空でつながろう

Interview Vol.179 「播磨が熱い」と言い続けたら、
本当に人が動き出した。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。今回は、兵庫県加古川市の現役公務員でありながら、自治体の枠を越えた公務員ユニット「播磨三兄弟」の長男として、人と人をつなぎ地域を動かし続ける栗林正司(通称:くりりん)さんに話を伺いました。

「また、お前おるな」から始まった、
自治体の枠を越えて広がる、播磨三兄弟の挑戦。

「播磨が熱い」と言い続けたら、本当に人が動き出した。

ひょうご地域創生フェス「カケルDAY」:播磨三兄弟の皆さん(長男:栗林さん、次男:吉川さん、三男:茅野さん)

播磨三兄弟はどうやって生まれたのですか?

栗林コロナが落ち着いた頃まで遡ります。リアルイベントが復活した時に、どのイベントに行っても見かける2人が居て、「また、お前おるな」って、3人が顔を合わせるんですよ。それが今の吉川さん(高砂市:次男)と茅野さん(高砂市:三男)でした。2人ともこのエリアを盛り上げたいという思いがあったので、意気投合まで時間はかかりませんでした。岡山のイベントに三人で車に乗って行った時に、公務員アワードを受賞された小野寺崇さんが「播磨三兄弟ですね」と言ってくれたことが始まりで、この3人で播磨全体を盛り上げる活動をしたら面白いんじゃないかと思い、「播磨三兄弟」が誕生しました。

ポイントは「加古川」や「高砂」ではなく「播磨」というキーワードでブランディングしたこと。播磨って赤穂から明石まで広がる大きなエリアなんです。西播磨の人にとっての播磨と、僕ら東播磨の播磨は違う。でも「播磨」という言葉にすることで、みんなが共感するんですよね。あえて市名を使わないことで、エリア全体で仲間を増やしていく仕掛けです。

「播磨が熱い」と言い続けたら、本当に人が動き出した。

自治体広報担当のトークセッション「広報Night」

自治体の枠を越えるとはどういうことですか?

栗林行政の仕事って税金で動くから、基本的に自分の自治体の中でしか行動できない。官民連携でいい企業さんがいても、「うちの市は参加できない」となったらそこでご縁が切れてしまう。でも、社会的に価値のあることなら、別の自治体につなげればいいんです。

実際にあった事例で言うと、加古川では実証できなかった取り組みを高砂市で実証して、結果が出て兵庫県に広がって、最終的に加古川市が導入するという流れになった。自分の自治体がダメだから終わりじゃなくて、やってくれる自治体につないで「逆輸入」するやり方もある。そういう発想で、みんながwin-winになる活動をしようというのが、播磨三兄弟のコンセプトです。

「播磨が熱い」と言い続けたら、本当に人が動き出した。

ヒョウゴタレントショーケースにて登壇する栗林さん

数じゃない、濃さで沼らせる。
記憶に残る体験が人を動かす。

イベントや活動ではどんなことを大事にされていますか?

栗林よくあるのは「イベントやりました、集客何人来ました、イエーイ」というやつ。僕たちはイベントの参加人数そのものよりも、参加者一人ひとりの満足度や、その後に生まれるつながりを大切にしています。僕らのイベントって20人とか30人の規模感で、その人たちをどれだけ満足させるか、そして次にどうイノベーションを起こすかに重きを置いています。

特徴的なのは、セミナーの講師にはセミナー開始の数時間前を集合時間にしていること。普通は開始1時間前に来てください、と言うでしょう。でも僕は講師の方に早めに来てもらい、駅に迎えに行って、まちを案内して、「ここの施設はこんな思いでやっていて」と紹介して、B級グルメの「かつめし」を食べてもらって、「今日は全部案内できなかったんで、またゆっくり来てくださいね」と言ってからセミナーに入る。そうすると講師の方の期待感や地域への愛着が、セミナー開始前から自然と高まり、記憶の定着につながるんですよ。「色々なセミナーに行っているけど、播磨が一番印象に残っている」と言ってもらえるんですよね。

「播磨が熱い」と言い続けたら、本当に人が動き出した。

播磨イノベーションLabセミナー「出会いと対話がもたらしてくれたもの」後の交流会

あえて全部は見せない。「今日は全部回れなかったよね、一日じゃ厳しいよね。また来てね」と必ず伝えます。食べ物も「これ三ヶ月に一回、メニューが変わるんですよ」と言うと、三ヶ月後に来たくなる。また、播磨が誇る雄の秋田大介さんや播磨三兄弟全員には会えないこともあるんですが、「次来たら、会えるかも」とコンプリートしたくなる。「また来たい」と思ってもらえる余白づくり・おもてなしを意識しています。

セミナー後の交流会も工夫していて、居酒屋ではなくコワーキングスペースのようなフリーな場所でやるんです。席が固定されないからめちゃくちゃ動ける。参加者には自分の街の名産品を500円分ぐらい持ってきてねと伝えると、みんな自然と自分の町のPRを始めるんですよ。「なんでこれ持ってきたの?」と聞いたら「ここの会社さんとすごく仲が良くて、このパンめっちゃ美味しいんです」って。そこからまた新しいつながりや仕事が生まれていく。

