空でつながろう

Interview Vol.72 仕事を通して培ってきた多様な体験・アイデアを
主催者とコミュニケーションを大切にしながら
共に太宰府にイノベーションを巻き起こしたい。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第72弾の今回は、イベント企画運営会社を営みながら、多様な立場や世代の人々とのコミュニティで常にアイデアを提案し続ける太宰府のまちづくりのために力を注ぐ星野幸蔵さんにお話を伺いました。

仕事を通して培ってきた多様な体験・アイデアを主催者とコミュニケーションを大切にしながら共に太宰府にイノベーションを巻き起こしたい。

太宰府市文化人の方々と星野さん(写真中央)

もてなしの心を持って
裏方に徹することが
やりがいにつながる。

現在の活動について教えて下さい。

星野祭りや式典など大小さまざまなイベントの企画、設計、施工、運営までをトータルに行う㈱オークラの代表を務めています。どの案件も単純に企画するのではなく、個人や団体が表現したいこと、その人たちのためになるようなことを考えて取り組んでいます。依頼が来た時は親身になって相談にのり、時には他の人と繋いでより良い物になるように経験をアイデアに生かして組み立て実践に繋いでいく。
手の届くボランティア、というかお助けマンのような感じになっていますね。

仕事を通して培ってきた多様な体験・アイデアを主催者とコミュニケーションを大切にしながら共に太宰府にイノベーションを巻き起こしたい。

4万人が来場する太宰府政庁跡 太宰府市民政庁祭り(星野さんが携わるイベントの一つ)

太宰府市で活動することになったきっかけを教えてください。

星野父と一緒にこの会社を立ち上げたことがきっかけで、もう50年になります。父はもともと花屋を営んでおりまして、お祝い事や仏事に花を納品していました。その頃は、戦争が終わって経済が動き出し、エネルギー源として炭鉱が盛んな時代でした。炭鉱に事故はつきもので、その葬儀に使われる造花の改良が行われている時代でもありました。私の父は造花を使った葬儀の提案など非常に営業力のある人でしたので、その延長線上で葬儀だけではなくお祝い事とか会場設営業務とかも頼まれるようになったのです。そこからどんどん枝分かれして、今ではデザイン業務やITのソフト開発もしています。父のことはとても尊敬していて、商売のあり方、お客様に対する接し方などもすべて父から吸収しました。

仕事を通して培ってきた多様な体験・アイデアを主催者とコミュニケーションを大切にしながら共に太宰府にイノベーションを巻き起こしたい。

6月1日毎年開催の「時の記念日」活動の様子
太宰府市民遺産にて「かるかや物語」の紙芝居を子供達に披露

会社の活動や考え方について教えてください。

星野会社自体は九州一円をはじめ日本全国で業務を行っています。私たちの仕事はいわゆる裏方で、表に出ることはありません。だから、裏方になりたい人がいないという問題に突き当たります。中には待ったなしで進めなくてはならないイベントもあるので、人がいないのに時間に追われる。その結果、どうしてもやりがいを感じる場面が少ないかもしれません。

しかし私たちの仕事は、大きく考えると「おもてなし」を作る仕事です。もてなすという裏方に徹することがやりがいにつながると私は思っています。時には、裏方として仕事をしているとトラブルになりそうなことや、オペレーションが悪い部分などが見えてくるので、イベントの成功のために事前に主催者へ伝えることもあります。それがおもてなしであり、やりがいです。そのためには裏方としての経験値が重要だと思っています。

太宰府の活性化につながるような活動もされていますか?

星野コロナ禍になる直前までは料亭も営んでいました。太宰府には式典をやる際の宴会場がないので、その時の市長から「この町に宴会場がないけん、なんとかならんやろか」と相談されました。太宰府は年間1,000万人の観光客が訪れる街なのに旅館がありません。大きな宴会場がある料亭も無かったのです。私は居酒屋をやったことがありましたので、「じゃあ太宰府の接客の場所として、料亭を作りましょう」と、式典の会場設営から飲食までワンストップでできる会社を立ち上げました。

料亭を30年以上営んでおりましたが、コロナになって事業としては苦しくなりました。国の補助金も受けてなんとか頑張りましたが、やはり、働いてくれている人を養っていかなければいけないという思いがあって飲食系の事業を整理しました。

私は、新しいことを行うにはイノベーションが必要だと思っています。だから今も、いろんなことを体験していろいろな意見を聞いて、別の形でそれを組み直したりして常に新しいものを生み出すことを考えています。

星野さんにとっての地域活性を教えてください。

星野やはりコミュニケーションが大切で、それには多様な立場の人がひとつに集まって話し合える、何かできる環境を作らなければいけないと思っています。それで私は、さまざまな方が自由に参加できる場所として「お茶を飲みながら論じあう」という「茶論(サロン)」を作りました。

例えば政治の世界では、いろいろな規約を先に作れば作るほど問題が発生するから、規約を作るよりもまず、政治家の間でコミュニケーションを図り、徹底して討論をすれば自然と規約はできるのではないかと思います。そういう意味では、茶論のようにただ単純に意見を交換したり何かを評価したりする場所は、行政の中にもあるべきだと思います。私自身も、立場関係なく意見を言います。こういうコミュニティがいくつもあって、その中でさまざまな意見を交わしながらよりよい方向へ変えていこうとすることが、地域活性にとっては大切だと思います。また、その中でリーダーシップを取れる人を育てていくことも大事ですね。

コミュニケーションを通して
対話する力や想像力を養うことを
若い世代に伝え続けていく。

星野さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

星野これまで、私の周りに魅力を感じる人がいたというのが大きなポイントですね。その人に惹かれて、「この人となにかやってみたい」というのが原動力でした。魅力を感じるところは仕事の能力とか、コミュニケーション能力とかさまざまです。その人と一緒に何かをやるためにコミュニケーションが取れる環境を作る。そこにはアインシュタインの相対性理論のような考え方も生まれます。例えば1対1で話す時と、1対大勢で話す時ではコミュニケーションの内容も変化する。自分の考えをわかってもらうためにはどういう言葉や行動が必要なのかがおのずと見えてきて、相手の返事を想像する力も必要になります。このことを若い人たちにも知ってもらうことが大切です。知っておけばコミュニケーションの仕方が変わるし、それによって相手の考え方を変えられることもあります。こうしたことを伝え続けていくことで太宰府が新しく変わっていくことが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。

私自身は常に誰とでも対等でありたい。尊敬できる人をコピーするのではなく、また上下関係でもなく、お互いに信頼でつながることが大切だと思っています。

10年後、20年後はどうなっていたいですか?

星野私自身、まだもっといろいろな人やモノと接する必要があると感じています。だから呼んでもらえたらすぐに行くし、自分が吸収するべきことはして、私の言葉で吸収できることがあればそうしてもらいたい。それを続けていきたいと思っています。また、私たちの業界も競合ではなく、お互いに同調しあいながら成長していきたい。そのためには今、組合のような組織も作る必要があるのかな、と感じています。

現状、足りないと感じていることはありますか?

星野私はその都度いろいろなアイデアが湧いてくる人間で、その中には世の中に貢献できるものもあります。ただ、それを具現化するためにはやっぱり1人の力では無理で、それを形にする人と環境が必要だと感じています。

星野さん、ありがとうございました!周囲の魅力ある人たちとのコミュニケーションを大切にしながら、さまざまなイノベーションを起こしてまちづくりに貢献し続ける星野さんを、今後も応援させていただきます。