空でつながろう

Interview Vol.49 種子島・南種子町を、
「大切な人」で溢れる町へ。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第49弾の今回は、鹿児島県の種子島で、高齢者向けの運動教室や、ゲストハウス「小山ん家」を運営している広浜 幸奈(ひろはま ゆきな)さんにお話を伺いました。

種子島・南種子町を、「大切な人」で溢れる町へ。


お子さんと広浜さん(写真右)

家族の大切な場所を、
みんなの集いの場へ。

種子島で活動するに至ったキッカケを教えてください。

広浜種子島は両親の実家がある島。私は鹿児島市で育ちましたが、小さい頃から「おじいちゃん、おばあちゃんの家」として、種子島にはゆかりがありました。

種子島に移住したキッカケは、祖父母が亡くなったこと。祖父母の家が空き家になり、家を更地にするか、賃貸とするか、親族で悩んでいました。大工の祖父が作ったお家、皆の思い入れのある場所と知っているので手放すのは寂しい…。「それなら」と、私が家を引き継ぐことに決めました。

私は元々、全国展開している女性向け体操教室のトレーナーをしていたのですが、キャリアを積むごとに、お客様との関わりより管理業務が増えてきました。キャリアを積んで働くことは素晴らしいこと、ただその反面、自分が本当にやりたいことは?と考えると「私がやりたいのは、高齢者を含む皆さんを現場で元気にすること」という基本に立ち返っていたタイミングでもあったので、南種子町へ移住して新しいスタートを切ることにしました。現在は移住して2年になります。

具体的な活動について教えてください。

広浜今は「小山ん家」というゲストハウスを運営しています。「小山ん家」では和太鼓を使った健康体操教室も開催しています。ゲストハウスを始めたキッカケは、女の子たちが安心して宿泊できる場所を作りたかったから。私は旅行が好きで、昔から、自分を見つめ直したい時は旅行に行っていました。もちろん海外で危ない目に遭ったこともありましたが、やっぱり日頃できない経験ができるのが旅行の魅力。旅行がしたい女の子の背中を押せる場所を作るため、ゲストハウスをオープンしました。

オープンから1年半経ち、のべ200人ほどのお客様が泊まってくれました。種子島という土地柄、ロケットや宇宙に興味のあるお客様も多く、リピートしてくれる方も少なくありません。親戚より会う頻度が多い、リピーターのお客様も多いですよ。

種子島・南種子町を、「大切な人」で溢れる町へ。

広浜さんが営むゲストハウス『小山ん家』

現在の活動で大切にしていることはありますか?

広浜その地域にどう貢献できるかを考えることでしょうか。移住する時に見た資料で、町が移住・定住に力を入れていることを知りました。移住促進の方は手厚く感じたので、「それなら私は高齢者への支援に目を向けよう。具体的にはこれまでの経験を踏まえて、運動を通して町に貢献しよう」と決めました。まずは自分の住む町からスタートし、徐々に隣の町、隣の町…と、関わる範囲を増やしていきたいと思い、活動しています。実際、最近では集落のサロン活動、皆が集まる温浴施設で健康体操イベントをしたり、少しずつ活動が広がっている手応えを感じます。

そしてもう一つ、その町を理解することを大切にしています。私は祖父母が住んでいたこともあり、この地域のしきたりや大切にしている文化を、少しですが理解していました。また地域の方も「◯◯さんの孫」として温かく迎えてくれました。しかし、そういった縁のない人が移住すると、やはり文化への理解度に差が生まれてしまう。ですから私ができることは、しきたりや文化が大切にされている背景を伝えることかなと思っています。

種子島・南種子町を、「大切な人」で溢れる町へ。

高齢者支援活動の和太鼓演奏

広浜さんにとって、種子島・南種子町はどんな場所でしょうか。

広浜種子島は、地元民・移住者という2択ではなく、色々な背景・考えの人がいるミックスジュースのような町です。ご存じの方も多いですがここはロケットの町、その関係でロケットに携わる方々の転入出が激しかったり、近隣で基地を作っている関係で現場作業員さんが大型トラックで行き来していたりしています。その他にも「宇宙留学」という、1年間種子島での留学を通して移住を促進させる取り組みがあったり。色々な人が混ざり合う面白い町なので、お互いの背景や情報を分かち合い、その魅力がもっと町を盛り上げるチカラになったらいいですね。

