空でつながろう

Interview Vol.95 滋賀教育✕まちづくり事業で
子どもたちが将来帰りたくなる長浜市にしたい!

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第95弾の今回は、小学生向けのワークショップや高校生向けの授業作成、若手社員の研修などの教育事業とまちづくりをかけ合わせた活動を行う中井健太さんに話を伺いました。

滋賀教育✕まちづくり事業で子どもたちが将来帰りたくなる長浜市にしたい!

中井健太さん

人が育たないと
まちづくりもできないから
子どもたちの教育は
地域の人が関わることが重要。

現在の活動について教えて下さい。

中井合同会社「andstep」を運営し、教育とまちづくりをかけ合わせた事業を行っています。具体的には、まちづくり事業として子どもや高校生、大学生を巻き込んだまちの文化祭を企画したり、高校生向けの課題探究プログラムを作ったり、若手社員向けの研修事業を行っています。また、高校生や大学生のフリースペースを作っていまして、毎日20〜30人くらいの高校生と話をしたり、いろいろなプロジェクトを考えたりもしています。

高校の出前授業や、企業と地域をつなげて地域の人材育成も行っています。
もともと環境教育にも興味がありまして、小学生に向けた環境教育もしていますね。

長浜市で活動することになったきっかけを教えてください。

中井出身は大阪で、京都の大学に通っていました。先生になりたくて大学3年までは教員をめざしていましたが、ちょうど3、4年次の時にコロナ禍になって、いい意味で立ち止まって考える機会になりました。

そのタイミングで教育実習にも行ったのですが、「今教師になるんじゃなくてもっといろいろチャレンジしたほうが、子どもたちに面白いことを伝えられる」と考え、教師をめざすのをやめて就職活動をしました。

でも、就活の合同説明会って、かっこいいスーツ着て行かなきゃいけないじゃないですか。私はそれを全然知らなくて普段着で行っちゃって一番前に。その時「やっぱり自分は社会不適合者かもしれない」と思って「それなら起業しないかんかな」ってパッと考えて。そこからしばらくフラフラしていたんですが、たまたま長浜市の教育関連企業の方に「もしよかったら一回長浜においでよ」って言われました。実際長浜市へ行ってみたらめっちゃいいなと思って、「じゃあ移住しておいでよ」といわれて移住したのがきっかけです。大学の卒業式は長浜から行きました(笑)。

教育コンテンツを作りたいという思いもあったので「長浜市は自然も豊かで琵琶湖も近くて、教育環境として最高やん」と思いました。

長浜市では市役所からも仕事をいただけそうですし、いくつかの企業からも声をかけてもらいました。新しく事業を始めるチャンスがたくさんあったのです。だから、最近は高校生や大学生に「自分で起業を考えるのであれば、地方にチャンスは多いよ」という話をしています。

なぜ教育✕まちづくりなのでしょうか?

中井たぶん、人が育たないとまちづくりができないと思うからです。教育というと、小学生や中学生、高校生をイメージするじゃないですか。でも私は、子どもはもちろん大人もまちづくりの一員だと思うので、若手社員もターゲットにして教育を行っています。

以前、近くの川で小学生たちと水力発電を作るイベントをしました。こういう場合、地域のおじいさんが必ず長浜や川、祭りの歴史について語るので、子どもたちがつまらなくなって帰ってしまっていましたが、その時は黙ってもらってまず子どもたちに考えさせました。子どもたちは水力を発電する方法を知らないから困って、おじいさんたちに聞きに行くことになります。その瞬間、子どもたちにとっては「話の長いおじいさん」が、「困りごとを助けてくれる地域の大人」に変わったのですよ。呼び名も「おじいさん」から「プロフェッショナル」に変わりました。子どもたちが主体性を持ち、大人たちも協力して、とてもキラキラしたイベントになりました。そういう意味で、まちづくりは教育とすごく関わりがあると感じています。

私は最初、子ども向けの教育や教育関連のイベントをやりたいと思っていたので、まちづくりには興味がなかったのですが、やっぱり地域の大人も一緒にやらないと子どもたちのよさが大人に伝わらないし、子どもたちに向けて投資しようと思わないと考えて、まちづくりと教育を掛け合わせようと思いました。

滋賀教育✕まちづくり事業で子どもたちが将来帰りたくなる長浜市にしたい!

