空でつながろう

Interview Vol.97 若い人たちが集まりここで夢を叶える。
そんな南相馬市をめざして熱量を上げ続ける。

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行っています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第96弾の今回は、南相馬市のコワーキングスペースの運営に携わりながら、コミュニティマネージャーとして人と人をつなぎ、町の活性化に尽力する只野福太郎さんに話を伺いました。

若い人たちが集まりここで夢を叶える。そんな南相馬市をめざして熱量を上げ続ける。

只野福太郎さん

多拠点生活を通して
さまざまな人に出会い、
南相馬市に移住して
活動を開始。

現在の活動について教えて下さい。

只野2020年から南相馬市に移住し、OWB株式会社に所属してコワーキングスペース「小高パイオニアヴィレッジ」の運営を行っています。そこでコミュニティマネージャーとして人と人との関係づくりを行いながらさまざまな起業に協力しています。また企業、メディアやクリエイターの誘致と共創も行っています。2024年からはシェアリングエコノミー協会東北支部の副支部長に任命されました。こちらは、業界の啓蒙活動のほか、昨今注目されている2拠点居住について、国土交通省と意見交換をしながら最適なルールづくりに向けて取り組んでいます。

若い人たちが集まりここで夢を叶える。そんな南相馬市をめざして熱量を上げ続ける。

小高パイオニアヴィレッジで行われたセミナー終了後に皆さんと記念撮影

南相馬町で活動することになったきっかけを教えてください。

只野大学3年の就職活動中、たいした将来像もなくいろいろな企業を訪問するという同じような日々が5日間くらい続いて、なんか強烈な危機感を覚えたんですね。「これではだめだ、何かを変えたい」と。その時にたまたまメディアで多拠点生活をライフスタイルとする人たちの記事を見つけて、自分もそこに身を投じてみようと、あえて家に帰らずにゲストハウスやホステルに泊まるようになりました。それが分岐点ですね。

多拠点生活をしていると、今まで自分の人生にはいなかったような生き方をしている人にたくさん出会うことができました。そんな折に、たまたま南相馬市の小高で「100の課題から100の事業を起こそう」という活動をしている企業の求人を見つけて興味を持ちました。人のつながりを作るコミュニティマネージャーの仕事がなぜかとても魅力的に見えました。バックパック1つでいろいろな場所に行くような暮らしを通して、出会った人とのつながりを作ることに幸せを感じていた時だったので、余計に面白そうだなと思いました。

この求人のことを、たまたま浅草のホステルで知り合った福島出身の同世代の人に話したら、「その人たちみんな知り合いだから福島に連れて行ってやるよ」といってくれて。実際に福島へ行って、まるで震災から時が止まったかのように復興がまだ始められていない状況の地域があることを知り、衝撃を受けました。僕は埼玉県の浦和出身なのですが、毎年3月が近づくたびに東北が少しずつ元の生活を取り戻してきているというエピソードをTVで見て、「東北はなんとかなっているんだな」と勝手な印象を持っていましたが、現実を見ると、「もうこれは自分が行くしかない!やるしかないな」と思いましたね。復興支援がまだまだ必要な中、その一方で多くの人が起業をしている。そういう環境で自分ができることを模索しながら、ファーストキャリアを積んでみようという感覚でした。私が見つけた求人条件も、いきなり定住することが求められているものではなく、2年間の契約内容だったので、「まずは2年間のキャリアを積んで、力をつけよう」と思って移住することにしました。

実際に南相馬市に移住してみて、どうですか?