「大切な人だから、手を差し伸べる」を当たり前に。

広浜さんの考える地域活性化について教えてください。

広浜地域活性化を一人で成し遂げることはできません。ですから手を取り合う仲間を作るのが大切。そのためにも、まずは地元の人を大切にすることから始めるべきだと思います。

具体的には、「どう受け入れてもらえるか」も大切ですが、まずは主体的にその町を知ろうとすること、自分がどうその町に貢献できるかを考えることが第一。そうすれば、手を差し伸べてくれる人が集まってくると感じます。地方活性化と言うと壮大なものに感じますが、仲間を作って行動するだけで、十分、地域活性化につながります。地域活性化を身近なものに感じてほしいと思いますね。

広浜さんにとっての”EVOLUTION x LOVE”を教えてください。

広浜年齢や家族・他人に関係なく、みんなが大切な人を大切にできる世の中になればと考えるようになりました。

子どもを産んで実感したのですが、皆さん、赤ちゃんや子どもはすごく大切にしてくれます。しかし年齢を重ねていくにつれ、関心の目が薄くなっているというか…。現状、町の広報を読んでも、出生は1件なのにお悔やみは10件といったように、高齢化が進んでいます。きっとこれからも少子高齢化が続くからこそ、年齢を超えた「大切な人」を増やせる町にしていきたいです。

たとえば私は、自分の体操教室に必ず11ヶ月の息子を連れていきます。すると高齢者の皆さん、やっぱりすごく笑顔になってくれるし元気になってくれる。ですから今後は他の親子も誘ってみたい。子どもにとってはおじいちゃんおばあちゃんと交流できるし、高齢者の方は子どもを見て元気になれる。その間にお母さんたちは少しリフレッシュできる。そうして皆が交流することで、大切な人を町内に増やしていけたら、町や人への愛が深くなる。それを実現したいと思うようになったのが、私にとっての”EVOLUTION x LOVE”ですね。

10年、20年後のビジョンはありますか?

広浜町内に「大切な人」がいることが当たり前になってほしいですね。その時には私自身が、人の手を借りなければ生活できないようになっているかもしれません。高齢化も進んでいるでしょう。そんな時、「介護は仕事だから」というよりも「大切な人を手助けしたい」という想いで動ける人が多い町であってほしい。大切な人を大切にするのは日常茶飯事という感覚で、手を差し伸べることが日常に当たり前に溶け込んでいるような未来を作りたいです。

種子島・南種子町を、「大切な人」で溢れる町へ。

集落の方との草刈り

現状の活動で足りていないことはありますか?

広浜私自身のことですが、情報に触れられる機会が足りていないですね。子育て中はどうしても新しいことをインプットしたり、HPやSNSを更新する時間がなくなってしまいます。世の中の動きや知って理解する時間が足りていないので、そういった時間を確保できたらいいなと痛感します。

最近の若者に対して感じることはありますか?

広浜叱られたり恥ずかしい思いをする経験を怖がっているように感じます。私は高校生に向けて、島の魅力を伝えてUターンにつなげる研修に携わっています。その時に意見を発表したり意見交換をすることも多いのですが、自分が恥ずかしい思いをすることを、悪いことや負の経験と受け止める子が多い印象です。もちろんその時はショックだったり落ち込んでしまいますよね。でもその経験は、後になって必ず自分の成長につながります。マイナスの経験をそのまま「負」と捉えるのは、実はすごく損なこと。ポジティブに捉えることで得られる経験や、出会う人を大切にしてほしいですね。

   ありがとうございました。世代間のつながりを軸に、着実に活動の幅を広げている広浜さん。活動を通して南種子町の皆さんに「大切な人」が増えていけるよう、今後も応援させていただきます。