Interview Vol.148
「目の前にいる人の想いに応えたい」をテーマに
全国各地でコワーキング施設を企画・運営。
EVOLOVE プロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第148弾の今回は、全国各地でコワーキング施設を企画・運営し、訪れる方一人ひとりの「願い」や「やりたいこと」を一緒に模索した上で、人と人・人と機会を結ぶ事業を行うスタートアップ企業「ATOMica」の Co-CEO 南原一輝さんに話を伺いました。
南原一輝さん
その人の願いや想いを聞いて言語化し、
人や機会とつないでいくことで
地方の情報・機会格差をなくす。
現在の活動について教えて下さい。
南原宮崎県宮崎市に本社を置く「ATOMica」という会社を、共同代表と一緒に経営しています。主な事業としては、弊社が企画・運営するコワーキングスペースなどの拠点を接点として、訪れた方一人ひとりと対話し、その方の「願い」や「やりたいこと」を一緒に言語化しながら、人と人・人と機会を結んでいくことを行っています。現在、運営するコワーキングスペースは30都道府県で60箇所以上(※2026年1月時点)にのぼります。業態としては、自治体や大学、不動産関係の方々と一緒にパートナーを組んで施設の運営とコミュニティ形成をしていく、というモデルです。東京のオフィスもそのひとつで、私自身は現在東京を中心に活動を行っています。
ATOMica 宮崎(本社・直営)
宮崎市で今の仕事を行うことになったきっかけを教えてください。
南原元々、「ATOMica」は共同経営者の嶋田が立ち上げた会社です。宮崎で立ち上げたのは、彼が「地方中枢都市で起業したい」とさまざまな地域を探していた時に、たまたま宮崎市の百貨店の社長さんに「街の賑わいも減ってきたので、空間を貸して応援するからなにかトライしてみてほしい」と声をかけていただいたことがきっかけでした。私自身は大阪出身です。
遡ると、大学時代に、シンガポールへインターンシップに行き、チームでビジネス案を作って現地の投資家にプレゼンするというプログラムがありました。その時のプレゼンの評価はあまり高くなかったのですが、仲間と一生懸命何かをつくるということに対して面白さを感じ、日本に帰ってきて別の事業案で起業しました。事業内容は、学生が留学へ行っている間、借りている賃貸を外国の方に貸し出すというサービスです。事業は順調でしたが、いつしか「この事業は誰の何を解決しているんだろう」と思うようになり、学生目線で「周りの学生に寄与できるような事業をやりたい」と考えるようになりました。人生のインフラとか、誰かの人生の意思決定に大きく関わるようなことに関心が生まれましたね。
途中で迷ったことはありませんか?
南原ありました。大学を卒業して入った会社では社内起業をしていましたし、そういう意味では自分で会社をやるという選択肢もありました。または、知り合いの会社に行くということも考えました。でも結局、今の仕事を選んでよかったと思っています。
今の仕事につながる一番大きな行動はなんですか?
南原私はもともと公務員になりたかったのですが、インターンシップを機に、「誰かと一緒に寝る間を惜しんで考える、つくる」という経験が文化祭の前夜みたいで楽しいと思うようになりました。また、「こんなふうに誰かの何かを解決することを継続的に実現しようと思ったら、ビジネスにしないといけない」と思い、学生起業したことが一番大きな行動だったと思います。
当時、私は代表ではなかったのですが、前任者がやめて団体を解散するとなった際、「続けていきたい」というメンバーの思いを継いで自分が代表を務めることになりました。その時も、会社を立ち上げる決意というより、「目の前にいる人の思いに応えよう」と思って法人化したという感じです。そういう意味で私は、体験に伴う気づきに基づいて次の体験を決めていくタイプだと思います。
活動をはじめて変化はありましたか?
