空でつながろう

Interview Vol.64 一歩一歩進化を続ける「まほろば衆」の踊りで
太宰府市に足を留める人を増やしたい

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第64弾の今回は、顔を隠して踊る個性豊かな踊りのチームを牽引しつつ、太宰府市の魅力を伝える活動を行う相川茂さんにお話を伺いました。

一歩一歩進化を続ける「まほろば衆」の踊りで太宰府市に足を留める人を増やしたい

まほろば衆の皆さん

思いを形にするために
いちから曲づくりも。

現在の活動について教えて下さい。

相川グラフィックデザイナーの仕事をするかたわら、太宰府市で「覆面和踊集団太宰府まほろば衆」という踊りチームの代表をしています。子どもだけのチームもあります。

活動は太宰府市を拠点に、九州内外で自主公演やイベントを行っています。主に企業のパーティーやインバウンドのインセンティブツアー、旅行会社のキャンペーンイベント、アーティストとのコラボイベントなどで踊ることが多いですね。昨年はドイツと日本の友好フェス「マイン祭り」で踊る機会もいただきました。

地元では観光協会と一緒に太宰府天満宮真舞祭を主催しています。もともと観光協会の会長やご家族もまほろば衆のメンバーで、コロナ前は一緒に自主公演も行っていました。教育関係では中学校の学生が自分たちで踊りを作ってビデオに収める授業のサポートを行いました。太宰府市としては3年ほど前から「踊る町太宰府」というプロジェクトを立ち上げ、市内に踊りのチームをたくさん作って太宰府市に踊りを根付かせ、盛り上げていこうという計画があります。中学校の活動はその一環ですが、私たちとしても今後は学校関係をもう少し広げていきたいと考えています。

一歩一歩進化を続ける「まほろば衆」の踊りで太宰府市に足を留める人を増やしたい

まほろば衆 代表の相川さん

太宰府市で活動することになったきっかけを教えてください。

相川母が太宰府商工会の女性部部長をしていた時に、商工会側から「太宰府市の市民まつりに踊りで出たい」という要望があり、衣装デザインを頼まれたことがきっかけです。

まつりに出たら「すごく楽しかった」と盛り上がり、今度は全国で行われるよさこいまつりに出ようということになって、太宰府市商工会のよさこいチームが結成されました、チームの代表は母が務めていましたが、母が体調を悪くして亡くなる前から私が代表になりました。

母が代表だった時代は子どもも大人も一緒に踊る団体だったのですが、私たちのチームが呼ばれて舞台に上がると、お客さんがトイレに行ってしまうというような状態でした。毎日一生懸命練習している子どもたちも泣いてしまって。これはいけないと思って、母に「自分に代表をやらせてくれ」と決意を伝えました。時には意見が対立して喧嘩もしましたね。

私は元々ダンスもやっていたので、自分で振り付けを考えました。音符も読めなかったのですが、とりあえずキーボードを買って自分で曲も作りました。最初はダンスも曲も、知り合いの方に作ってもらおうと思ったのですが、クリエイターにはそれぞれポリシーがあるので自分の思いと違う部分があってもなかなかそれを伝えることができず、「だったら自分で作ったほうがいいかな」と思うようになりました。

私は曲を作る前にまず衣装をデザインし、それぞれのキャラクターを制作します。そのキャラクターに性格を持たせて「このキャラクターが動いたらどうなるか」を考えつつ、曲作りを進めていきます。「他のチームと同じようなチームにしたくない」という思いが強かったのでお面を作ったり、頭巾を被ったりしてとにかく顔を隠して踊るチームに仕立てました。

一歩一歩進化を続ける「まほろば衆」の踊りで太宰府市に足を留める人を増やしたい

老松/九州国立博物館での公演

相川さんにとって太宰府市とはどのような存在ですか?

