
Interview Vol.66
まちづくり拠点の設立・運営を通して
「何かにチャレンジできる」大津市へ。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第66弾の今回は、大津市役所職員でもあり一般社団法人のメンバーでもある藤原周二さんにお話を伺いました。

一般社団法人BANDの皆さんと藤原さん(写真右)
異動によるジレンマを感じ、
まちづくりの法人を設立。
現在の活動について教えて下さい。
藤原大津市役所の職員として現在は、広報課で勤務しています。プライベートでは仲間と一緒に2023年に一般社団法人「BAND」を設立して、古民家を改修したまちづくりの拠点「awai」をつくりました。ここはカフェのほか、ギャラリーやポップアップなど多様な機能を持つ複合施設です。

「Awai」の外観
市役所に勤務されるようになったきっかけを教えてください。
藤原私は兵庫県加古川市で生まれ、10歳ぐらいのときに大津へ引っ越して以来、ずっと大津市に住んでいます。大学は大阪でしたが、ある日大学の友人が大津市に遊びに来ることになり、駅まで迎えに行きました。大津市に来るのが初めてだった友人が駅に降り立って一言「大津って県庁所在地じゃないみたいだな??」といって。その時は「そうやろ、何もないやろ」と一緒に笑ってやり過ごしていたのですが、「ふと、自分が育った街があまり良く思われないのはとても寂しいことだと感じるようになり、次の世代の人たちがこの街に対して諦めるようなネガティブな気持ちになるのは、良くない」と考えるようになりました。それで、大津市という街に対して、何かできることはないだろうかと考えた時に、やはり行政の立場から関わることが一番早いのではないかと思って、市役所に入庁しました。
いつ頃からまちづくりに関心を持つようになったのでしょうか?
藤原市役所は業務が幅広いので、自分がこういうことをやりたいと思ったからといってすぐにできるわけでもないだろうと考えていたのですが、観光振興課に配属され、民間の事業者や地元企業と一緒にプロジェクトに携わることになりました。そこでは、今までとは違う仕事を通して、自分自身がガラッと変わる局面を迎えました。地域の方々や事業者の方々と関わることは自分にとってすごく肌に合いましたし、やりたいことの延長線上にあるということに気づくきっかけとなりましたね。
その後、まちづくりに関する部署に異動して、現在は広報課に配属になりましたが、外部の方と関係性を築きながら業務を推進するという立場が続きました。自分はまちづくりに関することをしていきたいと再認識し、ここ10年ぐらいは自分のやりたいことをさせてもらっています。
「BAND」を立ち上げるきっかけとなった思いとは?
藤原まちづくりの部署に3年半いましたが、その時に思ったのは、行政の立場というのは地域に入りやすいということ。大津市役所ですと言えば一定の信頼感も得られますし、街の人たちも話を聞いてくれる。もし市役所という看板がなくて一個人としてだったら、多分相手にされていないだろうなとは思いました。自分としては地域との関係性をじっくりと築くのには3年ぐらいかかるというイメージでしたので、ようやく関係性が築けたかな、と思ったところで部署異動があって。担当が変わってまた一から関係性を築くとなると、まちづくりもなかなか進みません。自分としてはそこにすごくジレンマを感じて、それならばプライベートでまちと関わるまちづくりの活動をしていこうと考え、「BAND」を立ち上げました。
まちづくりが楽しいと感じ始めたのもあったのですが、大津市は街に人も少ないし観光地でもないので、どうしても隣りの京都と比べてしまい「どうせここで何か事業をやっても難しい」というネガティブなイメージが先行している感じがします。
そうではなくて、「ここでなにかチャレンジしたい」と思う人が1人でも多く増えること、そのための仕掛けを僕たちが作る必要性を実感して、まちづくりへの思いに発破がかかりました。

リノベーション作業の風景
まちづくりとは、
人の魅力を見える化すること。
地域活性についてどのように考えていますか?
藤原いろいろな地域でまちづくりに取り組んでいらっしゃる方はたくさんいると思いますが、そういう方々とのつながりはとても大切だと思っています。自分自身、まちづくりに関わり始めた時は最初から自分がやりたいことを形にできたわけではなく、いろいろな地域の方とつながって勉強をしに回わりました。どのエリアも、多少違っていても似たような課題を抱えていたので、こうした横のつながりはとても心強かったです。また、その地域で活躍している人の顔が見えることが、地域活性にはすごく大切だと思います。
僕は、「まちづくりは人づくり」だと常々実感しています。人が変わればまちは変わる。地域の人たちの魅力が増すと、地域としての価値も上がると思います。そういう意味では、人の魅力をきちんと見える化することは、地域活性にとって大切なことだと思っています。
また、僕たちがいろいろな種まきをすることも重要です。種を撒いて、そこに可能性を感じてやる気になった人が少しずつ出てくるというのがとても大切。小さく初めて大きく育てることを常に意識しています。

「Awai」の内観
藤原さんにとって大津市とはどんな街ですか?
藤原僕にとってはちょうどいい、とても住みやすい大好きな街です。京都や大阪の大都市圏も近いという利便性もありますし、やはり琵琶湖の水辺がそばにあるというのは、人の気持ちを豊かにしてくれます。
「BAND」の仲間は、一度滋賀から離れていろいろな地方を転々としてから、滋賀に戻って来たことで、改めて滋賀の良さに気づいたと話していました。僕も、大津に生まれた子どもたちが、一旦大津を離れてもその良さに気づいて大人になってまた戻ってきて、自分たちがやりたいことを始めるフィールドとして選ぶことを願っています。
それが僕の理想であり、幸せですね。
ありがとうございました!大津市を愛し、市役所の職員としてだけではなく、法人も立ち上げてまちづくりに情熱を捧げる藤原さん。藤原さんのエネルギッシュな活動と、大津市の発展を今後も全力で応援させていただきます!