Interview Vol.70
大津市で子どもが自分らしくいられる
第三の居場所づくり
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第70弾の今回は、滋賀県大津市で子どもの体幹教室を運営し、子どもたちの体と心、コミュニケーションづくりに勤しむ杉岡由香さんにお話を伺いました。
杉岡さん(イベントの体幹教室体験にて)
楽しく運動し、
できることが増えれば
自信につながる。
現在の活動について教えて下さい。
杉岡未就園児から小学生までの遊びながら土台を育む体幹教室「スパークルキッズ滋賀校」を運営しています。体操教室とは違って、「心を育てる」ことに特化し、子どもたちが成長してやりたいことが見つかったときに頑張れる力や継続していける力の土台となる心と体、コミュニケーション力づくりを行っています。
未就園児親子対象クラスレッスン風景
大津市で活動することになったきっかけを教えてください。
杉岡私には3人の子どもがいます。男女の双子とその2つ上に女の子がいるのですが、きょうだい喧嘩が絶えず子育てに悩んでいました。子育ての仕方は学校では教えてもらえない分野なので知識や対処法を知らず、育児に関する本を読んでも自分の子どもたちに当てはまらないのです。頼れるところもなく、どこに相談したらいいのかわからないという状態でしたね。大津市が運営する育児イベントに行っても、親身になって相談に乗ってくれる環境は整っていませんでした。そんな時コーチングに出会い、学ぶうちに、私と同じように子育てで悩んでいるお母さんの力になりたいと思うようになりました。コーチングを伝えるのではなく、もっと身近に子育てに関わりながらお母さんたちのサポートができればいいな、と。そう考えるうちに、子どもたちにとって体幹トレーニングは重要なのでは、と思うようになりました。もともとスポーツの専門学校を卒業し、スイミングコーチをしていた経験もあるので、体幹トレーニングを学び、コーチの資格を取得して体幹教室を開きました。
クリスマス時期のレッスンにて
体幹教室で子どもたちに教えるにあたり、特に心がけていることは?
杉岡子どもたちが自分らしくいられる居場所づくりをしています。子どもにとって学校の先生や家族以外の大人と関わる環境はすごく大切だと思っていて、例えば親には言えないことも習い事の先生なら話せたり、ありのままの自分を出せたりできるよう心がけています。そういう場は必要だと思いますね。
今、子どもたちの習い事って能力をつけさせる、何かを得るためにさせている方が多いと思います。それも大切ですが、子どもにとって心の拠り所であり、コミュニケーションを育みながら自分らしさを出せる場をつくりたいと思って、体幹教室を経営しています。
この子の成長がみたい、こういうふうになってほしいっていうのは、大人のエゴに直結していると思います。中にはその過程で、うまくできなくて挫折する子もいる。その時に「なぜできないの?」ではなく、感情を受け止め寄り添うことが大切だと思っています。楽しみながら運動をして、やれることが増えていけば自信につながりますよね。そういう成功体験ができる場になればいいと思っています。
スイミングのコーチをしていた時は企業に属していたので、子どもの実力のレベルアップという目的がはっきりとしていましたが、今は1人ひとりの能力に合わせた対応ができている。それが個人で教えることの良いところだと感じています。
杉岡さんにとっての地域活性を教えてください。
杉岡以前は、滋賀は何もない、大津って遊ぶところもないし何もないって思っていましたが、ある人に「自然が豊かで環境もすごくいいし、「何もなければ自分たちで楽しめるものを作ればいいやん!」と言われ気づかされましたね。そこで、体幹教室の体験や色々なワークショップを盛り込んだイベントを一緒にやってみたら、どんどん楽しくなってきたのです。ちょっと見方を変えたら、滋賀はすごく魅力的な場所だと思えるようになりました。
こんな感じで私のように、まずは大人が楽しんでいる姿を子どもに見せることが大切だと思います。仕事でもなんでも楽しむということはすごく素敵な考え方。楽しむことで未来は見えてくるし、次につながる行動にも移せる。1人ではできないことも、みんなで力を合わせればできることもあるので、楽しいことにみんなを巻き込みながらその輪を広げて進化していくことが地方活性につながると思っています。
イベント時の集合写真
中高生や大人にも、
運動する楽しさを伝えたい。
杉岡さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
杉岡体幹教室は現在、未就学児と小学生が対象ですが、その枠をとっぱらいたいと思っています。中学校も今、部活の顧問が委託になってきていたり、マンモス校の場合はよほど強い子じゃないと試合に出られなかったりという環境の中で、強い子以外の子は部活に行かなくなるという状況が生まれています。そこが自分の中でモヤモヤしているので、今後はこうした中高生も対象にした活動をしていきたいと考えています。けっして上のレベルには行けなくても、運動を続けることはストレス発散になるし、純粋に身体を動かす楽しさも実感できると思います。また子どもたちだけではなく大人も含めて、老若男女に運動することの楽しさを伝えていきたいですね。運動を通してコミュニティを広げ、それぞれに自分の居場所を作ることができたらと考えています。
10年後、20年後はどうなっていたいですか?
杉岡今の自分のキャパシティでは2拠点の体幹教室を運営するのが限界です。私のような考え方に賛同してくれて、ともに活動してくれる仲間を増やし、拠点を増やせればと思っています。
現状、足りないと感じていることはありますか?
杉岡大津市は昨今住宅が増えて人口も増えましたが、その中には共働きで普段の生活に追われ、他者と関わる時間がもてないと言う方もいらっしゃいます。そういう人を見ると、それってしんどくない?と思うことがありますね。何かをきっかけに私たちのところへ気軽に来てもらえれば、と思うことはあります。それには発信が大切。発信してこちらへ来てくださったという人も増えましたし、これからは子育てに特化した人や街を盛り上げたいと思っている方々ともWebやリアルにお会いしてどんどんつながっていきたいと思います。
今の若い人に対して感じることはありますか?
杉岡学童保育を手伝っている学生に話を聞くと、「子どもたちのために何ができるのだろう?」「この地域や世の中がよくなるためには、自分たちには何ができるだろう?」と未来について話しますし、知り合いのカフェの店長は「勉強はできなかったけど料理が好きだったから料理に関することは積極的に学び、世の中の人たちが幸せな時間を過ごせるためにカフェでできることを追求している」と言います。けっこうみんなきちんと考えていますよね。こうした若い人たちの思いを、自分の子どもも含め、ただ単に勉強させられていると感じている中高生や、将来何になりたいかまだわからない、という子たちに伝える場や交流する場を作りたいですね。自分が思い描いた通りのことを実現するのは自分次第。楽しんでいれば楽しくなるし、嫌だなと思っていたらその通りになってしまうので、自分が変わるきっかけを見つけられるようになってほしいと思います。
杉岡さん、ありがとうございました!体幹教室を通して子どもたちに体を動かす楽しさを教え、さらに今後は老若男女にも運動を通して人生を楽しむことの大切さを伝え続けていきたいと話す杉岡さんを、今後も応援させていただきます。