Interview Vol.80
草津市で美容に関わる仕事を通して、
人々の健康や琵琶湖の環境保全に役立ちたい。
EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第80弾の今回は、滋賀県草津市で美容室を経営しながら体と環境に優しい石けんシャンプーを作る井本敏洋さんに話を伺いました。
井本敏洋さん
アレルギーをきっかけに
滋賀県産の素材を使った
ノンケミカルシャンプーを開発。
現在の活動について教えて下さい。
井本もともと25年美容師をしていまして、今は滋賀県草津市で株式会社JINENを経営しています。JINENはまず「エイブル美容室」という美容室からスタートしました。現在は美容室やマツエクサロンのほか、医療用ウィッグのヘアドネーション活動や、人と環境に優しいノンケミカルの「美しいびわ湖石けんシャンプー、リンス」を自社開発し、販売しています。
草津市で活動することになったきっかけを教えてください。
井本もともとアレルギー体質で、食物アレルギーやアトピー、アレルギー性鼻炎も持ちながら美容師の仕事を続けていましたが、5年目ぐらいからは仕事をすればひどい手荒れになる、という日々を繰り返していました。10年目ぐらいでアレルギー症状がひどくなってしまい、ついにドクターストップがかかってしまって。まだ子どもも小さいし、生活をしていかなければならなかったので、薬剤を使わないサロンにするなどいろいろと悩み、考えましたね。良いといわれるすべてのシャンプーを試してみましたが、どうしてもアレルギーに反応して体に発疹が出てしまう。そこで思いきって一度シャンプーもリンスも無添加石けんに変えてみました。そうしたら、少しずつ症状がおさまってきたので、「自分でシャンプーを作ろう」と思い立ち、開発を始めました。構想は早くから考えていたのですが、コロナもあって4年くらいかけて「美しいびわ湖石けんシャンプー」を作りました。
「美しいびわ湖石けんシャンプー」の素材は滋賀県産。水は岩間山から湧く岩深水、香りは雄琴のハーブガーデンで育てられる有機栽培のハーブを使った精油です。体に優しいのはもちろんですが、石鹸をベースにして作った自然にも優しいシャンプーとリンスです。
井本さんが手がける滋賀県さんのシャンプー
井本さんにとっての地域活性を教えてください。
井本僕は大阪のカリスマ美容師に惚れ込んで、10年間その店で働いていました。大変なこともたくさんありましたが、基本的にその方に対する愛は変わらなくて、愛があったからこそ大変でも続けられたのだと思います。この経験を通して、自分の中には滋賀県に対しても変わらない愛があるんだということをあらためて知りました。
滋賀県の人は皆さん琵琶湖のことを「マザーレイク」と呼びます。琵琶湖は自分にとってあって当たり前の存在で、その価値に気づいていなかったのですが、自分の中にもマザーレイクへの愛が潜在的に根づいていたのでしょうね。あまり覚えていないのですが(笑)結婚式の挨拶で「これから僕が琵琶湖を守っていく。皆さん一緒に頑張りましょう」って言ったそうです。「お前、誰やねん!」って友達には突っ込まれましたが(笑)。だからというわけではないのですが、ゴミ拾いのイベントや地元のお祭り、イナズマロックフェスのチャリティーや琵琶湖の環境保全のオンライン会議など、できることは積極的に参加しています。
また、サッカーをずっとやっていたので、地元に戻ったら地元のサッカーチームを応援したいという気持ちはずっと持っていました。他の企業ならユニフォームスポンサーなどで出資する形が多いと思うのですが、自分は持っている技術で貢献したいと思い、かっこよくさっぱりとした状態で試合に臨めるように選手のカットを割引にさせてもらっています。実は地元に返ってきて最初に地域と関わりを持ち始めたのはここが原点です。
他にも、病気などで髪を失った子どもに少しでも役に立ちたいと思い、医療用ウィッグを作るヘアドネーションにも協力しています。寄付してくれる人も、寄付される人も、もちろんその間をつなぐ僕もみんなが幸せになれる活動です。僕も毎回、感動しながら髪をカットさせてもらっています。
私の理念は、「ヘルシーアンドビューティフルライフ」。健康面やライフスタイルを考えると、やっぱり地域との関わりはすごく大切です。美容に関わる僕の活動とはまた違った活動をしているさまざまな人たちと交わることで、滋賀県のいいところや文化をさらに多くの人に伝えることができます。こうした地元への溢れんばかりの愛が、どんどん形になっていくことが大切だと思います。
また1人ひとりが地元愛のエネルギーを発信して、誰かとつながって大きなエネルギーに変えていけば地域活性につながるのではないかと思っています。まずはとにかく、発信することが重要。日本の選挙と同じですね。国を変えるためには地方が変わらないといけない、そのためには1人ひとりが変わらなければいけないというのを今、地元で活動しながら実感しています。
「リレーフォーライフ滋賀医科大学」がん啓発イベントの集合写真
琵琶湖につながる人と
共鳴しあいながら
環境保全に関わっていく。
井本さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。
井本滋賀県は日本で初めて石けん運動が起こった場所です。45年前、琵琶湖が合成洗剤のリンによって赤潮で真っ赤に染まった時に、1人の主婦が立ち上がって「もう一度、粉石けんに変えましょう」と声を発したのが始まりで、その時は条例まで作られました。そのことと、僕の体で実感したことがリンクして結びついて、「これはもうアレルギーという体調不良を経験した自分しかできへん。美容という得意なことを生かして第二の石けん運動をしよう」と思って「美しいびわ湖石けんシャンプー」を作ったんですね。「僕が作った石けんシャンプーは体や髪に優しいですよ」と皆さんに伝えて普及していくことで、大きな波になっていけばいいという思いで始めました。それが僕のEVOLUTION✕LOVEです。
10年後、20年後はどうなっていたいですか?
井本美容の仕事や石けんシャンプー、環境保全活動などを通して人や地域とのつながりを感じているので、10年後、20年後ももっと多くの人とつながっていたいと思います。これまでの経験を通して、環境と体はつながっている、広くいえば宇宙の中における僕の存在は、1人の人間にたとえると細胞と同じだなと感じています。少しわかりづらいかもしれませんが、宇宙と地球、国、地域は、大小の差はありますが全部一緒につながっているということをすごく実感したんですね。これは歳を取れば取るほどわかることかもしれません。「自分はこのために今までいろいろやってきたのかな」と人それぞれに感じることは絶対にあると思いますし、自分もあります。僕はこれからも琵琶湖とつながる人、琵琶湖は海に囲まれているので、海や川、山で環境保全の活動をしている人もいるので、その人達と一緒に共鳴し合って環境保全活動をし続けていきたいと考えています。
今、環境保全の寄付を立ち上げて2年連続で売上の一部を寄付しています。これからも売上を上げ続けて寄付し続けていきたい。どれだけ売上を上げるとか具体的な案はありませんが、行けるところまで行きたい。だから今後は石けんだけではなくて、いろいろな方とコラボもしながら時代に合わせて柔軟に変化しつつ、琵琶湖の環境保全に関わっていけたらと考えています。
井本さん、ありがとうございました!心と体の美を原点に、地元の人たちとつながりながら琵琶湖の環境保全や、人と環境に優しい新たな商品開発を考え続ける井本さんの取り組みを、これからも応援させていただきます。