空でつながろう

Interview Vol.37 世界中の人が秋田県・仙北市で“遊ぶ”、
未来を目指す。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第37弾の今回は、秋田県仙北市で地域活性化に取り組む東風平薪人(おちひら まきと)さんにお話を伺いました。

世界中の人が秋田県・仙北市で“遊ぶ”、未来を目指す。

東風平薪人さん(写真右)

「娘の誕生=地域の出生数」だった衝撃。

Q.現在の活動に至った経緯を教えてください。

東風平僕は沖縄生まれネパール育ち。国際教養大学に進学したのが秋田との出会いでした。卒業後はそのまま地域おこし協力隊として活動し、現在も地域活性化に向けた様々な活動を行なっています。具体的には、海外からの旅行客に向けたサービスです。農家民宿として、古民家を活用した民宿を運営しています。また秋田の自然を体験できるアクティビティツアーも運営しています。ほかにもランドオペレーションという、オーダーメイドで観光のプランニングを行なう事業も行なっています。駅前の事務所は、シェアオフィスとしても開放していますよ。観光業を通して地域を活性化させることを軸としています。

Q.地元・沖縄県ではなく秋田県で活動している理由を教えてください。

東風平進学先として縁があった秋田が、露骨に課題が表面化していたことが理由です。その課題に直面したのが、2年前。娘が生まれた時でした。コロナ禍だったので里帰りせずここで過ごしたのですが、その月、仙北市で生まれた子どもが娘だけだったのです。生まれた子は娘一人しかいないのに、亡くなる方は同じ月に何十人もいる。その事実がかなりショッキングで…。同じようなことは、全国で起こっているはず。それを知ってしまった以上、将来のためにも見て見ぬふりができず、地元を盛り上げる活動をしようと決意しました。

僕の地元である沖縄は移住者などによって、人口が増えています。また観光も立て直しつつあり、着実に盛り上がっています。それならば、子どもが育つ土地であり、少子高齢化の課題に直面している秋田で活動しようと決めました。大学在学中に地域の人や仲間とのつながりができたことや、仙北市が秋田県の観光地の筆頭であることから、仙北市で活動することを決めました。

Q.仙北市に対しての想いをお聞かせください。

東風平僕は「まだ見ぬ遊びで世界を目指す」をスローガンにしています。今の活動の軸は観光ですが、ポイントは「遊ぶ」ということ。いかにして秋田・東北で遊んでもらうか、遊び倒すかを命題にしています。もちろんお客様だけでなく、僕自身も遊び倒したい。今いる場所で「遊び倒す」という意識を、地元の人にも根付かせていけたらと思います。

たとえば最近では、囲炉裏でパンを焼くアクティビティをしています。秋田といえばきりたんぽですが、これを「パンたんぽ」と呼び、チョコチップ・ベーコン・いぶりがっこなどを混ぜたパンを焼く。ほかにも豚バラからベーコンを作ったりピザを焼いたりコーヒーを焙煎することもできます。囲炉裏といえばイワナを焼いたり汁物を作ったりというイメージですが、あえてそれ以外の食材を使うことで、囲炉裏で色々な遊びが可能なのです。

ほかにも地元の人しか知らないローカルな居酒屋に連れて行って、飲み比べをしながら日本酒の魅力を伝えるといったツアーも企画しました。

僕の活動で大切にしているのは、ストーリーを伝えること。ストーリーを絡めて説明するとお客様も購買意欲が高まるし、愛着も湧いてくる。古い文化に新しい要素を加えながら、「楽しく遊んでもらう」場所として、仙北市が選ばれたらいいなと思っています。

Q.東風平さんにとって、仙北市はどのようなところですか?

