空でつながろう

Interview Vol.22 旅館から政治の世界へ。
変容していく、高知への郷土愛。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第22弾の今回は、高知県高知市で、高知の観光産業の発展に取り組みつつ、高知市議会議員として活躍されている横山公大さんにお話を伺いました。

旅館から政治の世界へ。変容していく、高知への郷土愛。

地域の皆様と横山さん(右から3番目)

先輩の背中と自分の居場所から芽生えた、
地元への想い。

Q.現在の活動について教えてください。

横山現在のメインの活動としては、2つ。一つ目は株式会社オルトルという会社を立ち上げ、高知の活性化につながる事業を行なっています。創業者として会社を育てたいという想いでスタートしたオルトルは、今年で8期目を迎えました。

そしてもう一つ、45歳の時に市議会議員にチャレンジしました。ありがたいことに新人でトップ当選し、この春で2期目の当選をさせていただきました。

そして僕の活動の根本となるのが、旅館です。実家は土佐で旅館を営んでおり、僕も最初は旅館の運営がメインでした。しかし高知で観光業に携わる中で、色々なことに挑戦してみたくなり…。そこで実質的な運営は弟に譲り、僕は社外取締役という形で、旅館の経営にも少し携わっています。

Q.地元、高知に対する想いは、昔から強かったのでしょうか?

横山若い時は、地元への想いは強くありませんでしたね。実家を継ぐ気持ちもありませんでした。しかし高校を中退して料理人として働いたり、定時制高校に通った後にニュージーランドで働いたりといった紆余曲折を経て、26歳の時に家庭の事情で実家を継ぐことになりました。親が旅館を手放すかもしれないという話が出た時、小さな頃からの居場所がなくなることに寂しさを感じ、実家を継ごうと考え直しました。

本格的に高知を良くしたいと思うようになったのは、30歳の時。全旅連という旅館組合の青年部に入ったことがキッカケでした。地域を愛し、地域のために精力的に活動している先輩たちの姿が、とてもカッコよかったのです。その姿を見て、自分も高知のためにもっと働こうと決意しました。

Q.活動を通して、高知への想いは変わりましたか?

横山日に日に高知への愛は深くなっていると思います。僕は観光というのは、「どこに」連れて行くかも大切だけど、「誰が」連れていくかが一番だと思っています。たとえば高知にお客様が来た時、僕が案内しますよね。その時には、到着時から飛行機に乗る最後の瞬間まで楽しんでもらおうと思って、案内しています。

楽しんでもらうために大切なのは、自分の言葉で高知の良さを語れるかどうか。自分で調べたり魅力に気づいたりといった愛がなければ、人に良さを伝えることはできませんよね。そういった意味で、知れば知るほど高知への想いが深くなっていると感じます。

高知県の地域活性化や地域創生について、どう感じていらっしゃいますか?

横山高知に大きな基幹産業はありません。そのため、ここ20年くらいの動きとして、観光産業を育てていこうという機運が高まっています。

僕は観光というものは、そもそもの語源である、易経の「国の“光”を“観”る」という言葉通りだなと思っています。海・山・川・食・文化、あらゆる魅力がある中で、高知ならではの“光”をどう際立たせていくのか。

たとえば高知であれば、坂本龍馬が有名ですよね。坂本龍馬が亡くなって200年近くになりますけど、未だに坂本龍馬に魅力を感じて、多くの人が高知を訪れます。長い歴史と地域資源で、僕たちは生かされていることを実感します。

だからこそこれまでの資源を大切にしつつ、将来の子どもたちのために新しい光を見つけ、創り上げていく大切さを感じます。

最終的に高知に根付く人材を育てたいという想いはありますか?

横山もちろんです。地元を元気にしたい若者が輝く環境を作ること、高知に根付いてくれる若者を増やすことが、地域活性化の根源です。

僕は、40代を中心とした社会構造がベストだと思っています。でも若い人に活躍の場を譲るという側面が、今の日本には足りない。上の世代がいるかぎり、若い人は意見を言えないし、良い意見であっても採用されないことも多い。そういう世界は避けたいので、高校生を含めた若者には「上の世代に遠慮する必要はない」と常に話しています。若者に「この地域は若者の意見が形になる」と思ってもらえる町を目指したいですね。

旅館から政治の世界へ。変容していく、高知への郷土愛。

高知市議会議員選挙へ初挑戦時の街頭演説をする横山さん

旅館業から次のステップ。
起業、議員、市長へ夢。

Q.横山さんにとって“EVOLUTION x LOVE”とは何でしょうか。

横山旅館を通して、高知の未来を深く考えるようになりました。僕が20歳くらいの時には、全国に旅館は8万軒くらいありました。しかし今では、3万軒ほどでしょうか…。実際、地域活動に熱心だった先輩や、一緒に頑張ってきた仲間の旅館が、バタバタ潰れた時期がありました。地元の旅館がどんどん減っているのに、何も出来ない悲しさ、悔しさを痛感しましたね。
そんな時に出会ったのが、大嶋啓介さんという方が生み出した「居酒屋甲子園」という、居酒屋日本一を決めるイベント。居酒屋甲子園を旅館業界でも取り入れるため、35歳で全旅連の代表に挑戦しました。

旅館甲子園は日本一の旅館を目指すものですが、課題やノウハウをみんなで共有しようという意図が大きいです。集客に関わるノウハウや成功事例は、基本的に企業秘密。しかし業界全体が衰退している今、そんなこと言っていられないですよね。ならば頑張っている旅館の事例を共有することで、旅館も地域も盛り上がってほしいという狙いがあります。

今は旅館の仕事からは一線を引いていますが、旅館での仕事を通して「もっと高知のために、自分にできることはないか」という想いが、より強くなりました。今では経営者としての側面もありますが、やっぱり仕組みから地域を活性化させたいという想いが強くなり、市議会議員への立候補を決めました。

旅館から高知の活性化に着目し、次は仕組みを決める政治の分野に挑戦する。それが、僕にとっての「進化する愛」ですね。

旅館から政治の世界へ。変容していく、高知への郷土愛。

様々な産業界の皆さんとの懇談会

Q.今後は、どのような構想がありますか?

横山もともと人と人をつなげるのが好きなので、今後も自分のリソースを高知のために使いたいという想いは強くあります。特に議員は、全国の人や企業と出会うチャンスが多くありますから、高知に取り入れたいシステムやアイデアを学べることも多く、刺激を受けています。

そういった意味で、将来的には市長に挑戦したいです。もちろん責任も大きいですが、市長になれば、実行までのスピードが格段に早くなりますよね。ほかの地域の事例を高知で実践することで高知を元気にしたいので、次は市長になることを目標にしています。

とはいえ、挑戦するのは60歳まで。それ以降は潔くリタイアして、若い世代中心の町にしないといけないと思っています。

Q.今の若者に対して、感じることはありますか?

横山僕の場合、周りが見えてきて色々なことに気づき始めたのが、27歳くらいの頃。もう少し早い段階で色々気づけたら、もっと豊かな大人になれたのに、と、正直思います。

だから今の若者には、たくさんの大人と話して、たくさん本を読んでほしい。人との出会いと読書が、気づきにつながっていきますから。たとえば青年会議所や商工会議所。実は地域活動をする機会が多く、若い経営者も多く集まっています。そういったところで人脈を持つと、アイデアや世界が広がるのではないでしょうか。

   ありがとうございました!ご実家の旅館からスタートし、経営者、市議会議員など数々の側面を持つ横山さん。いつか市長として、高知の魅力を発信するリーダーになることを、今から楽しみにしています!