空でつながろう

Interview Vol.15 都市と地方の間(はざま)、小川町。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第15弾の今回は、埼玉県小川町で、プロスケット(プロの助っ人)として様々なプロジェクトに関わっている高木さんにお話を伺いました。

都市と地方の間(はざま)、小川町。

Pの皆様と高木さん(写真左から3番目)

助け合いで町の活性へ

Q.小川町で活動するようになったキッカケを教えてください。

高木新卒で入った会社を2019年に退職し、次のステップに向けて古くからの友人と連絡をとりあっていた時、小川町でお店を開業しようとしていた友人に「手伝いがてら遊びにおいでよ」と誘われたのがキッカケです。友人の店の開業準備を手伝っている中で、小川町の知り合いがどんどん出来てきました。「良い所だな」と思っていると、「空きそうな古民家があるから住まないか」と声がかかりました。当時住んでいた東京の家と同じ家賃なのに、広さは10倍、しかも山と畑がついているという条件に惹かれて、引っ越しを決めました。個人的に小川町の面白いところは、サイズ感です。3万人も居ない町なので、一つお店ができたというだけで、ちょっとした話題になる町です。町としてまだ完成しきっているわけでもないし、なにかアクションした時の手応え感も感じられるであろうコンパクトさが魅力的でした。

Q.小川町で様々なプロジェクトを行なうことになったキッカケを教えてください。

高木まちづくりNPOのサポートに声をかけられたことがはじまりです。当時から「プロスケット(プロの助っ人)」として、色々なプロジェクトの手伝いをしていました。プロジェクトって構想や意欲はあっても、「じゃあ具体的にどう実現するのか?」という舵取りをする人がいなくて、頓挫することが珍しくありません。そうならないように、その課題を僕が引き受けて、スケジュールを検討したり、企画やデザインを担うチームとの認識統一を図ったりしています。実際、コワーキングスペースを立ち上げるプロジェクトでは、ネーミングやロゴ、WEBサイトといったブランディングに関わるものの進行管理を担当していました。

都市と地方の間(はざま)、小川町。

地域のクラフトツアーづくりのプロジェクトチームの皆さん(右から2番目高木さん)

Q.高木さんが思う、小川町はどんな町でしょうか?

高木小川町は都会と地方の価値観が混ざりやすい町。都心から近くて友人を連れて来やすいこともありますし、住んでいる方も排他的な人が少ない印象です。都会に住む友人は、自然や有機農業といった言葉に惹かれ、すぐにいける田舎感覚で小川町に遊びにきてくれることが多いですが、その友人との交流を経て、農家の友人が都内のイベントに出ることになったり、都会の友人も日々の生活スタイルが徐々に変わっていったりと、お互いに影響し合っているのは面白いですよね。

僕は週に1回バスケをしているのですが、仲間の中に、建具(たてぐ)屋さんで働いている友人がいます。彼に北海道のデザイン系のイベントの話をしたら興味を持ってくれて…。これまで小川町の外で研修するなんてことは考えられなかった企業が、北海道のイベントに従業員を連れて参加したいと、相談してくれたこともありました。

仕事柄、小川町の外に出たり入ったりしている自分が、小川町に根付いた方々と交流し、小川町の外の話をすることで、小川町の外に目を向けてもらうことがあるというのは嬉しいです。

正直、僕の活動が地域振興や活性化に大きくつながっているかは分かりません。でも関わったプロジェクトを通して、確実に小川町に視線が向いているなと感じていて、その証拠に僕の友人たちは何度も遊びに来ている。それだけじゃなくて、小川町に興味を持ってくれた人に空き家や店舗案内をした人数が100名を超えています。今も対応が追いつかないほど、空き家バンクへの問い合わせが増えていると聞いています。

小川町と都心とを行き来している人が多いからこそ、地域の人も「外」の価値観に興味を持ってくれる。僕の活動はミクロですが、人の出入りのきっかけを作っているという点で、町の血流が良くなっていることを実感しています。

都市と地方の間(はざま)、小川町。

UNFARMとして小川町の仲間と続けている畑活動

繋いで、混ぜて、生まれる

Q.高木さんにとっての EVOLUTION × LOVE を教えてください。

高木友人の一言から小川町に住み着いた僕ですが、ここでの生活を通して、町のことを自分事として捉えるようになったという変化を感じます。町に住んでいる人のことだけでなく、そこでの暮らし・文化・歴史など、町を知れば知るほど、町への思い入れと愛情が深まっていきますね。

実際、自分が関わったプロジェクトやイベントの紹介も兼ねて、これまで100人以上の友人に対し、小川町のこと、お店や農家さんを案内してきました。気がつけば小川町に元々住んでいる方よりも町のことに詳しくなっていたり、「こんなお店ができて欲しいなぁ、こんな町になって欲しいなぁ」と考えるようにもなりました。

そしてもう一つ、自分事として歴史に関わる面白さも、小川町で知りました。たとえば小川町は、青山在来という大豆の生産地です。今までは「在来」と聞いても、「古くからあるんだな」くらいにしか思いませんでした。しかし農家の方と話すことで、大豆は1年経つと発芽率が大幅に減ってしまうので、毎年作り続けないといけないこと、そして食べ続けなければ生産ができなくなることを知りました。だから意識して、地元の大豆を使った醤油や豆腐を買ったり食べたりする。大袈裟かもしれませんが、歴史を支える一員になったつもりでいまして(笑)、完全に我が町になってます。

Q.若者へのメッセージはありますか?

高木都会であっても、固定されたコミュニティで育ってきた人が集まりがちだと思います。同じような学歴、収入、居住エリア、価値観。そんなつながりの中で育ち、生きづらさを感じる人が多いと感じます。もっと色々な価値観・世界観・コミュニティに属することで、自分という輪郭がハッキリしてくるはず。

僕の好きな言葉に、「自立とは依存先を増やすこと」というものがあります。所属できる人間関係が増えれば、将来の選択肢が広がると思います。もちろんこれは、若い人に限りませんが。とはいえ、ブレ幅が広いのも、若いからこその醍醐味。色々なコミュニティに入って、価値観が揺さぶられる経験を面白がってほしいですね。

   ありがとうございました!都会と地方、両方の価値観を持ち、ハブとして人や物事をつなぎ続けている高木さん。次はどのようなプロジェクトの「助っ人」になるのでしょうか。高木さんの活躍を、今後も微力ながら応援しています!