最近、力を入れようとしているのが「おてつまち」。既に「おてつたび」っていうめちゃおもろいサービスがあるんですが、「おてつまち」とは、農業に興味はあるけれど交通手段がなく参加をあきらめていた若者たちを対象に、駅からの送迎付きで農業体験ができ、さらに野菜のお土産まで付いてくるという取り組みです。ポイントは、違う大学やコミュニティの学生を同じ現場に混ぜること。お互いが刺激し合って、場合によっては一緒に何かやろうよという流れが生まれる。体験もしつつ、人を混ぜ込むというのが私たちの街づくりコンセプトの一つです。

栗林さんにとっての地域活性とは何ですか?

栗林『共感人口』を増やすことだと思っています。関係人口ではなくて、共感人口。何が違うかというと、数じゃなくて濃さなんです。何度もその地域に来るのは、結局「人」が目当てなんですよね。観光地があるから来るんじゃなくて、会いたい人がいるから来る。場所があって人が集まるんじゃなくて、人があって場所が生きてくる。どれだけその地域や人に愛着を持ってもらえるか。どれだけ地域のファンになってもらえるか。つまり、どれだけその人を沼らせられるか、そこが地域活性の鍵だと思っています。

そのために僕らがベースにしているのはGive&Giveの精神です。遊びに来てくれた人には朝9時から夜7時まで丸一日アテンドすることもあるし、「こんなことやりたい」と声に出してくれたら「いつやる?」とすぐカタチにするサポートをしたり。押し売りは一切しない。おもてなしの中で土地の価値を自然に体験してもらい、その体験が口コミでつながっていく。そうやって一人ひとりとの濃いつながりを積み重ねていくと、共感する人が増えて、気づいたら地域が動き出している。それが僕の考える地域活性です。

「播磨が熱い」と言い続けたら、本当に人が動き出した。

地方公務員アワード2025年授賞式

利他の積み重ねが、信頼へと変わった。

栗林さんにとっての"EVOLUTION×LOVE"を教えてください。

栗林コロナ禍でオンラインを通じて全国の公務員とつながった時期が、一番大きなターニングポイントだったと思います。それまでは正直、自分がめちゃくちゃすごいと思っていたんですよ。でも全国には、もっとすごい公務員がいっぱいいることに気づいたんです。じゃあ自分の価値って何なんだろうと考えた時に、表に立って引っ張るよりも、裏方に回ってサポートする方が意外と自分に向いているんじゃないかと気づいた。そこから「最強の二番手」という伴走支援型のスタイルに切り替えたんです。

ただ、最初はうまくいかなかった。「手伝うよ、応援するよ」と寄っていくと、「こいつ裏あるんちゃう?」と怪しまれたんですよね。でもそこで引かずに、時間を使って本当にいろんなことをやり続けていたら、だんだん「本当に動く人だ」と周りの見方が変わっていきました。

決定的だったのは、僕に感謝を伝えたいというイベントをZoomでやってくれた人がいたことです。正直、3〜4人しか来なかったら寂しいなと思ってたんですけど、80人ぐらい来てくれて。著名な方々が「〇〇してもらってありがとう。貢献する姿勢がすごい!」などと言ってくれた時に、自分が積み重ねてきたことの意味や価値を、初めて実感できた瞬間でした。利他的にコツコツ積み上げてきたことが、ちゃんと自分に返ってくるんだなと確信できた。それが今の自分の原動力になっています。

「播磨が熱い」と言い続けたら、本当に人が動き出した。

播磨イノベーションLabセミナー「人的資本経営で生まれる共創の力が組織と地域の未来を拓く」

10年、20年後はどのようになっていたいですか?

栗林公務員の「務」を、いつか「夢」に変えたいと思っています。僕はそれを「公夢員」と呼んでいます。公務員だからできないのではなく、公務員だからこそ地域の可能性を広げられる。そんな挑戦を楽しむ人が増えたら、地域も国ももっと面白くなると思うんです。

自治体のセミナーや勉強会に参加して満足するだけではなく、その先で実際に行動に移し、オモイをカタチにできる人を増やしたい。若手公務員にも学生にも、「地域には面白い人がいる」「大人になるのも悪くない」と感じてもらえるような背中を見せていきたいと思っています。

僕が目指しているのは、各地に小さな火種を持った人が増えていくことです。そして、その火種同士がつながり、やがて大きなうねりになること。

播磨三兄弟の活動も、そんな未来につながる挑戦の一つだと思っています。

栗林さん、ありがとうございました!「最強の二番手」を掲げながら、人と人をつなぎ、地域に新たな可能性を生み出し続ける栗林さんと播磨三兄弟。播磨から生まれる共感の輪が、これからどのように広がっていくのか。その挑戦に今後も注目していきたいと思います。