Interview Vol.174
滋賀県から「地方でもできる」を体現し、
女性クリエイターが輝ける場と未来をつくる。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。今回は、滋賀県を拠点にピンク特化ブランド「Mu-Mu(ムーム)」を運営しながら、女性クリエイターの自立と活躍を支援する「滋賀女子カクメイ」を立ち上げた、ブランドプロデューサーのハネPさん、ブランドデザイナーのNamikoさんのお二人に話を伺いました。
Namikoさん(写真左)ハネPさん(写真右)
「滋賀だからできる」を逆手に取り、
ピンクの世界観で地方発のブランドを確立。
現在の活動について教えて下さい。
Namikoオリジナルのコスチュームジュエリーやファッションアイテムのピック特化ブランド「Mu-Mu(ムーム)」を運営しています。月に2日間だけ、完全予約制で営業するという少し特殊なスタイルです。お店は滋賀県の空き家を改装して、外壁まで全部ピンクに仕上げました。地方だからこそ家賃が安く、原状復帰も不要だったので、思い切った世界観を作ることができました。東京や大阪でこれだけのことをしようとしたら、おそらく一億円近くかかるようなことを、地方だからできた。そのモデルを実際に示したいという思いもあって始めました。
ハネP僕はブランディングと経営を担当しています。Namikoのクリエーションと、僕の数字・戦略面の強みを掛け合わせて、約10年前から本格的に一緒にやるようになりました。元々カフェを経営していた経験が活きています。ブランドは今年で13年目になります。
なぜピンク一色に振り切ったのですか?
Namikoもともと私がピンクが好きだったんですけど、ブランドをより魅力的にするためにどうすればいいかを考えた時に、「好きならとことんピンクでいこう」と。ずっとピンクでいたら「ピンクの人」として覚えてもらえる。日本一のピンクを目指せば、それ自体が宣伝になるという発想です。商品もピンク、お店もピンク、家もピンク、車もピンクという形で、全てをブランディングの一環として統一していきました。
ハネP私はもともとブランディングのためのピンクなんですが、何年もそうしていたら、もうピンクが好きになってしまいましたね(笑)。よく「東京っぽい」「原宿っぽい」と言われるんですが、これ、滋賀から生まれたお店なんです。滋賀だから目立てる、埋もれない、という逆転の発想もあります。
Mu-Mu(ムーム)店内にて
活動を始めたきっかけを教えてください。
Namiko就職したインポートジュエリーのセレクトショップで、変わったデザインを求める人たちの存在を知り、独立して自分でブランドを作りました。
ハネP地元は滋賀県彦根です。世界80カ国ほど旅をしてきましたが、正直、滋賀が「この街で生きたい」と思えるほど魅力的だったかというとそうではなかった。だからこそ、この街を変えたいという思いが強くなりました。
地域への関わりが変わったきっかけは何ですか?
Namikoお客様の9割以上が県外の方なんです。東京、大阪はもちろん、海外からも発注をいただいています。滋賀のことを大切にしながらお店を作ったのに、実は滋賀県に対しては何もできていなかった。そのギャップにずっと違和感を感じていて、「もっと滋賀に目を向けよう」と思ったのが2年ほど前です。
また、ピンクというだけで「子ども向け」「私とは別の世界」と先入観を持たれて、本質が伝わらない孤独感もありました。もっと地元のクリエイターの方々と繋がりたいと思っても、間口を狭くしすぎていた。「では自分たちから歩み寄ろう」と考えてできたのが「滋賀女子カクメイ」です。
お店の前にて撮影
「滋賀女子カクメイ」ではどんな活動をされているのですか?
