空でつながろう

Interview Vol.184 エンタメの熱狂は、
街を動かす種になる。- 大学生たちと作る新しい祭 -

街づくりに関心を持つ大学生たちが「仕掛け人予備軍」として、ある現場に足を踏み入れました。舞台は東京・立川。「みんなで作る新しい祭」に参加したい大学生に集まってもらい、キックオフミーティングを開催。エンタメと街づくりを交差させるプロジェクトが始動しました。

エンタメの熱狂は、街を動かす種になる。- 大学生たちと作る新しい祭 -

お祭り企画の主催者よりフィールドワークの趣旨を説明

「仕掛け人」側になるために

集まったのは、イベントの企画・運営や音楽・エンタメ業界に関心のある学生、フィジカルAIやロボットなどテクノロジーで祭りを盛り上げたい学生、起業やプロジェクト立ち上げを見据える学生、地方創生や都市開発を志す学生——。顔ぶれは多様でしたが、共通していたのは「エンタメを通じた街づくりを、自分たちの手でやってみたい」という熱意でした。

EVOLOVEプロジェクトが数年にわたり日本各地で展開してきたのは、エンタメの力で街を動かすという発想です。この日はその理念を、実際に人が集まり熱狂が生まれる現場で若者たちに実感してもらう機会にしました。そして、街を活性化させる仲間を大学生の中にも見つけたい——今回、大学生たちに集まってもらった背景としては、そんな思いを込めています。

エンタメの熱狂は、街を動かす種になる。- 大学生たちと作る新しい祭 -

食と暮らしのWEBメディア「アイスム」編集長 中辻梓

街づくりの現場から

最初のプログラムは講演です。日本各地の都市開発に携わるデベロッパー、音楽業界関係者、メディアの編集長など、「エンタメ×街づくり」に取り組んできた社会人が講師を務めました。

テーマは大きく四つ。街の価値をどう上げるか。エンタメと町おこしの可能性。食をフックにした街のPR。そして、新しい住まいの探し方。根底に流れているのは「人がその街に集まりたくなる理由をどうつくるか」という共通の問いです。

「いい街だから人が来るのではなくて、面白いことが起きているから人が来る。そこに住みたいと思う人が増える」

街の価値というと地価や利便性を思い浮かべがちですが、この場で語られたのは「そこで何が起きているか」という体験の価値です。音楽ライブが定期的に開かれる街、食を通じて生産者と暮らしがつながる街、子どもたちの小さな成長を発表できる街——住まい選びの基準が「便利さ」から「楽しさ」へと変わっていく。エンタメという入り口から街づくりのリアルな数字や仕組みへ視点がつながっていく様子は、教科書では得られない発見の連続だったようです。

現場で汗をかき、知恵を絞る大人たちが、日々何を考え、何を実践しているのか。学生たちにとっては、リアルな社会人ロールモデルとの出会いになったのではないでしょうか。

ある学生は「音楽と不動産が同じ話の中でつながるとは思わなかった」と驚きを口にしていました。エンタメを起点にすれば、街づくりの間口はもっと広がり、もっと多くの人を巻き込めるのかもしれない——そんな予感を胸に、学生たちは次のプログラムへ向かいます。

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「祭り」を視察する

事例を学んだ後は、会場横の「夏の森羅万象祭」へ。ここからは座学ではなく、実地でのリサーチタイムです。

来場者としてただ楽しむのではなく、「なぜここに人が集まっているのか」「この団体は何を目的にブースを出しているのか」「どこで熱気が生まれているのか」——観察する視点を持って会場を歩き、出展者にヒアリングする学生たち。普段は気にも留めない祭りの設計に、街づくりのヒントが隠れていることに気づいていきます。

「祭りは一過性のイベントではなく、街の記憶に残る装置だ」という気づき。「自分たちの地元でも、こういう仕掛けができるのでは」というアイデア。まだ抽象的な段階ではあるものの、キックオフで得たインプットが実際の景色と結びつき始めた瞬間でした。

