空でつながろう

Interview Vol.94 地方活性もSNS時代
南相馬市や東北の再生&活性化に
デジタルを通し貢献する。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第94弾の今回は、南相馬市を中心とした東北地方の魅力をインスタグラムで発信し、PR活動をしながら、震災から復興し、再生する地域の活性化に貢献する谷田龍司さんにお話を伺いました。

地方活性もSNS時代 南相馬市や東北の再生&活性化にデジタルを通し貢献する。

青森に1週間ワーケーション兼取材時に皆さんと谷田さん(写真右から二人目)

学生時代の旅行を機に
東北が好きになり
インスタグラマー活動を開始。

現在の活動について教えて下さい。

谷田2023年2月からインスタグラムを使って東北地方の観光名所や施設などのPR、企業のSNS運用代行、個人の方向けのギフティングという3つの柱で活動をしています。

地方活性もSNS時代 南相馬市や東北の再生&活性化にデジタルを通し貢献する。

福島県南相馬市にある「大悲山」の森林にて

南相馬町で活動することになったきっかけを教えてください。

谷田もともと僕はインドア派で旅行にまったく興味はありませんでしたが、大学生になって、20歳の誕生日の時に「ちょっとは外に出たほうがいいのではないか」と考えて、1週間ぐらい1人旅をしてみようと思いました。

宮沢賢治が大好きなので岩手県に行ったのですが、そこで人の温かさにたくさん触れて。新幹線に乗るのも初めてだったのですが、いろいろな方に教えてもらって岩手にたどり着き、行く先々でとてもよくしてもらいました。1週間だけの予定だったのですが、あまりに気に入ってしまって1ヶ月間いました。以来、旅行が大好きになって。大学は福祉を選考していたので一旦は福祉の仕事に就いたのですが、縁あって旅行会社に転職しました。東北と北海道を担当していたので、東北へ行く機会が多く、より一層東北を好きになりましたね。

しかし旅行会社の仕事はとても楽しかったのですが残業が多く、終電すら間に合わない日々もありました。ある夜、1人で残業している時にふと「一体なんのために仕事をしているのだろう」と考え、それで仕事を辞めました。

しばらくはフリーでライターなどをしていましたが、「やっぱり東北の魅力を発信したい」と考えるようになり、インスタグラムを始めました。実はそれまでアナログ人間で、パソコンやスマホの操作もよく知らなかったのですが、頑張って今まで続けています。

インスタグラムの活動で大切にしていることは?

谷田仕事は自治体から受けることが多いです。SNSは情報を個人に早く届けられるけれども忘れ去られるのも早いので、「1投稿してください」という依頼でも何回も投稿するようにしています。インスタグラムを通して東北への送客につながる活動をしたいと思っているので、僕の投稿を見て東北へ行ってきたというDMをもらうと嬉しいですね。例えば、どこどこに泊まりました、というDMをもらうと、その宿に行くまでには必ず観光もしているはずなのでお金が動いていると思うし、地方創生の一助につながっているのではないかと思っています。

谷田さんにとっての地域活性を教えてください。

谷田東北の中でも自分が深く関わっているのは南相馬市です。2022年12月に、滞在費の補助を受けるかわりにその町の魅力をSNSで発信するという「遊ぶ広報」という企画に参加して南相馬市小高地区を訪れました。その時、南相馬市の南にある双葉町へ行き、ゴーストタウン化した風景に衝撃を受けました。家があるのに光がない。その時点ですでに震災から11年が経過していたので、メディアで取り上げられることもなくなっていたのですが、現実は何も変わっていませんでした。「これは何かしら発信しなければならない」と強く思いましたね。今はもう人が戻ってきていて、美しい景色や、おいしい食べ物もあるよ、ということを伝えたいと。僕の投稿の中で、閲覧数が伸びた上位はほぼ津波や原発の被害があった地域ですが、そういうことは一切書かず、実際に足を運んでもらって、「ここに津波が来たんだ」「原発があったんだ」ということを肌で感じてもらいたいと思っています。

今までは基本的に南相馬の風景の動画やフィード投稿をやってきていましたが、来年はもう少し入り込んで、今、地域の人々が抱えている問題を伝わりやすいように動画にして投稿していけたらとか替えています。インスタグラムを始める時に、自分のフォロワーが増えたら、次は自分の思いを伝えようと決めていたので、来年はようやくそれができると思っていますし、それが地域活性につながればいいと考えています。特に小高地区は4分の1が移住者なので、SNSの発信によって以前からいる人たちと移住者を結び、町の再生や活性化に役立つことができたら嬉しいです。

また“福島会”というSNSのチームがあるので、こうした横のつながりも大切にしながら、南相馬のイベントなどを発信し、送客につなげることも地域活性の方法のひとつだと思います。イベントはけっこう大切で、2024年10月に双葉町で花火大会があったのですが、遠方からも多くの人たちが観に来ていました。自分たちもこの先、何かイベントができたらいいとも考えています。

それと、僕は兵庫出身なので阪神・淡路大震災と東日本大震災の2つの震災を経験しています。この経験を生かして、今後は震災の時に役立つグッズ紹介など、暮らし系のインスタグラムも立ち上げて、さまざまな角度から発信しながら人々の役に立ちたいとも考えています。

東北にはこんないいところがある
その想いを胸に秘め
この先もずっと発信し続ける。

谷田さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

谷田僕は考えるより行動派。仕事をやめてSNSの勉強会に参加して、「情報発信にはこういう方法もあるんだ」ということを学びました。その3日後に「遊ぶ広報」に参加して双葉町のゴーストタウン化した景色に出会い、「本当にできるかどうかわからないけれど、今のこの思いを何かしらの形にしたい」と思い、「とりあえずやってみよう」とSNS発信を始めました。SNSの勉強と、自分のやりたいことがこの時につながったんですね。

SNSを見る世代は若い人たちですが、多くの人が「東北は何もない」と都会へ出ていってしまう。でも、何もないことはない。それはSNSじゃないと伝えられないという思いがあって、常に「東北にはこんないいところがある」ということを知ってほしいと願いつつ発信しています。

以前、僕の投稿を見た大学生が「就職をどこでするか迷っていましたが、りゅうさんの投稿で東北のすばらしさを知って、このまま地元に残ることにしました」というDMをくれて、涙が出るくらい嬉しかった。1人でも変える力がSNSにはあるんだということが実感できました。だから自分はこれから先、年齢を重ねても、今の自分の思いを持って発信し続けていきたいと思っています。まずは東北の人たちに東北の素晴らしさを知ってもらってもっと好きになってもらい、それから都会の人たちを東北に呼ぶ発信をしていきたい。それが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。

地方活性もSNS時代 南相馬市や東北の再生&活性化にデジタルを通し貢献する。

青森ワーケーションに行った際に東北をSNSで盛り上げる仲間たちと

10年後、20年後はどうなっていたいですか?

谷田東北の人たちには、景色もそうですが農業や林業、目に見えるもののすべてが東北の財産だということにまず気づいてほしいと思います。その上で僕は、今と変わらぬ思いで東北のPRや地域活性化、東北への送客を考えて発信し続けていきたいですね。「誇れる町、誇れること」を持続していくことはすごく難しいことだとは思うのですが、人がいればできることはある。だからIターンやUターンも含め、いろいろな人たちが関わることができる地域になっていければいいと思っています。

谷田さん、ありがとうございました!震災の風景を忘れてはならない、もっと東北の魅力を発信して多くの人に足を運んでほしいという谷田さんの思いがひしひしと伝わってきました。谷田さんの精力的な活動を、今後も応援させていただきます。