空でつながろう

Interview Vol.173 高校の部活動を通して、
京都府宮津市の人たちと関わりながら、
生徒たちに故郷を大切に思う心を醸成していきたい。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第173弾の今回は、地域と連携し、生徒たちの主体性を大切にしながら自然や文化などさまざまな探究活動を推進する京都府立宮津天橋高等学校教諭(現 島根県立松江南高等学校勤務)の多々納智さんに話を伺いました。記事内容は取材当時のものです。

高校の部活動を通して、京都府宮津市の人たちと関わりながら、生徒たちに故郷を大切に思う心を醸成していきたい。

多々納智さん(モニター右横)

探究推進部の顧問に。
「自分の原体験を残そう」を合言葉に
地域との関わりを深めていく。

現在の活動について教えて下さい。

多々納京都府立宮津天津高等学校の教諭をしています。また探究推進部の部長として、生徒たちの活動を指導、サポートしています。

今の活動を行うことになったきっかけを教えてください。

多々納大学院を卒業して、故郷の島根県にある高校で3年間講師を勤めました。ちょうど就職氷河期真っ只中の時代で、民間はもちろんのこと公務員も募集が絞られていて、たまたま私が大学院を卒業する時に1名の募集があったので応募しましたが、3次試験までいったのに落ちました。その翌年も落ちて、次の年は募集がなかったので、講師を勤めたあとにさまざまな県の募集試験を受け、一番最初に合格通知をくれた京都府にお世話になることにし、当時の宮津高等学校に赴任することになりました。後で振り返ればご縁かなと思いますが、当時は何のこだわりもなく、たまたま流れ着いた、という感覚でしたね。

担当は生物で、最初は野球部の顧問を勤めていて。そのうち学校に「探究活動を取り入れていこう」という動きが起こり、たまたまその立ち上げプロジェクトメンバーに選ばれました。最初は前身のパイロットクラブを作って先進事例を作っていこうということになり、まずフィールド探究部を立ち上げ、その顧問になったのがきっかけです。

それまで使っていたバットを虫取り網に持ち換えて活動が始まりました。

その後、校務分掌として探究推進部が設置され、学校全体の探究活動を企画・運営しています。

高校の部活動を通して、京都府宮津市の人たちと関わりながら、生徒たちに故郷を大切に思う心を醸成していきたい。

大手川のフィールドワークの様子

具体的な活動内容を教えてください。

多々納フィールド探究部は、今でこそみんなに知られていますが、最初は学校の中では目立たない、あるいは学校に来づらい理由を抱えた生徒たちのよりどころという側面が今よりも強かったです。私も家と学校、グラウンドの往復で土地勘がまったくなかったので、生徒たちを連れてとにかく地域の催しに足繁く通って、生徒たちと一緒にコネクションを構築していったという感じですね。私は生物が専門なので、例えば日本にずっと根付く在来タンポポを各地に探しに行きながら、畑仕事をするおじさんに話しかけてみたり、学校の近くを流れる川の環境をよくするために、行政にも絡んでもらいながら地域の人たちと一緒に環境改善のイベントを行ったりしています。

活動の軸として、生徒には「自分の原体験を残そう」と話をしています。五感が反応するような活動や体験を通して、自分の故郷への解像度を高めつつ、自分の存在をここに感じてほしいと。この地域は大学がないので、ほとんどの生徒が地域外へ出てしまいます。今のうちに関係人口を作っていけば、生徒たちにとってUターンがひとつの選択肢になる。それは地域にとっても生徒たちにとっても幸せなことなんじゃないかと思っています。

特に地域の困りごとに対しての教育の可能性はすごく感じています。学校の地域探究の中には、議会に政策提言することをゴールとする場合がよくありますが、私はどんな小さなことでもいいから社会実装までこぎつける活動をやってなんぼだと思っています。別に誰に頼まれたわけでもなく楽しいからやっているんですというぐらいですが、それができるのが教育の力。あくまでも生徒たちの「楽しい」「やってみたい」を核にしながらプラスアルファで社会貢献につなげていければ、という形ですね。

活動を続けるうちに、今まで学校の中では自分を発揮することができなかった生徒たちが、学校という枠から離れた場所で生き生きと活動をすることを目の当たりにしました。その姿を見て、多くの生徒たちにとってこの活動は意義深いものではないかと考え、広く地域社会に開かれた形で探究活動をしていこうということになりました。

それと、私自身も自分を発揮できる場所を作っていかなきゃな、という思いはありましたね。この活動が自分自身のメリットにも、生徒たちのプラスになるとも思っています。

今の活動を始めて変化はありましたか?

多々納学校に対する地域の方々の敷居は圧倒的に低くなったと感じています。もともとうちの学校は京都北部の高学力層の生徒たちを集めて、学力を伸ばして世に輩出するスタイルをずっと取っていました。「進学と部活動の実績が地域貢献につながる」と、赴任当初に先輩教員に言われたことをよく覚えています。そんな中で、私が無防備に地域へ出ていって「なんだあいつ、先生なのに変わったやつだな」と思われるうちにだんだん声をかけてもらう機会が増えて、その流れで生徒たちの探究活動も重ねていくうちに地域連携がしやすくなったと思っています。

高校の部活動を通して、京都府宮津市の人たちと関わりながら、生徒たちに故郷を大切に思う心を醸成していきたい。

地域の方々との交流

多々納さんにとっての教育活動を教えてください。

多々納生徒たちが、「自分のルーツは確かにこの地域にある」と思えるような活動をしていきたいですね。卒業生にとっての母校は、学校という箱ものだけではなくて、地域を含む多様な学びの場面を指すのだと思います。そのことを心に留めて巣立っていける、そして何かをこの地域に返したいと思える、そんな教育活動をしていきたいと思っています。

高校の部活動を通して、京都府宮津市の人たちと関わりながら、生徒たちに故郷を大切に思う心を醸成していきたい。

地域の小学生と川について学ぶ

地域の困りごとをチャンスとして捉え、探り、
共感する部分を見つけて活動することで
地域への思いを高めていきたい。

多々納さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

多々納縁あって京都に来て、探究推進部やフィールド探究部の活動をしていますが、内容は常に進化していますし、その中で生徒たちがどんな経験を積んでいけるかや、地域にとっての学校のあり方を考え続けています。私にとっては地域の困りごとをチャンスとして捉えることがLOVEで、それに対して生徒や地域の人々と一緒に取り組むことがEVOLUTIONです。活動をしていると、時に「余計なことをするな」と地域の方に怒られることもあります。でも怒るということは、その人のこだわりや愛がそこにあるということ。私はそれをチャンスだと捉えています。その人が何を大切にしているのかを探っていき、共感できる部分を見つける。そこに食いついて、一緒に活動をしていくことが大切だと思っています。LOVE✕EVOLUTIONの思いで常に動き、ここに育つ人たちに、自分の故郷を大切に守っていってもらいたいと願っています。

高校の部活動を通して、京都府宮津市の人たちと関わりながら、生徒たちに故郷を大切に思う心を醸成していきたい。

フィールド探究部の部員たち

10年後、20年後はどのようになっていたいですか?

多々納何年か経ってまたここへ戻ってきた時に、私がまいた種が形を変えつつずっと息づいていたら、これ以上ない幸せですね。また一緒にやってきた生徒たちの幾人かがそれに関わっていてくれたら嬉しいです。

多々納さん、ありがとうございました!探究活動を通して、生徒たちと地域との関わりを深め、ここに育った人たちに「自分のルーツは確かにこの地域にある、故郷を大切にしていきたい」という思いを持ってもらえるような活動を続ける多々納さんを、今後も応援させていただきます。