「見るだけなら何度もお祭りに行ったことがあったけど、仕掛ける側の視点で歩いたのは初めてでした」

ある学生の言葉が、この視察の意味を端的に物語っています。「楽しい」「賑やかだ」という感想の一歩先にある、「なぜ楽しいと感じるのか」「なぜここに人が留まるのか」という問いを持てるかどうか。その視点の差こそが、街づくりに関わる人とそうでない人を分ける、小さくて大きな一歩なのだと思います。

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ブースを巡り、出展者の話を聞く学生たち

アイドルが放つ圧倒的な光

祭りの視察を終えた学生たちは、立川ステージガーデンへ。この日もうひとつの主役、「ばってん少女隊」11周年記念ライブの幕が開きます。

ステージから溢れる光と音、客席から返る歓声。2千人以上が同じ瞬間に心を重ねる光景は、それ自体がひとつの「街づくりの完成形」のようでもありました。人と人がつながり、熱気が生まれ、その熱気がまた次の何かを呼び込む。エンタメの力を、理屈ではなく肌で感じる時間です。

学生たちにとって、このライブは単なる余興ではありません。キックオフで語られた「楽しい、参加したい」という熱量を生み出す力——その意義と価値を、実際に体験したからこそ理解できた。エンタメという力の、確かな証明でした。

エンタメの熱狂は、街を動かす種になる。- 大学生たちと作る新しい祭 -

ばってん少女隊 公式X提供

業界のプロたちと語り合う

ライブの熱気が冷めやらぬ中、交流会へ。この日出会った様々な業界の社会人と食事をともにしながら、感じたこと、考えたことを言葉にしていく時間です。

日中のプログラムを振り返る声も、あちこちから聞こえてきました。

「キックオフで聞いた話が、ライブ会場の熱気を見て、ようやく実感として腑に落ちました」

ある学生のその一言に、講師の一人も深くうなずいていました。座学、視察、そして本物の熱狂を体験するライブ。三つの異なる時間を一日に凝縮したからこそ、頭での理解が体感へと変わっていったのかもしれません。

「街づくりって専門家だけのものじゃないと分かった」

ある学生がそうこぼすと、隣のデベロッパーが笑いながらうなずきました。「むしろ、皆さんみたいに現場を面白がれる人こそ、これからの街づくりに必要なんです」。肩書きや世代を超えたフラットな会話が、いくつものテーブルで交わされていました。

この交流会自体もまた、EVOLOVEが掲げる「関係創出」の実践の場でした。情報を一方的に届けるのではなく、一緒に何かをやろうと誘い合う関係性づくり。今日出会った学生と社会人のつながりが、そのまま次の企画の芽になっていく——そんな化学反応も、十分に起こり得ます。

エンタメの熱狂は、街を動かす種になる。- 大学生たちと作る新しい祭 -

長い1日の様々な体験を振り返り、次の企画へとアイデアが溢れる

「新しい祭」は、ここから始まる

これらのイベントは、あくまで「みんなで作る新しい祭」というプロジェクトの始まりに過ぎません。この日、学生たちが得たのは知識だけではなく、街づくりを"自分ごと"として語れるようになった手応えでした。

エンタメの力で街を動かす。そのために必要なのは、大きな予算でも壮大な計画でもなく、まず人が集まりたくなる理由をつくり、そこに関わる人同士の関係を育てていくこと——なのかもしれません。ライブの歓声も、祭りの賑わいも、ビュッフェで交わされた何気ない会話も、すべてはその「関係」を紡ぐ糸になります。

すべては、これから始まる物語の第一章です。エンタメが人をつなぎ、人が街を動かす。その最初の一歩を踏み出した学生たちの瞳には、単に「楽しかった一日」という以上の何かが宿っていたはずです。

EVOLOVEが目指す「共創エコシステム」は、こうした小さな出会いの積み重ねの先にしか生まれない。それを改めて実感させられる一日でした。参加してくれた学生たちとともに、「新しい祭」へとつなげていきたいと思います。

エンタメの熱狂は、街を動かす種になる。- 大学生たちと作る新しい祭 -

住み替えを提案するメディア「すむむ。」総合プロデューサー