空でつながろう

Interview Vol.91 鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、
みんなが幸せな場所を作りたい。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第91弾の今回は、砂丘ヨガやプロキング、農業などを通して自分もみんなも笑顔で幸せになれる場所づくりに向けて活動する石谷依利子(イシタニエリコ)さんにお話を伺いました。

鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、みんなが幸せな場所を作りたい。

砂丘ヨガを運営する石谷さん

砂丘での活動や
多鯰ヶ池の活用が
新たな鳥取の価値創造につながる。

現在の活動について教えて下さい。

石谷大きく4つありまして、まず観光事業として、国立公園・鳥取砂丘でのヨガ体験と多鯰ヶ池でのSUPクルージングとSUPヨガ体験を運営しています。2つめは鳥取砂丘のビーチでジョギングをしながら漂流ゴミを拾うプロキング体験会をしています。プロギングというのはごみ拾い(PlockaUpp)とジョギング(Jogging)を合わせたスウェーデン発のフィットネスで、新しいサスティナブル活動として注目されています。また、スポーツクラブでヨガやピラティス、有酸素トレーニングのプログラムも担当しています。4つめは農業です。無肥料無農薬で野菜が作れるのか、その野菜を食べたら健康になれるのかとか、持続可能な暮らしについて追求しています。農業はまだ実験的な段階です。

鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、みんなが幸せな場所を作りたい。

海洋保護、地球美化活動として鳥取砂丘でプロギング体験

鳥取市で活動することになったきっかけを教えてください。

石谷私は東京出身で、それまで鳥取県がどこにあるかさえ知らなかったのですが、鳥取へ遊びに行った時に海や豊かな自然に触れて「鳥取って楽しいじゃん!」と実感しましたね。

2001年に結婚して鳥取に住むことになったのですが2011年に乳がん検診に引っかかってしまいました。そのタイミングと東日本大震災が重なって、「自分には時間がない。死ぬ前に世の中にプラスを生み出してから去ろう」と思うようになりました。実はその前から「私はこんなに鳥取を素敵だと思っているのに、県民の人は鳥取のことをネガティブに考えている。それがもったいない」とずっと思っていて。鳥取県は、例えば出雲大社へ行く時など、山陰地方の旅における通過型の観光なんですね。でも砂丘があり、空港もあるので県の基幹産業は観光です。でも全然活かしきれていない。もっと鳥取の人が地元を好きになるような、地域のためになることができたらと考え始めたことをきっかけに、起業塾へ通うようになりました。「鳥取砂丘で何かやりたい!」強い思いはあったけれど何をしていいか、全くわからなかったのです。学ぶうちにだんだん考えがまとまり、自然と人とのつながりを作りたくて、砂丘だからできること、砂丘しかできないこと、普遍性であることなど、国立公園のポテンシャルをどうやって上げていこうかと多方面から考え続けましたね。何度も砂丘に通うある日、ヨガはまったくやったことがなかったのですが、「寝転んだら気持ちいいだろうな。マットが必要だな、あ!!ヨガだ」とひらめいて。国立公園でヨガをするって凄いですよね。たまたま県や市が運営する「あなたの企画で砂丘がもっとおもしろくなる」というチラシを見つけてこれが運命の分かれ道のチャンスと思って申し込みました。私はヨガのスキルがなかったので最初は他の方に頼んでいましたが、2年間のボランティア活動を経て継続のために自分でやるようになって、起業しました。そのうち鳥取のマスメディア、観光協会やANAのサイトでも紹介されるようになり、知名度も上がりました。もう13年も続いています。プロキングを始めたのは今年からですね。農業もそうですが、自分がやりたいことを形にしながら今も進化を続けています。

鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、みんなが幸せな場所を作りたい。

砂丘ヨガの様子

砂丘ヨガを始めて、自分自身変わったことは?

石谷砂丘ヨガって一見華やかそうに見えますが、自然の中なので天候に左右されます。観光事業なのでずっと時間を空けていないといけないし、コロナもあってお金も仕事も低減したこともありました。でもそういうことがあったから、今、農業に行き着いています。何があっても、衣食住さえ確保できればあとはどうでもいいというか、笑顔があって家族がいればいいとシンプルに思うようになりましたね。

SNSでフォロワーをいっぱいにしたいと考えてその結果自分の時間を縛られたり、お金という価値に縛られたり。もちろんお金も大切ですが、稼ぐこと以外の幸せを考えられるようになりました。東京にいた頃の自分は、ブランド志向で、借金して物を買って。でもそれは、消費社会にまんまと仕向けられていたんだと気づきました。なんのために生きているの?稼ぐため?借金を返済するため?と考え始めて。だから今は今までの社会の仕組みのマトリックスから抜け出している感じです。

鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、みんなが幸せな場所を作りたい。

サップヨガの様子

石谷さんにとっての地域活性を教えてください。

石谷これまでは、砂丘はただ観光地としての存在でしたが、砂丘ヨガで「気持ちよさそう」「行ってみたい」という新たなイノベーションを起こせたかなと思っています。人は潜在的に自然を敬い、自然に触れたいという思いを持っています。足の裏から五感で砂丘のエネルギーや風を感じる、そういう楽しみ方を提案できていると思っています。こうした砂丘ヨガの動画もまた、鳥取県のプロモーションに役立っているのではないかと考えています。

砂丘は昼間だけではなく星空もすごくきれいで、2012年から夜の星空や宇宙と溶け合うヨガ体験もやっています。その後、鳥取県の職員が、「星取県」としての観光PRを立ち上げました。地域の将来を支える産業のひとつとして宇宙産業創出にも力を入れ始めています。私自身はシンガーソングライターとして星取県の応援ソングも歌っています。

夜の砂丘が注目されれば宿泊が増え、地域が潤いますよね。2028年には鳥取砂丘に大型ホテルができる予定ですが、大切なのはその後。どうやって盛り上げていくか、そのコンテンツが地域活性につながると思っていますし、まだまだこれからだとも思っています。

また多鯰ヶ池でSUPも行い始めた時も、「もともとマイナスイメージがある場所だけれど何年か活動すれば絶対に応援してくれる人が現れる」と思って続けていたら、テレビで紹介されて、見ていた地域の方たちが「私たちも一緒になってこれを活性化しよう」と多鯰ヶ池実行委員会を立ち上げてくれました。この方たちのおかげでトイレができて、デッキができて、遊歩道ができて、人が集まるイベントが行われるようにもなって行政からの予算もつくようになりました。こんなふうに地域資源を活かした新しい価値の創造をめざすこと、より自然を楽しむための仕掛けを作っていくことが地域活性化につながると考えています。

でも、地域活性化と一言でいっても実はすごく奥が深くて、世の中がどんどん変化して価値観が変わる中で、結局何が一番いいかというと住んでいる人が幸せであることでしょうね。インフラも経済も大切ですが、住民がエネルギッシュで自分らしく生きて、自分を表現できる環境であることが大事だと思っています。

鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、みんなが幸せな場所を作りたい。

星空を見ながらナイトヨガ

自分が幸せであること、
喜びを分かち合うことが
生きるエネルギーに。

石谷さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

石谷私は、自分の人生には時間がないと思っていたので、大好きな鳥取に何かプラスになることを生み出したいと考えたことが、最初のEVOLUTION✕LOVEだと思います。鳥取の魅力に対して謙遜の気持ちが大きい地元の人々は、よそから来た私が砂丘ヨガをやり始めて、最初は「こんな暑いところで誰が何をやるんや」という感じでしたが、メディアで取り上げられるようになって「砂丘ヨガ、かっこいいね」「鳥取を盛り上げてくれてありがとう」といわれるようになって、今はみんなが鳥取を好きって言ってくれることがとても嬉しいです。

また、以前は自己犠牲の気持ちで生きていたのですが、ある時「自分が心から楽しまないとエネルギーは伝わらない」と感じて自分を大切にするようになりました。人を喜ばせたいという気持ちから今は人と喜びを分かち合うことにシフトチェンジしています。みんなが喜び、元気になる、人が生きていく上で持っているすべてを発揮できるような場所を作りたい、そう考えたら地球環境の重要性にもたどり着いて。それまで環境問題にはまったく興味がなかったのですが、ずっとこのままでいいのかな?と立ち止まって考え始め、農業やプロキングを行うようになりました。自分が満たされ、みんなが幸せに暮らせるための活動を行っていくこと、それが今の私のEVOLUTION✕LOVEです。

鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、みんなが幸せな場所を作りたい。

旅の記念の写真撮影も大好評な写真はサンセットヨガ体験。

10年後、20年後はどうなっていたいですか?

石谷今より地球環境がよくなってほしい。そのためには環境問題について考える人を増やすことが大切です。そこから画期的なアイデアが生まれるかもしれないし、それが次の産業につながるのではないかと思っています。私自身も出来る事として初心者からはじめた無肥料、無農薬で栽培したヘチマ。土に還る天然素材としてスポンジやたわしに加工してお客様にプレゼントすることを予定しています。先人から受け継いた地球の環境を皆で大切にして未来へとバトンタッチしたい!ワタシにできることこれからも心の思うままに動いていきます

鳥取砂丘でのヨガや環境にいい活動を通して、みんなが幸せな場所を作りたい。

無農薬・無肥料栽培のヘチマ

石谷さん、ありがとうございました!自分を大切にし、人と喜びを分かち合いながら、みんなが笑顔で幸せになれる場所を作りたいと活動を続ける石谷さんを、今後も応援させていただきます。