東風平やはり、地域活性化のスタート地点ですね。実は僕は沖縄出身ですが、育ちはネパール。ネパールにはヒマラヤ山脈があり、外貨を稼ぐ方法は主に観光しかありません。田舎に行けば行くほど働き盛りの人は県外に、中には海外にも出ていってしまう。しかも海外の劣悪な環境で働かされ、無言の帰宅をするケースも耳にします。ネパールも日本も、田舎からその国が崩れていくならば、まずは仙北市からスタートして、今いる秋田県、育った沖縄県、ひいてはネパールに至るまで、田舎に仕事を作っていきたい。働き盛りの人がその地域から出ることなく働き、暮らし、そして遊べる仕組みを作る。そのスタート地点が仙北市だと思っています。

Q.仙北市への想いを踏まえて、地域活性化をどのようにお考えでしょうか。

東風平先ほどの質問と同様に、人がちゃんと生活していけることが地域活性化だと思っています。大切なのは、仕組みはもちろん一人ひとりの意識。たとえ人口が減っていようと、そこに住む人がその土地で楽しみを見いだせるかが大切だと思っています。

もちろん人口減少=地域の衰退と言えますが、人口が減少する現実を諦めて、ただ嘆いているだけでは何も解決しません。減っていく未来の中でどう賑わいを作り出していけるかも、一つの地域活性化のカタチだと思っています。

世界中の人が秋田県・仙北市で“遊ぶ”、未来を目指す。

海外旅行者を案内する東風平さん

地元でも夢が見られる。
そんな地域を皆で作る。

Q.東風平さんにとっての”EVOLUTION x LOVE”を教えてください。

東風平やはり娘が生まれた時の「今月の出生数:1」の衝撃が忘れられません。出生数が1なのに、亡くなる人の数は30倍、40倍もいる。その状況を目にした時に、「何もしなかったらこの町は終わる」と肌で実感しました。

もちろん私たちの代であれば、その状況を見て見ぬふりして逃げ切ることはできます。しかしそれでは子どもたちの世代に無責任だし、この状況はもはや災害だと思っています。ゆっくりと地域がなくなっていく、静かな災害。そんな災害が自分の住む町で起こっているのに何もしないということは、僕にはできなかった。だから今の活動を通して、人口が減っている中でも仙北市で夢を見ることはできるし、次世代にも、「ここで夢を見られるよ!」ということを示していきたいというパッションが、より強くなりました。

ちなみに娘の誕生をキッカケに活動を始めると、同じような想いを持つ人が多くいることを知りました。同じようにこの現状に対して闘志を燃やしている人の力を借りながら、自分の活動を少しでも前に進められたらと思っています。

大切なのは、このつながりをもっと広くしていくこと。せっかくのムーブメントも、小さければ焼け石に水。だから現役を引退したシニア層はもちろん、高校生・中学生、さらには小学生もみんな一緒に、地域を変えていかないといけない。そんな「つながり」も意識するようになったのが、僕にとっての”EVOLUTION x LOVE”です。

Q.10年後、20年後のビジョンはありますか?

東風平地域に根づくものすべてを守ることはできないので、取捨選択をしなければいけないと思っています。次世代に残すべきもの、あるいは私たちの代で終わりにするものを、我々だけでなく、次世代の子どもたちも踏まえて決めていく作業をする必要があります。次の仙北市を作るのは、子どもたち。ですから彼らにも積極的にまちづくりに関わってもらい、「何が本当に大切なのか?」を問い続けていくことで、10年後、20年後も続いていく仙北市ができるはずです。

世界中の人が秋田県・仙北市で“遊ぶ”、未来を目指す。

秋田県内で活躍する地域おこし協力隊の全体オンラインMTGの様子

Q.最近の若い人に対して感じることはありますか?

東風平やはり東京志向が強いですよね。良い大学や就職先を選ぼうとすると、どうしても東京に行かざるを得ない。若者が地元に夢を抱けずに東京に行ってしまうのは、その地域で夢を見るための行動をおろそかにしてきた、大人たちの責任だと思っています。

その上で相反することですが、若者には「積極的に外に出よう」と言いたいですね。日本や海外など、外の世界をたくさん見ることで、自分の視点が多面的になっていくと思います。自分の足で歩くと、靴の中に入ってくる石ころのように、自分の心の中に“気になり続けるもの”が入ってくるはず。いつか人生のどこかで取り出すことになる“石”を見つける作業として外に出ることが、成長につながっていくのではないでしょうか。

   東風平さん、ありがとうございました!娘さんの誕生をキッカケに、地域の未来を考え始めたという東風平さん。今後、どんな“遊び”を通して仙北市の魅力が日本・世界に発信されるか、楽しみです。東風平さんの活動を今後も応援させていただきます。