空でつながろう

Interview Vol.16 金沢で舞い紡ぐ、日本文化。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第16弾の今回は、石川県金沢市で、舞踊家として活動しながら、日本舞踊の伝承・指導を行なっているだけでなく、2020東京オリンピック・パラリンピック札幌ステージの総合演出も担当し、マルチにご活躍される藤間さんにお話を伺いました。

金沢で舞い紡ぐ、日本文化。

米の収穫を寿ぐ舞(写真中央 藤間さん)

共創で未来へ繋ぐ
日本の歴史と伝統。

Q.現在の活動について教えてください。

藤間今は舞踊家として活動しながら、お弟子さんへのお稽古をしたり、地元の幼稚園・保育園で日本舞踊を教えたりしています。ほかには舞台や映像のプロデュースも多いですね。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでアイヌ民族の踊りの演出をしたり、舞台の企画をしたり、僕自身は5年前、地元の白山という山の山頂で踊ったこともありました。これは白山の開山1300年を記念して企画したプロジェクト。「光求むる100年の舞」というタイトルで、企画から舞踊まで全部自分でプロデュースしました。

Q.活動を通して、日本文化の継承も意識されているのでしょうか?

藤間そうですね。たとえば白山のプロジェクトは、白山の「今」を100年先の後世に映像で残したいと思ったのがキッカケ。「今の姿」が当たり前ではないからこそ、今の白山を映像に残し、地元で有名な白山比咩神社で5年ごとに上演して頂こうと考えました。

また米の収穫への感謝を込めて、収穫後の田んぼで踊るという活動もやっています。そうした活動を通して地元の文化を残していきたいし、「こんな場所あったんだ」と近隣の人が訪れるキッカケづくりができればと思っています。

踊り以外で言えば、趣味でグルテンフリーの無添加スパイスカレーを作っていて、それを金沢にある茶屋街で定期的に提供していきます。これも普段なかなか入れないお茶屋さんを身近に感じてもらいたいという発想からスタートしました。

さらに僕一人ではありませんが、1400年近く宮内庁の楽部に仕えている笙奏者の豊家(ぶんのけ)の方と、琴の世界では珍しい25弦を使って演奏する箏奏者と3人でKaTaCHIというユニットを組んで、演奏会を行なっています。

色々な活動をしているのも、日本文化の新しい形を作り、色々な人に知ってもらいたいという想いから。新しいことに挑戦していかないと、日本文化は残っていくことができない。そうした想いから、「知ってもらう」ための活動に取り組んでいます。

Q.金沢を拠点に活動する理由を教えてください。

藤間やっぱり自分が育った町というのが大きいですね。出稽古で隣県に行ったり東京に住んだりしたこともありますが、やっぱり金沢が好きです。もちろん地元への恩返しという想いもあります。たとえば保育園・幼稚園で日本舞踊を教えることもその一つ。金沢という文化的な町で育ったのに、日本文化のことを知らずに大人になるのはもったいない。年長さんは浴衣を着て週に一度お稽古をしていますが、その1年間の体験だけでも、その後の日本文化への見方が変わると思っています。幼稚園・保育園でお稽古を始めた20年前は、「そんなところに教えに行くなんて」と笑われていた時代でしたが、僕は、とにかく接点を持つことが日本舞踊が続く道だと確信していました。

同じように田んぼや白山でのプロジェクトも、日本舞踊の存続と地域振興につながってほしいという想いから。元々あるものにスポットを当てて、その土地の魅力を見出すことが、僕にとっての観光。だから地域の魅力を、日本舞踊を通して再発見したいと思っています。

金沢で舞い紡ぐ、日本文化。

ご縁で宮城県気仙沼市の双葉保育園にてお稽古

Q.人とのつながり、関わりを感じることはありますか?