ハネP滋賀県の女性クリエイターのマルシェを見に行ってみると、ほとんどの方が趣味か副業で、本業として生計を立てられていない。なぜ稼げないのかというと、マルシェに出店しているだけでは稼げないんです。高いものも売りにくい環境ですし、お客様もそこにお金を払う意識が薄い。では、レベルアップできるステージを作ろうと考えました。
私たちには阪急百貨店(梅田)のバイヤーとのパイプがあるので、そこに滋賀県の女性クリエイターがチャレンジできる場所を作らせてほしいと交渉しました。もちろん審査があります。ただ出店するだけではなく、評価もされ、勉強にもなるステージです。それを目指すための学びの場として、ファブリカ村さんの場所をお借りして月1回の勉強会も開催しています。インフルエンサーやバイヤーなど、普段滋賀のクリエイターが繋がれないような方をゲストに呼んで、可能性を広げる場を作っています。
阪急百貨店にポップアップで出店時に出店者さんと
Namiko昨年8月には滋賀県長浜のホテルの結婚式場を貸し切って、滋賀の女性クリエイター約25ブランドによるイベントを開催しました。ただのマルシェにならないよう、前売り入場券制にして、クリエイターさん自身にお客様を呼んでもらうノルマも設けました。自分のお客様を自分で動員する、つまり「営業」を実体験してもらうためです。
前売り入場券は300枚完売、当日券でもさらに約50名が来てくださって、5時間のイベントとして大盛況でした。出店したクリエイターさんの8割が過去最高売上で、最大4倍という方もいらっしゃいました。「こんな売上を取ったことがない」という声が続出して、そのために企業協賛を獲得する仕組みも作りました。
この成果を評価してくださった行政の方から声もかかり、今は8月のイベントに向けて県のサポートを受けるべく調整を進めています。
阪急百貨店にポップアプ出店時の様子
「滋賀女子カクメイ」という名前には意図があるのですか?
ハネP計算して付けた名前です。「滋賀」「女子」「革命」という、わかりやすくてインパクトのあるキーワードを意識しました。行政や県外の方々との連携を見据えた時に、難しいおしゃれな名前よりも、一発で伝わる名前の方がいいと判断しました。最初は反対もされましたけどね(笑)。
旅で受け取った愛を次の世代へ。
滋賀から「可能性を感じられる地域」をつくる。
お二人にとっての"EVOLUTION×LOVE"を教えてください。
ハネP旅の中で、現地の人たちに本当にたくさんのものをもらいました。貧しい生活の中でもわざわざもてなしてくれる人たちに、お金を渡そうとしても誰一人受け取ってくれない。「君は私の家族だ」「その分誰かを可愛がってあげなさい」と言ってくれた。その積み重ねが「誰かに返していきたい」という思いになり、今の滋賀女子カクメイにつながっています。Namiko:も一緒に旅していて、旅行では得られない人との出会いの中で受け取ったものを、ブランドと活動を通じて還元していく。それが今の自分たちの在り方です。
Namiko具体的な瞬間で言うと、長浜のイベントが終わった後に「こういう場を作ってくれてありがとうございます」「過去最高の売上が取れました」という声をいただいた時です。正直、滋賀女子カクメイは利益がほぼ出ない活動です。でもその感謝の言葉と、数字としての結果が出た瞬間に、本当に嬉しくて。「これがやりたかったことだ」と確信できました。今までは自分たちのブランドとお客様だけに目を向けていたのを、広く滋賀のクリエイターに向けて誠実に動いたことで、皆さんが喜んでくれた。その体験がEVOLUTION×LOVEだと思っています。
ファブリカ村でのイベントの様子
10年、20年後はどのようになっていたいですか?
ハネP自分たちと関わったクリエイターが、今度は次のクリエイターに伝えられるように、バトンをつなげていけるような環境や地域になってほしいと思っています。私たちが発起人ではあるけれど、全く同じことをやるのではなく、このモデルを参考にして「こういう形で地方でもできるよ」と後世に伝えていく人が増えてくれたら嬉しいですね。
Namiko可能性を感じられる地域にしたいです。彦根には大学が3つあり、大学生の割合が全国でも有数と聞いていますが、その学生たちはほとんど滋賀で就職しない。就職先もない、面白いこともないと感じているからです。私たちが「滋賀でもこうやってできる」という姿を体現し続けることで、「ここにいても面白いことができる」と思える若い人が一人でも増えてほしい。それがこれからも続けたいことです。

ハネPさん、Namikoさんありがとうございました!「Mu-Mu」の運営と「滋賀女子カクメイ」を通じて、地方でも自分らしく輝ける道を切り開くお二人を、今後も応援させていただきます!