空でつながろう

Interview Vol.69 福岡市を拠点に各地の豊かな文化や
魅力ある人々とつながり、
“愛され続ける”九州に貢献。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第69弾の今回は、「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」の九州支部長をはじめ、複数の組織でパラレルに活動をされている、高田理世さんにお話を伺いました。

学生時代の活動がきっかけで
「ONE KYUSHU」と出会う。

現在の活動について教えて下さい。

高田就社はしておらず、複数の組織から業務委託でお仕事をいただきながら 活動をしていますが、主には「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」の業務を中心に、九州やローカルをテーマに行っています。シェアリングエコノミー協会の活動は設立から8年半を経て、よりローカルの課題を解決する手段としてのシェアリングエコノミーの活用に寄与するという方向が強くなってきていると感じています。私は3年前から協会の九州支部の事務局として参加し、2023年1月から当協会自体の事務局に参加しています。今は全国の1割を超える自治体が参加する「シェアリングシティ推進協議会」の事務局長として、職員の方同士が情報をシェア(共有)する勉強会や、 自分たちのサービスを地域課題解決のために役立てたいという企業とのマッチングなどを多く行っています。

また「ONE KYUSHU」も、2023年3月に大分県別府市にて開催されたサミットで当日スタッフに名乗りをあげたことをきっかけに、2024年1月に宮崎で行ったサミットでは実行委員長を務めるなど九州各地で活躍するプレーヤーが応援し合えるようなコミュニティづくりに挑戦しています。

福岡市を拠点に各地の豊かな文化や魅力ある人々とつながり、“愛され続ける”九州に貢献。

2023年3月に別府で開催されたONE KYUSHU サミット(写真センター高田さん)

福岡市で活動することになったきっかけを教えてください。

高田大学では国際文化を学ぶ中で、英語やフランス語、イタリア語を勉強してイタリアへ留学し、ホームステイでイタリアの生活や文化を体感しました。外からの視点を得たことは、福岡や九州を捉え直すきっかけになったと思います。でもそれだけが今の活動につながったかというとそうではなく、大学時代にNPOに入って活動をはじめ、地方創生の仕事に取り組むようになりました。実をいうと地方創生にすごく興味があったわけではないのですが、私の負けん気に火がついていろいろな業務を請け負うようになって(笑)。ラジオのパーソナリティもしていたので、「ONE KYUSHU」サミット会長の村岡さんとか、九州で活動するおもしろい大人たちに毎週会うようになったのが今につながっていると思います。

東京に出て大企業に就職するということに憧れもありましたが、こうした出会いをきっかけに「今すでにこうやってつながった人々とお仕事できないかな、ここで生まれたつながり自体が仕事になっていけば」と考えて、就職活動に抵抗を感じました。そこにイタリア留学から帰ってきて違う視点を持つようになり、偶然コロナも始まって、大学4年の春がコロナスタートの春と重なりました。もちろんオンラインでの就職活動も行いましたが、全然納得がいかなくて一旦中断して。その後1年間、オンラインではありましたが村岡さんのような方々から「こんなことやったら」と地方の仕事をいろいろいただいて、これも偶然なんでしょうが、これまでのつながりを仕事にするきっかけを少しずつ作っていくことができました。

福岡市を拠点に各地の豊かな文化や魅力ある人々とつながり、“愛され続ける”九州に貢献。

実行委員長を務めたONE KYUSHUサミット2024 in 宮崎にて、会長村岡さんと。

福岡に拠点を置いて活動している理由を教えてください。

高田福岡市出身ですが、自分自身、福岡への郷土愛は薄いと感じています。福岡は便利ですが、私の生まれ育った辺りにはいわゆる田舎の風景はあまりなくて、それこそずっと変化し続けているし、帰ったら誰かがいるというような場所があるわけではない。だからこそ、私の中で「九州」という捉え方がすごくしっくりときたんです。もともと私は欲張りなところがあって、例えば熊本の阿蘇の風景が好きだとか、宮崎のこういう食べ物が好きだとか、はたまたイタリアのあの景色をまた必ず目にしたいとか、自分の好きなものや風景、文化が持続していくためにはどうしたらいいのだろうと考えています。それに、九州には互いを応援しあう素敵な人たちがたくさんいる。その人たちや各地域との関わりをつくっていきたいと思って、福岡に拠点を置いて活動をしています。

大学を卒業してこういう活動をやっていこうと決めたものの、この2年間は、九州全体という捉え方をする同世代の仲間が少なくて孤独感を感じていました。ですが、2023年3月別府で開催された「ONE KYUSHUサミット」へ行ったときに、とても安心感がありました。ONE KYUSHUというキーワードをもとにお互いに応援し合うというか、緩やかな経済圏、コミュニティができている。もちろん今の資本主義の「完全なる代替」にはならないとは思いますが、今後も人の暮らしの豊かさにおいてひとつの「選択肢」にはなっていけると思います。そこをもう少し深く大きくして、継続していきたいという思いがあります。

また、「ONE KYUSHU」というキーワードが徐々に浸透してきている状況から考えても、そのプレーヤーが私たちの世代に少しずつ移行すべ時ときがきていると感じています。宮崎では大規模な「ONE KYUSHUサミット」が行われましたが、サミットはひとつの形です。ONE KYUSHUというキーワードをもとに、新しい価値が生まれる緩やかなコミュニティが存在すれば、イベントをドカンと開催する必要はないと思っています。九州が島であるからこそこうした考え方・捉え方ができることをより多くの人に知ってもらい、九州からアジアへ、世界へ挑戦していける土壌をつくっていくために、これまでのONE KYUSHUを創り上げてこられた先輩方だけでなく、今・これから挑戦しようとしている仲間が年齢や立場を超えてつながるきっかけづくりをおこなっています。

