Interview Vol.161
秋田県秋田市で映像制作や
人が集まる拠点を作りながら、
地方の魅力を国内外へ発信していく。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第161弾の今回は、秋田県秋田市で映画や動画制作を行いつつ、コワーキングスペースやカフェなど人が集まる拠点づくりを行う栗原エミルさんに話を伺いました。
栗原エミルさん
地方の厳しい環境で
チャレンジすることは
人口減少の解にもつながる。
現在の活動について教えて下さい。
栗原秋田県秋田市で映像制作会社を中心に地域事業を行う「アウトクロップ」を経営しています。また築40年の空きマンションをフルリノベーションして、カフェやコワーキングスペースを併設した「アトレデルタ」も運営しています。
あとは築120年の古民家を改装した「アウトクロップ・シネマ」も運営しています。アトレデルタもアウトクロップ・シネマも地域に根ざした事業ではありますが、アウトクロップは県外や国外の仕事もたくさんやっていて、ローカルとグローバルを行き来しているような感じで動いています。
栗原さんの会社が運営する施設(オフィス、カフェ、民泊、コワーキングが併設する)
今の活動を行うことになったきっかけを教えてください。
栗原私はドイツで生まれてすぐに家族で台湾へ移住し、4歳の時に京都へ来ました。18歳まで京都で過ごし、大学進学を機に秋田へ移り住みました。小さい頃から映像制作が好きで独学で学んで、大学では文化人類学を専攻し、そこで物事の捉え方などを包括的に学びました。ひとつのことを深くというより、学問を多角的に勉強することで課題解決力を養成する感じでしたね。
最初は起業に興味がなかったのですが、日本の中でもまだ多様性が残っている秋田のことがすごく好きになって。その多様な文化や風景、風土がなくなってしまうことは悲しいと思っていました。就職活動して企業に就職するという選択肢しかないことに疑問を感じていたこともあり、卒業の前に友人と一緒に映像を制作して、自分たちも秋田で何かできるのではないかという小さな成功体験が得られたのをきっかけに、ここで起業しました。今は大学の先輩が勤めている会社や、私たちの映画を見てくださった一般の方からの支援を受けたり、映像を必要としてくださる企業の方々から仕事をいただいています。
「起業するかしないか」なら、するほうがおもしろいと思いましたし、失敗してもいい、その時はまたそれをネタに次の人生を考えればいいかなという楽観的な考えでしたね。
制作した映像で入賞された記念での一枚
活動を始めて街に変化はありましたか?
栗原アトレデルタは住宅街にあります。よそ者が入ってきて、住民の方々は最初抵抗感を抱いていたと思いますが、今は「街が明るくなった」「いろいろな人が行き交うようになって街に活気が出てきた」といっていただけるようになりました。また最初アトレデルタに泊まった外国人の方が秋田をすごく好きになって、うちで働いてくれて、その後は県南にある「やぶ前」という拠点に住み込みで働いたようです。私たちは「アトレデルタを秋田の玄関口にしていきたい」という思いがあったので、こういう変化は純粋に嬉しいですね。
でも立ち上げの時は大変でした。アトレデルタの周辺には学校があるのですが、秋田市の条例で教育機関のそばに宿泊施設を作ることが難しくて。なぜか私たちが作る施設がレジャーホテルと誤解されて、説明をしても全然わかってもらえない時期がありました。新しいことをする時は必ず壁に当たるので、いい経験だったと思っています。
秋田県は、日本の中でも人口減少のスピードが著しく、一番早くに人がいなくなる県だともいわれています。自然環境が厳しく住むこと自体が大変で、若い人たちがいなくなる。でもこうした環境でチャレンジして何かを生み出せたら、日本中、あるいは今世界中で起きている人口減少に対しての解を1つのモデルケースとして作れるんじゃないかと考えています。そういう意味では秋田県というフィールドはおもしろい。課題があるからこそその裏にビジネスチャンスがあります。また、何かをやる時はリソースもお金も都会に集中しがちですが、例えば私たちであれば映像を使って発信してほしいことなど、手伝いを必要としている人は地方にも多くいます。すごく熱い人とか、本当にいいものを作っていて後継者を探している人とか。そういう人たちの力になりたい。
県外でも仕事が増えてきていますが、外でたくさん稼いで秋田でもっとおもしろい活動をするという循環ができ始めているので、これからもっと広げていきたいと思っています。
撮影時の様子
栗原さんにとっての地域活性を教えてください。
栗原地方活性でいえば、移住者を呼び込むとかもはやそういう話ではない気がしています。自分はどういうところに住みたいだろう?と考えた時、やはり魅力的な人がいる地域にいきたい。だから私は、秋田にいる大人がもっと秋田を楽しむことが、地域活性につながると思っています。
秋田の人は、本当は秋田のことがすごく好きなのに、息を吐くように「ここは何もない」というんですよ。だから子どもたちにも刷り込まれて、外に出ていってしまう。中学や高校で話す機会もあるときには「秋田だからおもしろいチャレンジができる」ということはいつも話しています。
個人的にいえば、私たちの活動は秋田じゃないとできなかったと思っていますし、今後はもっと経済的な価値や雇用をしっかりと生み出せる会社にしていって、秋田に恩返しができる会社にできればと考えています。
やりたいことがあったらいい続ける。
しかるべきタイミングで機会は訪れる。
栗原さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
栗原私の場合、映像制作も不動産事業も、映画館を立ち上げた時も、自分の思いを持ったタイミングでしかるべき人に出会って一緒にできています。なるべく地域に溶け込みながら、周囲に対して、「こういうことをやりたい」「いつかはやってみたい」といい続けて、それをメディアが取材してくれて、見てくれた地元の会社の社長がご飯に誘ってくれたり手紙をくれたりとその連鎖が続きました。今、一緒に仕事をしている方も地元の名士で、すごく愛を注いでくださいます。やりたいことがある、そのLOVEをいい続けたら、それを受け止めてくれる人がいた。だから私の場合は “LOVE×EVOLUTION”といえますね。
栗原さんの会社メンバーと
10年、20年後はどのようになっていたいですか?
栗原映像や映画をどんどん作っていたいですね。伝えたいテーマや撮りたいことを物語としてしっかりと世界に届けていきたい。何年後になるかはわかりませんが、ベネチアやベルリン、カンヌといった世界三代映画祭で受賞できるような作品を秋田から発信するというのが、目下の目標です。また、映像を通してストーリーを伝えることで、社会に変化を起こそうとしている人たちの背中を押せるような、そんな活動がずっとできていたら嬉しいです。

栗原さん、ありがとうございました!「Tell Stories, Empower Change」を会社のミッションに掲げ、大好きな秋田県で映像を通して伝えたい物語を作り続ける活動を続ける栗原さんを、今後も応援させていただきます。