空でつながろう

Interview Vol.31 子どもと大人が共創する、
新潟のまちづくり。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第31弾の今回は、新潟県新潟市を拠点にしてNPO法人みらいずworksを運営している小見まいこさんにお話を伺いました。

子どもと大人が共創する、新潟のまちづくり。

みらいずworksのチームメンバーと小見さん(写真右下)

地域とつながることで、
子どもの未来を照らしたい。

Q.現在の活動に至ったキッカケを教えてください。

小見教育関係の学部に通っていた私は、大学1年生の時に放課後フリースクールの立ち上げに関わりました。フリースクールでの活動を通して感じたのは、もっと子どもが地域の人と関わって、何かを生み出せる環境が大切だということ。

その課題を抱えながら卒業後に就職したのは、新潟県内の印刷会社。卒業アルバムなどのアルバム制作をメイン事業に、社内研修「点塾」の企画運営など、色々な活動をしている会社でした。

「点塾」の研修のコンセプトは、「教えない・命令しない・規定しない」。年齢や役職を問わずフラットに話し合える場や学びづくりに、10年ほど携わりました。加えて私自身もファシリテーションを学ぶ中で、子どもへのキャリア教育や、子どもも含めたまちづくりの重要性を感じ、学校支援事業をスタートしました。

その後、事業に本気で取り組むため、退職。2012年にみらいずworksを立ち上げ、2016年にNPO法人へ。現在もキャリア教育や子どもの未来づくりサポートを行なっています。

Q.現在の活動への想いや意義をお聞かせください。

小見活動を始めてからずっと、子どもと地域が分断されていると感じていました。そんな折に、尊敬しているNPOの先輩の「キャリア教育は日本を救う」という言葉が心にささり、キャリア教育を学び始めました。NPO法人を立ち上げたのも、子どもと地域とのつながりやキャリア教育に命をかけて取り組みたいという強い思いからでした。

子どもには活動を通して、自分の良さも他者の良さも認めながら、みんなと一緒に社会を創っていけるような人になってほしいと思っています。そのためにも学校・家庭・地域をつないだり、探究学習をしたり、学びの環境づくりに取り組んでいます。

Q.現在の活動を通して、地元を活性化させたいといった想いはありますか?

小見出身地である新潟で活動しているのは、地域の人に育ててもらった恩を感じているからですね。小さい頃、県民少年団という青少年の野外活動をしていたのですが、私の所属している団長の姿がすごく心に残っています。団長は癌を患い、チューブをつけながらもボランティアで私たちの活動を支えてくれました。ですから私も、自分の活動を通して地域の子どもの未来を照らし、地域活性化につなげたいという想いがあります。

またこれまでの活動を通して、学校の先生方も一人の人間で、先生として求められる姿や、学校と家の往復になりがちな生活、ほかの職種の人との関わりの少なさに悩んでいることを知りました。そうした先生方を支えることも、子どもの教育の質の向上、つまり地域活性化につながると感じています。

先生たちを対象としたファシリテーション研修の様子。

Q.小見さんにとっての地域活性化とは何でしょうか。

小見地域活性化とは、人作り。人が元気になると、地域が元気になる。そのためにも、成長やつながりの必要性を感じています。一緒に汗を流したり会話をしたり、多様な人が集まることで自分の考えがアップデートされたり、誰かのやりたいことを応援したり。そしてまた別の人を応援して…という循環が、地域活性化につながっていくのではないでしょうか。

特にコロナもあり、自然と人がつながる機会が希薄になってきています。地域での活動を、改めて丁寧に作り直していく必要があると感じています。

学校だけ、子どもだけじゃない
「学び」の拠点の必要性。

Q.小見さんにとっての”EVOLUTION x LOVE”を教えてください。

小見学生時代に研究していた「子どもが参加するまちづくり」の意義を、より深く考えるようになりました。当時フィールドワークで、川が管理されすぎていて自然と触れ合えないという話を聞きました。そこで子どもたちが、「子どもも含めた地域の人が触れ合える水辺空間」を考えて行政に提案し、実現されたのです。

子どもは大人が思っている以上に考えているし情熱もあるし、大人の固定観念を超える発想ができる。これまでは子どもになにかして「あげたい」と思っていましたが、子どもも地域をつくる主役になれると実感しました。

その経験を踏まえ、みらいずworksでは子どもが主役になれることを主眼に置いています。たとえば震災の時、内陸部の子どもが被災地を訪問し、困っていることをヒアリングしてプロジェクトとして解決する企画の支援を行ないました。

今、こども家庭庁の創設により、子どもの声を社会に活かそうというムーブメントができています。私も子どもが参画できるまちづくりをこれまで以上に模索したいと思うようになったのが、私にとっての”EVOLUTION x LOVE”ですね。

子どもと大人が共創する、新潟のまちづくり。

新潟県内の高校生100名が集う祭典、マイプロ新潟事務局を運営担当

Q.今後、やってみたいことはありますか?

小見子どもと地域をつなぎ、「学び」を変えていきたいです。具体的には、子どもが地域資源や人と出会い、興味関心のあるテーマを探究したり、実践を通して学んだりする機会です。学校の教科学習もちろん大切ですが、地域や社会で体験したこと、実践したことを教科で得た知識と結び付けて深い学びにしていきたいです。

そのために、高齢者や子育て中のお母さんなど、多様な人が学ぶ拠点を作ることで世代間の交流が生まれる環境があったらいいですね。子どもには大人にない発想や主張があるし、大人にも知恵や技術、誇りがある。世代を分断するのではなく、課題を一緒に解決していける生態系を作りたいです。

Q.現在、足りていないことはありますか?

小見近い将来に向けて、中高生の居場所づくりが急務ですね。というのも先生の働き方改革の流れなどで、部活動を地域に移行する流れが起こっています。必然的に部活動が縮小していくので、中高生の放課後の過ごし方がガラリと変わります。

たとえば放課後に企業や地域団体、NPOなどでインターンをしたり、公民館で活動をしたり。さらに言えば、その活動を通して自分より少し年上の若者と会話したり、農家のおじいちゃんと採れた野菜を食べながらおしゃべりしたり。そういった学校以外で視野を広げられる環境が足りていないと感じていますね。

Q.最近の若者に対して感じることはありますか?

小見みんな素直でいい子で、協調性もあります。自分のやりたいことへの熱量は強いですが、逆に興味のないことには、関知しない傾向もあります。SNSも自分の興味のある情報が集まるので、いい意味での雑音との接点がないと感じています。

本来興味がない「雑多なもの」と出会えるのが、地域。使い込まれた道具や、営みで培った大人の考え・誇りなど、立体的で質感のある情報との接点を持つことが、新しい発見につながるのではないでしょうか。そうした出会いを繰り返すうちに、自分はもちろん他者にも目を向けるようになり、地域を見つめることにもつながるはず。

子どもや若者も社会をつくる一人ですし、より良くできる当事者。子どもや若者が地域や社会の未来に希望を持ってもらえるよう、これからも活動していきます。

   ありがとうございました!インタビューではここでは書ききれないくらい、子どもと地域をつなぐ接点についての可能性を提示していただきました。現在のプロジェクトが子どもはもちろん、学校・教師・地域・保護者など、子どもを取り巻く方々の希望となれるよう、これからも応援させていただきます。