地域の大人の方々と子供達で行われた水力発電を作るイベントの様子

中井さんにとっての地域活性を教えてください。

中井私は学校の先生以外に滋賀県内で一番高校生と関わっていると思っています。高校生と一緒に地域の祭りで焼き鳥店を出店したことがありますが、その売上金を長浜市に寄付しました。実は彼らのモチベーションはまちづくりとか地域活性化ではなく、「お祭りで稼ごうぜ」なんですよ。若者が頑張って祭りが盛り上がれば、それでいいと思います。地域の祭りを運営できる大人がどんどん減っていく中で、こういう子たちが頑張るというのは、それだけでも地方活性につながっていると思います。

今の子たちが将来大人になった時に、長浜市へ帰ってきたいと思う気持ちがあるかどうかが地域活性化にとっての勝負。「あの楽しかった思い出を我が子にも作ってあげたい」と思えるようになったらいいなと。もう少しして、若い人たちが長浜に帰って来だしたら、地域活性化のサイクルが回ってきたと実感できると思います。

滋賀教育✕まちづくり事業で子どもたちが将来帰りたくなる長浜市にしたい!

高校が出店する焼き鳥屋さんのブース

滋賀教育✕まちづくり事業で子どもたちが将来帰りたくなる長浜市にしたい!

長浜駅前の中井さんが運営される施設にて地元高校生たちと

社会人になってからも
関わり続けることで
「長浜に戻ってよかった」
と思われるように。

中井さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

中井縁あって地元の高校生や大学生のためのフリースペースのリーダーになったことは、今の活動の礎になりました。高校の課題探求プログラム授業は以前から行っていましたが、そのうちに企業から「採用に困っている」という話を聞いたり、反対に学校の先生から「企業とつながりたいけれど中井くん何かできひんか?」と相談されたりして企業側、学校側とのつながりが一気に増えましたね。毎日何十人もの高校生と話をするがゆえに周囲の人たちから「中井に聞いたらある程度今の高校生や大学生の気持ちがわかるのでは?」と思われるようになってきて。今まで培ってきたつながりが、一気にきちんと戦える武器になった気がします。

これまでの事業は小学生が相手だったので、子どもたちにある程度地域のことを知ってくれたらいいと思っていました。しかし高校生と多く関わるようになって、高卒で働く子向けに企業紹介のプログラムを行うようになり、その企業で働く子も現れました。しかし、今度は就職先の人間関係に悩んで辞めたいという子が出てくるようになりました。話を聞いているうちに「自分は就職までは関わることができても、それ以降は何も関われていない」と考えるようになりました。就職してからもきちんとサポートしてあげないと、この子たちに『長浜市に帰ってきてよかったな』と思わせてあげられへんなと思って。だから高校や大学時代だけではなく、社会人になってからもずっと関わっていくことが大切だと考えています。それが私にとってのEVOLUTION✕LOVEです。

10年後、20年後はどうなっていたいですか?

中井今住んでいる子供たち、大学生が地元で活躍してくれていたら嬉しいなという思いはあります。個人としては、地域と若者をつなぐ伴走者を増やさないといけないという課題を持っています。そういう人が長浜市だけじゃなくて滋賀県全体で増えてくれると嬉しいですね。何かをしよう、作ろうと思った時に教えてくれる地域の大人を増やしたいので、将来的には地域の大人図鑑のようなものを作りたいとも思っています。

中井さん、ありがとうございました!子どもたちの教育に、企業や地域の大人たちも巻き込むことでまちづくりや地域活性に貢献する中井さんの活動を、今後も応援させていただきます。