空でつながろう

Interview Vol.60 小規模事業者やイベント支援を通して人をつなぎ、
「大津市膳所」に賑わいを生み出す。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第60弾の今回は、小規模事業者の出店や地元のイベントを応援することで膳所のまちづくりに貢献する京都信用金庫 膳所支店 支店長、小寺慎吾さんにお話を伺いました。

小規模事業者やイベント支援を通して人をつなぎ、「大津市膳所」に賑わいを生み出す。

京都信用金庫 膳所支店の皆様と小寺さん(写真後列左から1番目)

地元に配属され、
「自分ごと」としてまちづくり。

現在の活動について教えて下さい。

小寺京都信用金庫膳所支店で、まちづくりに関する活動を行っています。通常、金融機関の窓口は9〜15時までですが、膳所支店ではまちづくりも支店の重要な役割として窓口業務を12時までとし、午後からは地域に目を向けるための時間に充てています。

まちづくりといっても区画整理をして建物を建てて、というのではなく、地域で昔から続く様々なまちづくりに関する活動をされている方で活動が縮小気味になっているなど現状を聞き取り、その原因や課題を伺って課題解決をお手伝いする、というような活動を行っています。

例えば、小規模事業者のチャレンジショップをポップアップストアという形で支店内に出店し地域の方々に広く知っていただくことや、福祉に関する集まりの機会を支店内で設けて私たちも参加し、人と人をつなぎ、支援する活動を行っています。

小規模事業者やイベント支援を通して人をつなぎ、「大津市膳所」に賑わいを生み出す。

窓口業務終了後の支店でスポーツバイク店オーナーと地域住民によるミーティングを開催

膳所で活動することになったきっかけを教えてください。

小寺実は私、膳所出身です。通常、金融機関の職員は地元に配属されにくい傾向にありますが、会社としてまちづくりに真剣に取り組む際に、限りなく自分ごとに近い状況で取り組むとしたらやはり地元に配属するほうががいいということになったのだと思います。

それはいい形で影響していて、やはり自分のふるさとのまちづくり活動には力が入りますね。特に最近は、幼い頃に見てきた風景が少なくなってきていることを実感しています。例えばご近所で子どもを見守るというようなことは減ってきていますし、コロナ禍を経て余計にそうなってきていると感じています。こうした古き良き景色を取り戻すきっかけを、時代に合わせてバージョンアップした形で作っていきたいと思っています。

そのひとつとして昨年、地域の方々を巻き込んで膳所支店でミニ縁日を行いました。

この地域では小学校の夏休みの最後の日はお祭りがあったのですが、地域の周年事業の関係で、夏ではなく、秋に開催されることになりました。子供たちが残念がっているという声を聞いて、夏休みの思い出として何か取組み出来ないか考えました。子どもたちが大人になった時、「地元にはいい思い出がある」と思ってもらえたら嬉しいですね。

小寺さんにとって膳所とはどのような存在ですか?

小寺地元なのでやっぱり居心地はいいです。目に前には琵琶湖もあるし2~30分も行けば自然豊かな山もある。15分で京都にも行けるので住みやすい場所だと思います。ただ、繁華街は少ないので、刺激はやや少ないかなと感じますが、子どもがのびのびと過ごすにはいいところだと思いますね。ノスタルジックな風景も残っていますし、城下町としての歴史もあります。それに、まちづくりに関する先輩方も皆さん優しい方ばかりです。例えば何かをやるにしても「応援するから頑張って」と背中を押してくれます。また新しいことばかりに取り組むのではなく、地域の清掃やお祭りなどの活動を地域の方々と一緒に汗をかいて取組むことも大切だと思います。

小規模事業者やイベント支援を通して人をつなぎ、「大津市膳所」に賑わいを生み出す。

スポーツバイク店オーナーの野村さん

小寺さんにとっての地域活性を教えてください。

小寺地域の経済が動くような形の賑わいを作り出すことが大切だと考えています。大きな商業施設ではなく、小さな規模の多様な店がたくさんできて、地域の方々とのつながりで賑やかになっていくことが一番いい形だと思っています。そのためには、商売をしている人がチャレンジしやすい場所になることが大切ですね。

また商売やご事業を行う場所も必要です。空き家を所有されていても「見知らぬ人には家を貸したくない」と言う方もいらっしゃって、いわゆる表に出ない不動産情報があります。こうした情報を私たちが地域の方々につないで、この場所でチャレンジをしたいという方の支援をしていきたい。実際に、この活動を通して新しい店ができ、町が元気になってきたと感じています。

小規模事業者やイベント支援を通して人をつなぎ、「大津市膳所」に賑わいを生み出す。

ポップアップストアの様子

地元の人々を主役に立てて、
“黒子”として支えていく。

小寺さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

小寺まちづくりの活動を通していろいろな方と出会い、話をしていく中で、私たちが一気にことを進めることはあまりいい形ではないと思うようになりました。

じゃあ一番いい形とはなんだろう?と考えたら、やはり私たちがフロントに立つのではなく黒子の存在になって、地元の方々を主役として支えていくことがいいということに行き着きました。

私たちはまちに対してさまざまな思いを持っている方のお声を聞き、その方にフロントに立ってもらうことに力をいれていくべきだと考えています。また、新しいことを考えるのも大切ですが、いろいろな事情でできなくなっている古き良きことをもう一度取り戻していく。それが私のEVOLUTION✕LOVEだと考えています。

今の活動に対して現状足りていないと感じることはありますか?

小寺若い人たちと、まちとの関わり方をもう少しデザインしないといけないと感じています。次世代の人たちがこの地域で何かを表現したり、ふらっと立ち寄れる場所になればいいなと。私たちが膳所支店内に出店支援するポップアップストアも、そのきっかけになればいいと考えています。普段そこにないはずの店があるのは違和感でしかないのですが、継続し続けることで最初に感じた違和感を乗り越えてそれを日常にしてしまう。そこから若い人たちに、「自分もここで何かをやってみたい」と思ってもらえるようにしていきたいですね。

あとは、活動の見える化や、地域のいいところの情報発信をもっと積極的にしていくことが大切だと思います。以前、マルシェを開催したのですが、行政がずいぶん前から関わっていたのに、地域の人々はマルシェがあることをあまりご存じではなかったようでした。今年度はJR大津駅や膳所駅にポスターを貼らせてもらうなど、多方面の方々に協力をいただきながら、積極的に告知をしていこうと思います。

最近の若者に対して感じることはありますか?

小寺まちづくりの活動で出会う学生は比較的行動的な人が多いですが、なかには心の中に思いがあってもなかなか行動に出せない、という人もいます。アクティブな学生がそういう学生を誘ってくれて、一緒に活動してくれることがあったらいいなと思いますね。今はまちづくりに関するオンラインのセミナーもたくさん開催されていますし、ワークショップのような語り合う場所もあります。そういうところで色々な人と出会うことで、人生が変わるということもあると思います。

先日参加したセミナーでは、まちづくりに興味があるけれど、どうしたらいいのかわからなくて、1人で参加しましたという若い人がおられました。セミナーが終わるころには、みんな仲間のような雰囲気になっていました。こういう一歩はすごく大事だと思います。

積極的に参加する人に対して斜に構えるのではなく、一緒に連れて行ってよ、行こうよというような流れになってくれたらいいと思いますね。

小寺さん、ありがとうございました!自分のふるさとだからこそ、膳所のまちづくりに力を入れていきたいという小寺さんの熱い想いが伝わるインタビューとなりました。小寺さんの活動を、今後も応援させていただきます。