相川太宰府天満宮があって他とは少し違う雰囲気だなと思います。自分自身も小さい頃は住んでいた場所であり、母が仕事をしていたこともあって太宰府市に対する思いは強いです。ずっと守っていきたいと思っていますね。それには、自分たちの力で何かエッセンスを加えることができればいいと考えています。

相川さんにとっての地域活性を教えてください。

相川太宰府天満宮は学問の神様として全国的に知られているほか、芸能の神様としても崇められ、年間を通じて大勢の観光客が訪れます。しかし太宰府は温泉は1箇所、宿泊施設も少なく、食べ物で名物といったら梅ヶ枝餅といったところでしょうか。観光客も天満宮の参道を歩いてお参りしてお餅を1個買ったらすぐにバスに乗って帰るという人が多く、太宰府の滞在時間がとても短かったのです。だから太宰府天満宮真舞祭なや自主公演「宰」を行い、太宰府市を盛り上げて行きたいと考えています。また私たちが県外で公演を行うことで太宰府市に足を運んでもらい、太宰府市の“ファン”を作ることも大切です。そういう意味では、太宰府市の魅力を県外へアピールする遊撃隊のような想いで活動しています。

学校教育の場でも踊りを根付かせていき、地元の夏まつりなど発表する場を増やしていけば、踊りがこの町の名物になっていく。「踊る町太宰府」を確立することが地域活性につながると思っています。

「もっと上を目指そう」という
みんなの気持ちが原動力に。

相川さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

相川踊りのメンバーが毎週集まって、楽しそうにワイワイやっているのを見ると私も楽しいですし、踊りを続けることで外から評価を受けるとメンバーもお客様も喜んでくれます。お客様の喜びがメンバーの喜びであり、その逆も然りという交互の循環に対してメンバーにスポットライトが当たった時、「この活動を続けていてよかったな」と感じますね。また衣装デザインやフライヤー、Webデザインも本来の仕事であるグラフィックデザインを活かすことができ、仕事としても幅が広がったと感じています。

私たちの踊りには常に挑戦があります。各祭りでよく決勝に出させていただけるチームになり、さらに踊りを進化させることで優勝もしました。よさこいまつりではないところにも出られるようになり、そうなるとみんなが「もっと上を目指そう」という気持ちになってまた進化して、今度はメディアやセミプロから声がかかるようになったり、他のチームや別ジャンルからもコラボレーションをしたいと言われるようになりました。こうしたことを1個ずつ形にしていくことが、私のEVOLUTION✕LOVEだと考えています。

一歩一歩進化を続ける「まほろば衆」の踊りで太宰府市に足を留める人を増やしたい

梓の巫女/九州国立博物館での公演

今の活動に対して現状足りていないと感じることはありますか?

相川メンバーを増やしたいです。それにはやはりお金が必要になってくる。そのための仕組みづくりをしていかなくてはいけないと考えています。教育関係で踊りの仕事ができたらいいと思いますし、老人ホームなどでもとても喜んでいただけていますので、定期的に楽しい手踊りのコンテンツや、盆踊りも教えていけたらいいと感じています。

最近の若者に対して感じることはありますか?

相川たくさん経験値を積ませてあげたいと思います。チームでは踊り以外に雑用からプランニングまで、たくさんの仕事があります。それを全部体験してもらうことで、「まほろば衆という組織はこうして成り立っているんだ」ということを学んでほしい。雑用や細かいことがあるからこそ、チームの継続に繋がるということ。もちろんスポットライトが当たるポジションを存分に経験してもらうことは大切です。その経験を踏まえて「この立ち位置のためにはこういうことが必要だから、みんなで頑張ってやっていこう」と思えるメンタルを育てることができたら嬉しいですね。多くのことを経験していないと内部の温度差なども出てきてしまいます。そのあたりも踏まえ、あくまでも楽しく活動を教えてあげたいと思っています。

相川さん、ありがとうございました!個性豊かな「まほろば衆」の踊りで太宰府市を盛り上げつつ、県外にもその魅力を発信していこうという相川さんの意気込みが伝わりました。相川さんの活動を、今後も応援させていただきます。