南原今はリモートで働ける時代ですし、AI もあって検索すれば何でも情報が得られますが、それでも都会に比べて地方は情報格差や機会格差がとても大きいです。それは、そもそも「自分は何に興味があるのか」「どういうことをしたいのか」という気づきに出会えていないことに起因しているのではないかと思います。「これがやりたい」というものがあれば、今はその機会が無限に得られる社会構造になっていますからね。
だからこそ私たちは、コワーキングスペースという誰もがふらっと来られる場所を設け、そこに来たら人と人を結ぶプロである「コミュニティマネージャー」がいて、対話の中でその人自身が気づいていない潜在的な思いを紐解きやりたいことのイメージを共有しながら、さまざまな人や機会を結んでいくことを行っています。結果的にこうした入口になる部分がないと、機会格差は埋まらないと思っていますし、私たちはその人にとって必要な機会をつくるというところに価値があると思っています。
例えば、子育てがひと段落して社会復帰したい方向けにやりたいことを考えるワークショップを開催して、起業に興味をお持ちいただいたら商工会へつなぐとか、そういったことを行っています。この例のように、「こんな選択肢はないな」と思い込んでいることに対して一歩踏み出してみる、そういう変化は起こっていると思います。
また、コミュニティというと、入るとか、輪のイメージが大きいと思いますし、会ったことがない人のコミュニティに入るのは結構敷居が高いと思います。ですので、僕たちはまずこちらから声をかけて、その方の思いや願い(私たちはこれを「WISH」と呼んでいます)を言語化することからはじめます。その WISH にもとづいてさまざまな機会と結ぶ。
結果としてその成功体験を積んでいくうちに、線だったつながりが輪になっているというのがコミュニティとしてあるべき姿だと思っています。
ATOMica 交流イベントの様子
南原さんにとっての地域活性を教えてください。
南原既存の地域活性策は、すでに意思を持っている方がアクションを起こせるような取り組みが多い。例えば雇用を生み出すということにおいては、創業を支援したり企業を誘致したり、人を増やすという考えでさまざまなツアーが企画されたりすることが多いと思います。
でも、やはりどれも自ら一歩を踏み出せる方々を対象にしたものが多いですよね。そういう方はマジョリティではないので、影響度はあっても、地域全体に浸透するかといえば決してそうではないと思います。
私は、こうした地域活性の取り組みに対して、「ちょっとやってみようかな」と考える方々を増やすことが、今の時代に求められていると思います。それが私たちの向き合っていることであり、また地域活性に必要なことではないかなと考えています。
ATOMica イベント集合写真
地域でコミュニティをつくる事業を通して
地域単位で独立した経済圏をつくっていきたい。
南原さんにとっての“EVOLUTION ✕ LOVE” を教えてください。
南原私は滋賀の長浜が大好きで、定期的に足を運んでいるのですが、コロナ禍の時に、いつもよく行くレストランを訪れました。ちょっと遅めの昼の時間帯だったのですが、その時に店主から自分が今日初めてのお客さんだと聞かされて。このままいくと「自分が好きなこの街が潰えてしまう」、「帰ろうと思っていたふるさとがなくなってしまう可能性がある」と危機感を感じました。どうしたら地域単位で独立した経済圏を作れるのだろうか?と真剣に考えましたね。その結果、やはり人と人のネットワークで経済圏をつくっておくことが大切だと思うようになりました。大切な意思決定は、人と人とのつながりで成り立っていると思います。それを適切に編んでいく取り組みを地域でできれば、そして外とのつながりができればいい。ならば地域でコミュニティをつくる事業をしようと思いました。今思えば、あの滋賀の店で感じた危機感が、私の“EVOLUTION ✕ LOVE” でしたね。
ATOMica コミュニティマネージャー 業務の様子
10年、20年後はどのようになっていたいですか?
南原「最寄りの ATOMica に立ち寄れば、そこで無限の人やコトに出会える」という世界観を作っていたいですね。学生の新しいチャレンジに未来を感じるのであれば、それに対して投資ができるような活動を行ったり、在宅でも社会とつながることができる仕事の機会を提供する仕組みを作ったり、私たちが今みなさんから聞いている WISH を全て叶えられるような、そんな形になれていたらいいと思います。
もし中高生に「今これだけやるといい」というならおすすめの一歩はなんですか?
南原興味を持ったことはすべてチャレンジしてみることです。例えば起業したいと思った場合 、中高生のうちに思いつくアイデアは、おそらく借金するほどお金を使うものではないことが多いと思います。その意味ではリスクは低いので、ぜひトライしてほしいですね。お金は感謝の対価。お金をもらえるほどの感謝を得られるかどうかということを、比較的リスクが少ない学生のうちに経験しておくのは、特権だとも思っています。
もし中高生向けに話すなら、一番伝えたいテーマはなんですか?
南原「失敗も、自分が失敗と認識しないなら、それは学びだ」ということですね。例えば、時には失敗することもあるかもしれない受験においてもそうです。私は大学に行ったことやそこで経験したことが人生の一つの転機になった。だから中学生や高校生のみなさんに対しても、「勉強なんてしたって意味がない」などということは決してなく、ある一定の努力を要する学校に行くことは、意味があると伝えたい。受験は努力の仕方を自分で試行錯誤する時期であり、それを経験しておけば、後の人生でも自分のギアの入れ方がわかる。頑張らなくてはいけない時期にちゃんと頑張る練習をすることは人生の大きな糧になると思います。

南原さん、ありがとうございました!自分がやりたいことを見つける、そのお手伝いをしながら地域ごとの経済圏をつくる目標に向かって頑張る南原さんを、今後も応援させていただきます。