空でつながろう

Interview Vol.35 三島エリアの企業を、
東京都心や世界へ

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元/地域愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第35弾の今回は、静岡県の三島エリアで、地元の中小企業の経営支援や、都市部とのマッチングを行なっている、「合同会社 うさぎ企画」の森田創(もりた そう)さんにお話を伺いました。

三島エリアの企業を、東京都心や世界へ

地域のモビリティ「つなモビ」の実証実験の関係者の皆様と森田さん(写真右下)

人づくり・場づくり・足づくりで実現する、
地域活性化。

Q.三島エリアで活動するに至ったキッカケを教えてください。

森田現在、住居兼事務所として、三島エリアに拠点を置いています。ここで活動することになったのは、2年半前。新しい働き方を模索したかったことが理由です。

前職の大手鉄道会社に勤務していた時、伊豆半島で新規事業を手掛けていました。仕事を通して伊豆半島と関わる中で、伊豆半島のゆったりした雰囲気に惹かれるようになりました。ちょうどコロナで毎日東京に出勤する必要がなくなったので、リモートワークをしながら自分がこれまで培ったスキルを地元で活かせる副業がしたくなり…。これまで仕事一筋だったので、ワークライフバランスを取る新しい生き方を模索したいという思いもありましたね。

そこで都市部にもアクセスしやすく、それでいて地方ならではの穏やかな雰囲気のある三島エリアを選びました。三島エリアは東海道が通っていたこともあり、外部の人をおおらかに受け入れてくれる土地柄。その空気感も安心材料となり、現在の場所に住むことを決めました。

Q.活動を通した地域への想いをお聞かせください。

森田今は三島を拠点にしつつ焼津にも支店があります。私が目指しているのは、静岡があらゆる地域のプロトタイプになること。静岡は全国で15番目くらいの人口規模。そして一つの県でも、東部・中部・西部で生活環境・文化が大きく異なります。つまり、静岡で取り組んだ地域課題を、静岡以外の同規模の地域に展開できる可能性を秘めています。

コロナをキッカケに都市と地方を行き来するムーブメントが起こっていて、軽井沢や那須塩原など、東京から100km圏内への移住が注目されています。リニアが開業したら、さらにこの傾向が加速していくと予想されています。ですから僕自身が二拠点生活をしつつ、自分のキャリアを追求できる実験台になれればという想いがあります。

さらに地域への想いで言えば、三島エリアは、穏やかで本当に居心地のいい町。裏を返せば、外に出ようというハングリー精神が少し薄いところがあります。ずっと同じところに住んでいるからこそ、自分たちの地域の良さに気づいていないという課題もあります。だから、現在の事業を通して都市部でこの地域の素晴らしさをPRしたり、地元企業が東京に進出していってほしいと考えています。この地域にいながら、東京ひいては世界に行けるような支援がしたいです。

Q.ご自身としては、三島エリアに対してどのような想いをお持ちでしょうか。

森田今は量から質へと変わる時代。東京は量はあるけど、意外と新しいことを始めるのが難しい空洞地帯です。逆に地方は、量はないけど質というか、課題が山のように転がっています。つまり課題を見つけ、解決していくビジネスが醸成しやすい土地ではないでしょうか。さらに三島エリアはおおらかな雰囲気で、スタートアップに最適な地域だと思っています。

東京か地方かという二極論ではなく、都市部に近い地域だからこそ、お互いの良さを吸収しあい、マッチングさせていくことが重要です。そのためにも僕が「ビジネス通訳」として、都市部とこの地域をつなげる存在になりたいです。

三島エリアの企業を、東京都心や世界へ

経産省関東局事業「地域の人事部」での地元企業向けセミナー

Q.地域活性化についてどうお考えでしょうか。

森田僕は地域活性化は「人づくり・場づくり・足づくり」だと思っています。

近年、東京の優秀な人が地方に出て、新しいことをしている事例を多く聞きます。地元の人と「よそ者」がコラボレーションすることで新しい活動が生まれる、そんな「大人の部室」を作っていくことが、地域活性化につながるのではないでしょうか。

