空でつながろう

Interview Vol.45 高校生と地域を結ぶ、
学びの架け橋。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第45弾の今回は、高校生を対象とした地域活動をサポートする「特定非営利活動法人かえる舎」の斎藤和真さんにお話を伺いました。

高校生と地域を結ぶ、学びの架け橋。

イベント出店時に生徒たちと(2017年)※写真上段左から5番目斎藤さん

原動力は、育ててくれた富士吉田への恩返し。

現在の活動について教えてください。

斎藤山梨県の富士吉田市で、NPO法人かえる舎という教育団体を運営しています。メインの活動としては、高校で行われる探究学習の支援や、地域で活動したい若者に対して機会を作ったりしています。僕自身、富士吉田市に来たのは9年前。8年前にかえる舎を立ち上げてからずっと、地元の若者に向き合い続けています。

具体的には、地域を探究する授業で、高校生が地域の課題を見つけて企画書を作り、解決に向けた方法を考えるといった事業を行なっています。ほかには地域の魅力を発信するため、富士吉田の特産である織物を高速バスのヘッドカバーに活用したり、富士吉田の名産品を高校生が道の駅でPRしたりといった活動も行なっています。

富士吉田市で活動するに至った理由を教えてください。

斎藤富士吉田に来る前には色々な地域で活動していました。ただ卒業後も活動を継続できる地域は少なく、チャンスをくれたのが、富士吉田でした。

ですから僕以外にも、仲間2名と一緒に「20代を富士吉田に賭けてみよう」と、ここに根付くことを決めました。そのうちの1名とかえる舎を立ち上げ、現在に至っています。

富士吉田への想いをお聞かせください。

斎藤富士吉田に対しては、恩返しという気持ちが大きいですね。新卒の何もわからない若者を街に呼んでくれて、育ててくれたことへの感謝は強く感じています。行政職員の方には特にお世話になりました。富士吉田の行政職員の方と関わることで色々な経験を積ませていただいたので、この地や人にどう恩返しができるかを、常に考えています。その一つとして取り組んでいるのが、かえる舎です。僕が経験してきたように、若くてもチャレンジできる環境を富士吉田で作っていきたいという想いを持っています。

富士吉田への想いを原動力にする中で、教育を軸にされた理由を教えてください。

斎藤教育を軸にしたのは、地元の人や行政職員との会話の中からでした。「若い人にもっと地元を好きになってもらいたい」「次世代にとって良い富士吉田を残していきたい」という声を多く聞きました。

教育の現場側にも、地域と連携して「開かれたまちづくり」をしたいという要望がありました。ちょうど学校のカリキュラムの変革で、「地域とのつながり」が重視されるようになった時期。それなら地域と学校をつなぐ役割を、年齢の近い若者に託そうということで、かえる舎が橋渡し役を担うことになりました。

現在は、若者の未来と地域とを結びつけることにフォーカスし、活動を続けています。

僕は本当に富士吉田が大好きで、地元みたいな場所だと思っています。山梨に滞在して戻ってきた時に「おかえり」と迎えてくれる人が多いので、戻りたいと思える。「ふるさと」に近い感覚なので、富士吉田が大好きですね。

斎藤さんにとって地域活性化とは何でしょうか?

斎藤地域の出来事や課題を「自分ごと」として取り組むことではないでしょうか。地域の課題を自分のものとして捉えて行動する人が増えることで、地域が盛り上がっていくと感じています。僕自身も「おかえり」と迎えてくれる人が多いから、富士吉田で頑張りたいと思い、その良さを残したいと思って活動しています。地域との関係性が増えたり自分の居場所だと思える場所が増えていけば、地域のために行動しようと思う人も増えるはず。ですから僕も、地域との関係性をつなぐことで、地域を盛り上げていきたいと考えています。

高校生と地域を結ぶ、学びの架け橋。

富士吉田の織物を活用した取り組み時の生徒たち。

目指すは、「地域」と「学び」が
つながり続ける仕組みづくり。

斉藤さんにとっての”EVOLUTION x LOVE”を教えてください。

斎藤かえる舎の「かえる」は、チェンジの意味。自分を変えることで地域が変わり、地域の未来が変わっていくことを目指して命名しました。変化を通して進化するために必要なのは、継続していくこと。かえる舎を立ち上げてまだ8年ですが、8年間続けないと今一緒に活動している高校生たちには出会えませんでした。続けていくことで新しい未来が広がっていくことが、進化だと感じています。

私達もチェンジをチャンスと捉え、変化することを恐れずに活動しています。社会に必要とされる形を常に見極めながら、次世代に必要とされる「学びと地域の結びつきの場」を作り続けていきたい。そうすることで進化していきたいと思っています。

高校生と地域を結ぶ、学びの架け橋。

地域フィールドワーク時の生徒たち

今後は、どのような方向性を考えていますか?

斎藤今まで関わった生徒たちがどう還流していくかに着目しています。これからの時代、地域への関わりは地元に戻って働くことだけではありません。違う場所にいても色々な形で地域と関わり続けられる還流を作ることを、最近の活動の指針にしています。

もう一つ、人と人との結びつきに関しては、やはり、高校生の地域活動を充実させたいです。高校での活動だけで完結させるのではなく、高校卒業後や入学前、小中学校から一貫して地域と共に学べる体制ができればと思います。

かえる舎発足から8年間の活動を通して、自分たちの進むべき道が見えてきました。また若者と関わる中で、地域への関心が高い子が増えてきたように思います。さらに8期目を迎え、「きょうだいがやっていたから」と活動に参加してくれる子も増えています。そうした循環が生まれることで、地域に対して前向きに考える世代が増えているのは、嬉しく感じます。

現在の活動で足りてないことはありますか?

斎藤 学校と地域とを結ぶ人をもっと増やしたいです。富士吉田では最近、私たちの活動や地域について興味を持ってくれる若い世代が、着実に増えています。また学校でも、地域について学ぶ授業を行なう機会もいただけるようになりました。

実際、先生方と話してみると、先生方も地域とのつながりに興味を持っている方が多いことに気づきます。しかし先生方は忙しく、なかなか地域にじっくり目を向けたカリキュラムを作ることは難しいのが現状です。ですから学校と地域とのつながりを促進できる人やプログラムが増えていくよう、働きかけなければと常に考えています。

最近の若者に対して感じることはありますか?

斎藤たとえば高校を卒業して、地元で就職した子たちの離職率が高いというのは感じています。もちろん早期退職はいつの時代もあったことなので、一概に「この年代は…」と言うことはできません。その代わり、職場以外の居場所を持ったほうがいいと感じています。

一つのコミュニティにしか所属していないと、どうしても窮屈に感じてしまいます。また特に地方で就職する場合、「一番自分と年齢が近い人でも10歳上で、同年代の同期がいない」ということも多いです。

そんな状況でも、仕事以外で生きがいやコミュニティがあれば、救われることも多いはず。ですから仕事に関係なく、地域で若者がつながる場を作ることが、我々大人の使命だと思っています。今でこそ、働き方改革や育休の促進など、労働環境の整備が進んでいます。しかし職場に限らない「自分の居場所」を見つけることが、結果的に働く意味や自分の幸せにつながっていくのではないでしょうか。

   斎藤さん、ありがとうございました。8年間の活動を通して、地域に目を向ける若者が増えたという斎藤さん。今後、かえる舎と関わった若者がどのように成長し、地域に新しい動きを生み出していくか、今後も応援させていただきます。