国の自治体の取り組みに対してアドバイザー的な立場で参画し、公共施設のマネジメントに関するシンポジウムや講演会なども行っています。またNPO法人リデザインマネジメント研究所を立ち上げ、事業としても全国の自治体支援に関わっています。

「広瀬団地再生ビジョン」に取り組むことになったきっかけを教えてください。

全国各地に団地はありますが、大半は高度経済成長期に建てられたものなので、今まさに取り壊す時期に来ています。新しい建物を造る場合もありますが、財源も減少しているので自治体としては数を減らしたいところです。しかし住んでいる方がいるので減らせない、再生化したいけれどなかなか進まずに困っているというのが現状です。

そこで約2800戸を有する群馬県最大級の団地である広瀬団地に地域活動の拠点を作るため、約5年前から私たちは関わるようになりました。桐生信用金庫と前橋工科大学、群馬県住宅供給公社とインテリアショップスタイルとともにチームを作り、大学生の生活を多方面からサポートする団地再生プロジェクト「LIFORT」を創設しました。持続的な活動で広瀬団地の空き部屋に学生の入居を促し、団地の住民や地域の人々との多世代協創を実現するのが目標です。

建築の分野ではこうした場合、リノベーションを目的に団地と関わりを持つというのが大半です。もちろん私たちもリノベーションしましたが、それはあくまでも地域活動の拠点を作るためでの手段であり、必要に応じて自分たちができることを片っ端から実装するスタンスです。なお「LIFORT」を立ち上げる時に全国各地の団地再生事例を視察しましたが、多くの団地は私が理想とする団地再生手法ではありませんでした。

しかし細々と活動を続けていると、群馬県と前橋市、群馬県住宅供給公社が住民らとともに、広瀬団地全体の将来像となる「広瀬団地再生ビジョン」について議論を重ねる場が設定されることになり、現在は基本計画策定まで進みました。また国交省のモデル事業にも採択され、現在、行政と住民、地域の事業者と三者が中心となり地域再生推進法人を立ち上げる準備をしています。

今の団地の大半は高齢者が多く、子どもや若者など多世代とのつながりが少ない。だから私たちはまず団地に入って地域活動をする拠点を作り、そこで協力してくれる有志を増やして、継続的なつながりを広げていく取組みを大事にしています。

群馬県前橋市の住宅団地を拠点に官・民・学と地域が一体となってまちづくりを考えていく。

堤さんが計画に関与する広瀬団地の再生ビジョン(情報引用 https://www.gunma-jkk.or.jp/

活動を行い始めてから変化はありましたか?

広瀬団地での地域活動の仕組みはかなり回り出しています。例えば団地の公園掃除がしたいけれど人手がいない、といわれればまずは学生たちが手伝い実施します。こうした活動を重ねるうちに、次は公園をどうやって自分たちで整備しようかとみんなで自主的に考え始め、例えば市に頼らずとも整備できないかと具体的な議論や活動が始まる。そうやって活動の幅が大きくなり、生活が豊かになる仕組みづくりが進んでいると実感しています。これら広瀬団地の事例を参考に、全国の自治体にも同様のスキームを提案したいと思っています。 

群馬県前橋市の住宅団地を拠点に官・民・学と地域が一体となってまちづくりを考えていく。

毎年12月の団地掃除で集められた落ち葉を活用する焼き芋会

堤さんにとっての地域活性を教えてください。

地域活性は、結局地元の人々が頑張るしかないと思っています。地方では高齢化が進み人口も減少して活性化ができない、という話をよく聞きますが、そんなことはないことを、私たちの活動で示しているつもりです。よく「堤研究室には多くの学生がいるから活発な活動ができますよね」といわれますが、近くにある専門学校や大学、高校や中学と地域が話し合い、一緒にできそうなことを見つけて、楽しみながらやってみる。そのためにはまずは地域の特性を分析し、誰を巻き込むか作戦を練ることが大切です。

まちづくりというと、かつては何百億円もかかるような大がかりな事業が期待されていましたが、今は現実的に無理な場合が多いですよね。だからこそ、まずは地域清掃やイベントなど、小さなことから始めていくべきだと思います。こうした活動を、時間をかけて定着させていけば輪は確実に広がっていく。結果的にそれが本質的な地域活性化につながると考えています。

群馬県前橋市の住宅団地を拠点に官・民・学と地域が一体となってまちづくりを考えていく。

地域の方とLIFORT関係者によるグランドゴルフ大会(LIFORT杯)

今はまちづくりに注力し、
最終的には都市を森林化していきたい。

堤さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

公共施設のマネジメントが日本で始まったのは2000年頃からで、ちょうど私が教員になった時期と重なります。新しい分野なのでチャレンジする人も少なくて、右も左もわからない状況でしたが、当時試行錯誤でやってきたことは、確実に今の結果につながっていると思っています。

最終的には都市の未利用もしくは低利用インフラを植樹によって分解させつつ次の時代の資源を育てる都市の森林化をやりたいですね。でもそれを実現する手法は確立していないし、何十年かけても実現するか分からない話なので、今のところ机上の空論でしかなく誰も聞いてくれませんが、とりあえず10年くらい温めていれば他の人がよく似たことを実施していたり、あるいは自分で実現できる体制が整っているかもしれません。その時を待ちながら、今の活動を続けている感じがしています。だから私の場合、将来のためにさまざまなことに対して愛を蒔き続ける “LOVE✕EVOLUTION”のタイプかもしれませんね。

群馬県前橋市の住宅団地を拠点に官・民・学と地域が一体となってまちづくりを考えていく。

堤さんゼミの様子@広瀬ステーション(LIFORTで設置した地域との交流室)

10年、20年後はどのようになっていたいですか?

この先人口が減るのは確実なので、今の都市規模を維持するのはおそらく難しいでしょう。だから公共施設は今、総量削減が求められていますが、その分人と自然との共存が重要になります。例えば昨今の熊被害は、施設や森林が管理できていない、つまり人と自然が共存していない状況にあるから頻発していると考えられます。

建築だけでなく、農業や漁業など、自然相手の一次産業も、人が減るなら無理に増やす必要はないと思っています。一方で都市機能が縮小するほど日本の気候なら木々は増殖するため、これを上手く管理し資源化する手法が今後求められると私は考えています。そこで行政主導のグリーンインフラとも異なり、地域活動の範囲で植樹や管理を行いつつ、街と自然を調和させる手法を確立したいと思っています。10年後、20年後にその道筋が見えれば嬉しいです。

堤さん、ありがとうございました!常に自分が研究したいこと、実現したいことを思い描き、そのためにさまざまな活動を展開し、人や地域とのつながりの輪を広げ続けていきながら地域の課題解決を考え続ける堤さんを、今後も応援させていただきます。