藤間プロジェクトを通して実感しているのは、関係を構築していくことの大切さ。田んぼも白山も、最初はあまりいい顔をされませんでした。特に白山は近くの由緒正しい神社からクレームが入ったこともありました。しかし謝りに行く前に舞踊の映像を送ったら、当日「ありがとう!ぜひやってほしい!」と、一転して応援してくれることになって。田んぼも、朝5時から誰よりも早く準備することを、プロジェクト開始から5年間ずっと続けてきました。その様子を町内会長さんが見ていてくれて、「これは町の祭りとしてやろう」と言ってくれて、晴れて正式に祭りとして運営できるようになりました。

また、共創という考え方も、自分の中で根付きました。踊るのは一人だけど、音響・楽器・大道具など、裏ではたくさんのスタッフが動いてくれています。そして何より、地元の人の協力が欠かせない。だからこそ、関わる人にいかに気持ちよく動いてもらうかは常に意識しています。オリパラのアイヌ民族との公演も、アイヌ民族ではない自分が指揮することをいかに認めてもらうか、かなり考えました。幸い、オリパラが1年延期になったことで道内の各アイヌの皆さんの練習をみたり交流したり、親交を深めることができました。

金沢で舞い紡ぐ、日本文化。

2020東京オリンピック・パラリンピック札幌ステージでご一緒したアイヌの皆さんと藤間さん

日本舞踊と日本文化を
伝え、残し、広げる。

Q.藤間さんにとっての EVOLUTION × LOVE を教えてください。

藤間日本文化や日本舞踊を残すために何ができるか、より強く意識するようになりました。たとえば金沢駅でフランスのオリパラチームの応援動画を制作した時は、チェロやギターを伴奏に迎え、両国の国旗をイメージした衣装を着ました。ほかにもファッションショーで舞を披露したこともありますね。

本来であればタブーと言われるような枠に留まらない活動をするのも、日本舞踊を残したいという想いから。日本舞踊って、意外とどんなシチュエーション・音楽にも合うと思っています。そして世界は常に進化している。それなら日本舞踊の在り方も進化する必要がありますよね。知ってもらうことが存続の道だからこそ、日本舞踊を柔軟に発信していきたいと考えるようになりました。

Q.EVOLOVEは共創がテーマですが、“つながる” “つなげる” ことについてどのような想いがありますか?

藤間日本舞踊はもちろん、着物に触れる層を増やしたいという想いはあります。金沢には多くの外国人観光客が来て、レンタル着物を利用しているのですが、歩き方や作法が分からないから、すぐに着崩れてしまう。それなら着物での歩き方や座り方、写真を撮る時のポイントなどを簡単にレクチャーすることで、金沢の景観をより良くしようと、茶屋街の人たちと企画しています。

ほかにも若い世代と日本舞踊とをつなげたいですね。以前、京都造形大学でも日本舞踊の講義を担当していました。その時、抽選になるほどの希望者数に驚きました。そして実際に講義をしてみたら、みんなすごく楽しそうで。中には今年卒業して、僕の弟子になりたいと家族全員で金沢に引っ越してきた人もいるほど。興味がある人をいかに拾い上げるか、今後はその視点を深めたいです。

Q.若者に対して伝えたいことはありますか?

藤間とにかく体感してほしいし、経験してほしい。今はスマホ世代になって、なんでも調べられるし、なんでも見られる。でも直接見て、五感で感じる経験をしてほしいです。勉強も大切だけど、体感しないと分からないものも多いんじゃないかな。

僕は白山をキッカケに、登山が趣味になりました。白山に登った時に見たご来光が言葉にできないくらい美しくて、この星に住んでいてよかったって心から思いましたし、その光景が自分の財産になっています。利便性も大切だけど、「見るだけ」「調べるだけ」の感覚に慣れずに、体感することを大切にしてほしいですね。

   ありがとうございました!日本舞踊がどのように既存の枠をはみだして、新しい可能性・新しい人と出会うか、楽しみになりました。今後の藤間さんの活動にも注目しつつ、微力ながら応援させていただきます。