高田さんにとっての地域活性を教えてください。

高田いわゆる観光振興や産業振興のように、これまでの地域の盛り上がり方である必要はないのかな、と考えています。そこに住む人や、その地域に住んだことや訪れたことがあり、ずっと関わり続けたいと考える人にとって価値があり続ける場所であり続けることが大切だと思います。

地域に関わる人たちがどんな場所、地域であることを幸せと感じるか、それを実現するためにデジタルも活用しながら域外のひとや企業を巻き込んでいく必要があると感じています。シェアリングエコノミーもそのひとつ。例えば福岡に来た人が「明日時間があるけれど、どこに行けばいい?」と聞かれたら、すぐに行けておいしいものがある佐賀を紹介することが多いですし先日熊本の天草エリアを訪れて長崎の島原と文化が非常に近いと感じました。九州にいると、私たちの暮らしや文化という視点において、県境・市町村境は関係ないと実感します。

福岡市を拠点に各地の豊かな文化や魅力ある人々とつながり、“愛され続ける”九州に貢献。

各地で出会い、未来につなげてきたいと感じた風景や文化、ひと。
(左上から、長崎県五島市、北海道鶴居村、イタリアのベルジェッジ、熊本県上天草市)

地域にかかわるひとのウェルビーイングを軸に
九州に貢献していきたい。

高田さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

高田私にとっては、大学受験で第一志望に合格できなかったことが、最初のターニングポイントでした。それまでは、努力は必ず結果につながると思っていたのですが、大学受験でへし折られました。それでも負けん気の強い私は、受験に「成功」する同級生たちに負けたくないなと大学で様々な活動に挑戦し、成績やキャリアがどうとかじゃなく、個性こそが価値なのだと気づかされました。将来こうありたい、キラキラとしたキャリアを積みたいというモチベーションも大きく覆され、いかに面白く、いかに自分らしく在るかと考えて、その時考えられる「いつでもピンときた時に行動できる」一番の選択肢だったので、「就社をしない」選択をしました。

結果的に、仕事も生活する場所も全部自分で決められるフリーランスとして社会人になりましたが、リモートワークだからどこへ行っても、旅をしていても良いという環境を最大限に活かし、いかに自分の暮らしやすい・働きやすい環境に身を置くか、まさにウェルビーイングを重要視するようになりましたね。そこがある意味、ローカルに向き合う感覚をさらに変えてくれたと思っています。学生の時は自分のキャリアを軸にがむしゃらに活動して、それが結果としてローカルのことを勉強することにつながりました。でも社会人になって自分がどうありたいかという軸に変わった時、ローカルに、地元に、九州に貢献したいと思うようになったのです。ずっと暮らし続けたい九州、みんなに愛される九州に少しでも関われたらいいなと思います。また他の地域に対しても、そこに住む人たちがもっと幸せになるために何かできないかと日々考え様々な人と対話しています。それが私のEVOLUTION✕LOVEだと実感しています。

私は誰かのモチベーションが上がるとか、向き合っている人がどうであるかということを優先する傾向にあり、あまり自分のことを気にするタイプではありません。「自己犠牲」と言われたこともあります。でも最近、人と人が応援しあえる環境をつくる人も必要だと気がつかせてくれる環境、人に出会う機会が増えて、自分が利他的であるということをポジティブに捉えられるようになりました。それを価値として社会に提供して、結果的にお金をいただくという働き方に胸を張り、その可能性をもっと広げていきたいです。

10年後、20年後はどうなっていたいですか?

高田10年後、20年後はそれこそみんなが自然につながって、ウェルビーイングな状態になる選択肢がたくさんある九州や、そういう地域が世界中広がっていてほしい。生まれや育ちに関係なくひととひとが物理的距離やこれまでの境界線を越えてつながり、声を掛け合い応援し合う、その起点となるような、ゆるやかなつながりやコミュニティをベースにした経済圏のようなものがもっと広がっていくと思います。自分自身が「ONE KYUSHU」の世界観に救われているので、他の人にもこういう世界観があることを知ってもらいたいですね。それによって、九州や全国各地の魅力的なローカルが、そこにかかわる人にとってサステナブルに在り続けることに、少しでも貢献できたらと思っています。

福岡市を拠点に各地の豊かな文化や魅力ある人々とつながり、“愛され続ける”九州に貢献。

母校で開催される同窓の先輩方が代々企画するキャリア講演で機会をいただき
「ONE KYUSHUをキーワードにどんな思いで働いているのか」高校生に話をした時の様子

現状、足りないと感じていることはありますか?

高田もっといろいろな人に参加してもらったり、関わってもらったりすることが必要だと思っています。特に世代や業界を超えた交流はまだまだ少ないと感じています。私という存在だからこそ巻き込むことのできる世代や、これまで交わってきていない方々との接点をより積極的に持っていきたいと思います。

高田さん、ありがとうございました!今を楽しむことを大切に、人がお互いに応援しあえるような環境をつくりながら魅力的な九州の発展に貢献していこうと頑張る高田さんを、今後も応援させていただきます。