そのために必要なのが、やっぱり「足」であるモビリティ。その地域に不慣れな首都圏の人でも、効率よく目的地にアクセスできるインフラの整備は必須です。そうしたハード面の整備をしつつ、僕は都市部から「課題を解決できる面白いよそ者」を見抜いて連れてきたいですね。

地域においては、機会損失が一番もったいない。人々が出会うことでイノベーションが起こるはずなのに、移動手段がなかったり集う場所がなかったら、交流機会がなくなってしまいますよね。人はもちろん、移動手段・場所、すべてが結びついて、地域は活性化します。そこを改善することで人の流動が生まれ、地域の血流がよくなっていくのではないでしょうか。

三島エリアの企業を、東京都心や世界へ

東伊豆町で交流型モビリティ実験

「地元」と「移住者」との融合で、
化学変化を起こしたい。

Q.森田さんにとっての”EVOLUTION x LOVE”とはなんでしょうか。

森田この地域が素晴らしい土地だからこそ、もっと外に出てほしいという想いが強くなりました。「移住者」だからこそ感じる地域の素晴らしさや外部の目線を伝えていくことで、「それなら…」と奮起してもらえるよう、上手に火をつけていきたいですね。

僕は独立してまだ1年半ですが、国道計画を作る委員に選ばれたり、地元企業の顧問になったり、地域の企業と密接に結びつく機会が増えています。その立場を活かし、顧問先の企業では、「地域から都市部・世界へ」という想いを伝え続けています。僕が口酸っぱく話すからか、最近になって少しずつ、みんなの目線が外に向かうようになった気がします。

地域活性化と逆行するかもしれませんが、この地域がすばらしいからこそ、都市部や世界に出てほしいと思うようになったのが、僕にとっての”EVOLUTION x LOVE”です。

Q.現状の活動で足りていないことはありますか?

森田やはりコミュニティでしょうか。たとえば「副業」「まちづくり」など、各地で共通するテーマを持つ人達がコミュニティを組むことで、事例を共有することができます。地域活性化に関しても、全国には地域活性化に取り組む方が多くいらっしゃる。その方たちをつなぎ、人脈やノウハウをシェアできれば、自分たちの地域の活性化に還元できます。

そのためにも同じテーマで活動する人たちが集まれる場があるといいですよね。地域活性化と一言で言っても、「食」「伝統芸能」「経済」など色々な分野があるでしょう。時には分野を限定せずに集まることで、思いもよらない化学反応ができると期待しています。

Q.最近の若者に対して感じることはありますか?

森田良識的で社会への関心が高いし、器用で優しい子が多い。一方で、見えない道を突っ走るのが苦手かなとも感じています。世の中には、やってみなければ分からないことが想像以上に多いですよね。見えない道の中に強引にレールを引いて突き進む…といったような、保証されていない道に足を踏み出すことに対しては消極的ではないでしょうか。

特に最近の子は情報が溢れていて、すべて結末が分かってしまう。でも、白か黒ではないグレーな部分も多い。グレー、つまり余白に触れることが大切だと感じています。

AIが台頭する中、人間だからこその強みは、学習できていない未知の世界に対して失敗覚悟で進むこと、そして失敗をそのままにせず改善策を考えられること。僕自身も若い時、数えきれないくらい失敗しています。謝ったら許してもらえるのは、いわば若者の特権。だからどんどん失敗してリカバリーしましょう。若いうちにどれだけ失敗したかで、これからの人生が変わっていくのではないでしょうか。

   ありがとうございました!静岡と都市部をマッチングさせる事業を手掛けている森田さん。都心に近い地方という利点を活かし、今後も地方と都市部のマッチングを加速させていくとのこと。今後、森田さんがキッカケで、都市部や世界に羽ばたいていく地元企業がどれだけ生まれるか、今後も応援させていただきます。