只野自分の嗅覚は間違いなかったと思っています。都心部では小さなビジネスはあまり注目をされませんが、ここではビジネスのサイズに関係なく、新しくチャレンジするビジネスが新たなコンテンツを生み出すきっかけとなり、注目されます。どのビジネスも僕にとっては新鮮で、ここに移住することを選んでよかったと思っています。また同時にさまざまな企業や仕事と関わることで、ゼロからイチになる事業プロセスを体感できています。都心の会社員ではきっと、こんなに多くの起業の瞬間には立ち会えないでしょう。

只野さんにとっての地域活性を教えてください。

只野以前は「この地域には若者はもう帰ってこない」といわれていて、お年寄りの楽園にしようという話もありましたが、逆にこの場所は今、若い人たちがチャレンジしやすい地域になっている。地域の人たちも、この町で活動する若者が行う新しいことを受け入れようと頑張っている。そういう文化が少しずつ広がってきていると実感しています。

私たちが運営している「小高パイオニアヴィレッジ」は「とりあえず、まずはやってみよう」という人にとっていい環境だと思います。夢があって、それを実現するために全力で走っている人が集まってくる、そういう人がコミュニティになっていることで「自分もやりたいことができる」という地域の風土づくりに貢献しているのかなと感じています。実際、これまでに27もの事業が誕生しました。

私も密かに新しい祭りを作れないかなと思っています。実は今、満月の夜に海で相撲をやっているのですが、今まで出会わなかったであろう人たちの新しいコミュニティができています。こうした新しい文化を作ることで地域の混ざり合いを濃くして、再建することにチャレンジしていきたいのです。ここにしかない唯一無二のものを作ることでそこに熱量の渦が生まれ、人がどんどん来る。南相馬も以前住んでいた人が戻り始め、新たな人たちも増えています。新しいコミュニティーやコンテンツを作り、行政や市民が助け合って人の熱量の高い街を作ることができたら最高ですね。それが人口減少社会における地方創生のひとつのあり方だと思っています。

若い人たちが集まりここで夢を叶える。そんな南相馬市をめざして熱量を上げ続ける。

満月相撲の参加者の皆さん

「どうしたら南相馬市をもっと面白くできるか」を
常に考え続けていたい。

只野さんにとっての“EVOLUTION✕LOVE”を教えてください。

只野私はここで地元の人と結婚して、人生の軸が浦和から南相馬市に変わりました。以前は「次はどこでなにをしようかな」という、さまざまな人生の変数を持っていましたが、今は南相馬市に身をおいて「どうしたらもっとこの地域を面白くできるか」と考えている。自分が持っているベクトルやクエスチョンが変わってきたと感じています。自分のエネルギーをちゃんと地域に注いでいくことができるようになり、変化が生まれるとより一層この地域が面白くなって、その変化に対して人と人をつなげられるようになって。「この地域にはこういう人しかいない」ではなく「あんな人も、こんな人もいる」とより広い視野で見られるようになりました。動けば動くほど肩書や役割は増えますが、その分自分ができることをどこにどう還元するかというようなことを考えていますし、これからも行動し続けていきたいと思っています。それが私にとっての“EVOLUTION✕LOVE”です。

10年後、20年後はどうなっていたいですか?

只野少し冗談でもあり真剣な話ですが、まずは満月相撲が地域に当たり前に存在するようになっていたいです。またこの場所でどんどん起業家が生まれることが当たり前になるようにもしたいと思っています。若い人たちが自分の人生のサイズ感にあった活動をしていて、自分がいいと思ったことを発信していける、そんな町になれたらいいですね。やりたいことがあるなら、まず南相馬市に来てよ、といえる場所にしたいと思っています。

いい意味でも悪い意味でも震災を知らない子たちが増え始めているからこそ、自分の人生を自分でおもしろくしていける積極的に動ける人が増えていけばいいと思っていて、そういう土壌を今のうちから作ることは必要だと思っています。

ポジティブな気持ちで震災を忘れず、また震災が合ってもこれだけ復興して前に進んでどんどん町をよくしていこうという、そういう想いも継承していきたいですね。

私自身もまた、「これ、次の時代に当たり前になったらおもしろいよな」ということにずっとエネルギーを注いでいきたいと思います。

只野さん、ありがとうございました!南相馬市の熱量をもっと上げて、若い人たちがチャレンジできる場所にしたいという只野さんの思いが伝わるインタビューとなりました。只野さんの幅広い活動を、今後も応援させていただきます。