Interview Vol.169
岐阜県飛騨市に創設する大学で
長期実践型インターンシップを通して
未来を共創できる若者を育成。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第169弾の今回は、「誰もが主体的に協働して皆が豊かに暮らせる地域社会を創る」を目標に多様な研究や活動を行う髙木朗義さんに話を伺いました。
髙木朗義さん(最前列左から4番目)
大学教員が県職員に出向し、まちづくりに参画。
「自分事」と捉える住民の増加を実感。
現在の活動について教えて下さい。
髙木2026年3月までは岐阜大学社会システム経営学環で教授を勤め、土木計画学を専門に社会基盤施設から社会システム、人的ネットワークに至るまで幅広く研究をしていましたが、4月に開学する「Co-Innovation University(通称CoIU)」の学長、共創学部長、教授になります。また2019年から地域活性をメインとする実践型インターンシップなどを通して起業家的人材育成に取り組むNPO法人「G-net」の監事も勤めています。
「CoIU」には長期実践型インターンシップを20年以上手がけている団体のネットワークである「チャレンジコミュニティ」と、その一員である「G-net」が関わります。学生が全国の地域拠点で長期実践型インターンシップ(CoIUではこれを「ボンディングシップ」と呼びます)を行い、学びながら未来を共創できる人材を育てていく予定です。具体的に、1年では理論と対話を中心に学んでインターンシップに向けた準備を行います。2年では全国の地域拠点の企業や自治体と協働して実践的に課題解決や事業発展に貢献するプロジェクトに取り組みます。3,4年ではこれらの経験を踏まえて地域課題や社会課題の解決を共創的に実現していく学びを行います。
種蔵myみょうが畑プロジェクト:高木さんと研究室メンバーと都竹飛騨市長(写真前列右)
今の活動を行うことになったきっかけを教えてください。
髙木もともと土木分野の都市計画が専門で、岐阜大学を卒業後は建設コンサルタントの会社に12年所属し、公共事業の評価や計画策定などを行っていました。特に防災関連の公共事業の評価を専門としているので、例えば、道路の浸水・冠水に対応するためにはどこにどのくらいの施設を造ったらよいか、などを考える仕事です。しかし、こうしたコンサルティングをする上でもっと自分のスキルを高めたいと思い、大学の恩師のところへ戻って社会人として働きながら大学院で学び、博士号も取得しました。コンサルティングの仕事はおもしろかったので辞める気はなかったのですが、その後、恩師に「大学に戻って来ないか?」といわれて大学教員になりました。教員として学生を指導するうちに、「地域課題を解決できる人材を育てなければならない」と感じてきて。ちょうど、工学部でもデザイン教育が取り入れられたりする時代の流れもあり、大学全体としても実践的な教育の必要性を感じるようになってきた時期だったと思います。
一番大きな転機となったのは2008年の国立大学の独立行政法人化ですね。地方国立大学が教育研究にプラスして地域貢献に関わることが明文化されて、岐阜大学も岐阜県と包括連携協定を結び、私は大学から4年間県庁に出向しました。大学教員が県職員に出向するというのが当時はとても珍しく、メディアにもよく取り上げられましたね。
私は主にまちづくり支援チームのアドバイザーとして地域に入り課題解決に取り組んでいたのですが、その時に「G-net」と出会って、こちらとも関わるようになりました。
2021年8月末、高山市にある井上工務店・飛騨五木の井上博成さんから「飛騨には4年制大学がないので作りたい」という相談がありました。飛騨を含む全国各地の地域課題を解決できる人材を育成するために、学生が半年くらい企業や行政のプロジェクトに関わる長期実践型インターンシップを設けた大学を作りたいということでした。そのコーディネートを「G-net」が担当することになっていたので、「大学を一緒に創ってほしい」というオファーがあり、引き受けることになりました。
社会基盤3年生「環境デザイン」関市まちづくり提案実習(2022年時)
今の活動を始めて変化はありましたか?
髙木県職員の時代、地域に入ってさまざまな支援活動を行ううちに、これまでは行政まかせだったまちづくりが自分事として捉えるようになった住民が増えたと感じました。外の人間から「ここいいですね、素敵な街ですね」と言われると住民の皆さんも、「ここは何もないところ」と思っていた考えが変わるものです。「自分たちの街って意外と評価されるよね、だったらもう少し自分たちでなんとかしてみよう」という機運が高まります。
県職員はだいたい市町村の事業をサポートする役割ですが、直接現場に入って一緒にビジョンづくりをしたり伴走支援をすることで、それに応えようという人たちが増えたことはいい変化だったと思います。
2023年時の種蔵myみょうが畑プロジェクト(ヒダスケ集合写真)
髙木さんにとっての地域活性を教えてください。
髙木「CoIU」では2年生で長期実践型インターンシップ(ボンディングシップ)を行いますが、学生たちは1人として同じ子はおらず、当然それぞれやりたいことも違います。そういう意味では1人ひとりの特性に合わせることで成長できるよう、大学としては支援していきたいですね。大手企業には開発などのチームがありますが、中小企業はおもしろい経営者がたくさんいても現業に振り回されて新たなことになかなかチャレンジできない。そこを学生たちと一緒に新しいプロジェクトでやってみませんか、という展開を通して、学生たちも実践力が磨かれると思います。
また3,4年生は自分でやりたいことをマイプロジェクト化する、あるいは教員のプロジェクトに参加して学ぶという2パターンから選ぶことができます。いずれにしても4年間の学びを通して、本当に起業する人が出てきてくれたら、それが未来の地域活性につながると思っています。
「CoIU」で学んだ学生と
10年後もつながりながら
より豊かな地域社会づくりをしていきたい。
髙木さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
髙木やはり「G-net」との出会いでしょうか。県職員に出向するまでは大学で地域について理論ベースの研究をしていましたので、そんなに地域に出ていっていませんでした。でも「G-net」と出会ってからは教育研究のスタンスが大きく変わりましたね。学生も教員も、現地に行って当事者と関わるようになって。「G-net」との出会いがなかったら多分そんなことはやっていないでしょうし、新しい大学に変わることもなくて、定年まで岐阜大学に勤めていたと思います。だから「G-net」との関わりが私にとってのEVOLUTION✕LOVEだと思います。
もともと私は若い頃から新しいことをするのが好きなんです。けっこう手を抜かずに一生懸命やる。それが全然苦にならない。その中でいろいろおもしろいことに出会うのですが、特に長期実践型インターンシップはおもしろいと思いましたね。
CoIU高校生体験セミナー(共創サマチャレ;2024年時)
10年後、20年後はどのようになっていたいですか?
髙木「CoIU」の学生たちが日本全国の地域づくりに関わっていって、活躍しているといいなと思います。またそういうメンバーとずっとつながり続けて、よりよい地域や社会を創っていけるといいなと思っています。
ただし私はその頃たぶん引退をしているので、私のポジションも誰かが引き継いでいてくれたら嬉しいですね。

髙木さん、ありがとうございました!「CoIU」の学長として、地域や社会と関わりながら自分自身の夢を叶え、未来を共創していく若者を支援し続ける髙木さんを、今後も応援させていただきます。