空でつながろう

Interview Vol.52 越境が生む、
京都と大津の双方向イノベーション

EVOLOVEプロジェクトでは、日本全国47都道府県にて「地元愛」を持ち、積極的に地域活性に力を注ぐ方々へのインタビューを行なっています。これまでの活動内容から、この後どのように「地元愛」を進化させていくか。未来へ向けたチャレンジを、皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。第52弾の今回は、京都と滋賀をまたぎ、株式会社ツナグム、株式会社ホモ・サピエンスを通して地域活動を行なっている片山 良人(かたやま よしひと)さんにお話を伺いました。

越境が生む、京都と大津の双方向イノベーション


片山 良人さん(下段、左から2人目)とツナグムメンバー

つなげたい、京都の「歴史」と
大津の「可能性」。

現在の活動について教えてください。

片山僕は京都と大津それぞれで活動しています。京都では株式会社ツナグムのメンバーとして、主に京都の自治体・企業と一緒に事業を行っています。具体的には、京都信用金庫さんと「QUESTION(クエスチョン)」という共創施設の企画、運営をコアパートナーとしてご一緒したり、京都リサーチパーク株式会社さんとは拠点でのイベント企画や取材記事の作成といった情報発信のお手伝いさせていただいています。また自治体と京都移住を促進させるお手伝いをしています。

一方、大津市では、大津市や滋賀の魅力を伝える活動がメイン。「京都に近く住むにはコスパがいいけれど、魅力が薄い」というベッドタウン・大津のイメージを新たにしたいと、株式会社ホモ・サピエンスを立ち上げ、「Otsu Living Lab(大津リビングラボ)」でのイベント企画などを行なっています。

活動の狙いとしては、京都・滋賀が越境してコミュニケーションを取ることで、それぞれの課題を解決するということ。京都には色々なコンテンツがあるものの、伝統があるゆえに新しいことを始めにくいという課題がある。逆に滋賀、主に大津ですが新しいコンテンツを欲しているほか、平均年齢が若いため、何かを始めやすい土壌があります。行政が決めた「地域」という境界線を越えたつながりを作ることで、双方に新しい風を吹かせたいですね。

越境が生む、京都と大津の双方向イノベーション


大津市内外から14のマルシェが集い、160店舗が集結した「What a Wonderful Otsu」

片山さんにとって、京都と滋賀はどのような存在ですか。

片山そもそも僕は京都の左京区に生まれ、その後、滋賀県大津市に引っ越しました。大学は兵庫へ行き、卒業後に京都の会社に就職したものの配属は東京。金銭的にゆとりはありましたが、東京の人混みと自然の少なさの中、60歳まで東京で過ごすイメージが持てず6年ほど前に京都に戻りました。

そういったバックボーンもあり、京都は自分にとって土台で、大津はフロンティアと捉えています。

先ほど話したように、大津はベッドタウンゆえに昼間人口が少なく、人のつながりが薄いように感じています。しかしそれは裏を返せば、知らない魅力を見つけ、新しいことを始めるチャンスが豊富にあるということ。コンテンツを持つ京都と、可能性を持つ大津をつなげたいです。

片山さんにとっての地方活性化とはなんでしょうか。

片山「人が見える活動」であることがポイントでしょうか。地域が活性化する上で、何億円・何十億円といった経済効果は確かに重要です。しかしそれ以上に、周りの人たちが幸せになった実感が見えなければ、僕たちがやる意味はないと思っています。

事業をやる上で経済的なインパクトは重要ですが、まずは地域住民である僕たちがいいと思える活動、幸せになれる活動を目指す。それが、僕たちだからこそできる地域活性化だと感じています。

越境が生む、京都と大津の双方向イノベーション


ツナグムで開催した、京都の企業家、プレイヤーを集めた交流会

信頼・つながり第一の、
心地よい働き方。

片山さんにとっての”EVOLUTION x LOVE”を教えてください。

片山仕事と生活をなるべく一緒に考えることで、ビジネスパートナーが友人になることが増えました。東京で働いていた時と現在と、会う人の数は変わっていないはずなのに、その人の人柄を知っている数は、明らかに今の方が多い。東京にいた時は人柄より、年次・出身大学などを覚えて序列を気にしていたので、今のつながりが心地よいですね。

さらに自分がここに住む生活者として働くことで、「仕事=友人におせっかいを焼く」というスタンスになったように感じます。結果として同じようなスタンスの人とのつながりも増え、自分にとって生きやすくて面白い生活環境が整いつつあります。

東京で感じていた足りないものが、ここに来てようやく埋められたのが、僕にとっての”EVOLUTION x LOVE”でしょうか。

実際、今は人の気持ちや信頼関係を第一に置いて仕事ができます。「この人とこの人をつなげたら盛り上がる」「楽しいことが生まれるんじゃないか」という想いを第一にした仕事ができる嬉しさに気づけました。

越境が生む、京都と大津の双方向イノベーション


What a Wonderful Otsuの準備、運営を行う「Otsu living lab」メンバー

10年、20年後のイメージはありますか?

片山具体的には琵琶湖の湖岸をもっと面白くしたいです。琵琶湖の湖岸は、県と市が管理している場が点在し、新しいスポットが生まれにくくなっています。そこにイベントなど新しい魅力を作っていくことで、コンテンツを増やしていきたいです。

たとえば一昨年と去年、大津港でマルシェを開催しました。大津の色々なところで開催しているマルシェを一箇所に集めたイベントだったのですが、10名ほどのボランティアが低予算で企画したイベントに、1万人以上の人が来てくれました。結果的に2年連続での開催となったことからも、大津に新しいコンテンツを求める人の多さを実感しました。今回は僕たちが開催しましたが、これをキッカケに、大津の人が気軽に新しいことを始める流れが生まれてほしいです。また、京都の伝統産業を担う若手が、大津で新しい挑戦をする土壌も提供したい。京都・大津それぞれにメリットを生むことが、双方向のつながりだと思っています。

現状、足りないものはありますか?

片山やはり知ってもらうためのメディア・つながりでしょうか。いい活動をしていても認知されないと、拡大することは難しいですよね。またほかの地域の方とノウハウを共有したり協業できるようなつながりがあれば、今後の活動の起爆剤になるかと思います。

また、持続可能な活動も課題です。現状、大津での活動ではOtsu living labメンバーがやりたいことをやっているという側面から各メンバーがボランティア的に運営に携わっています。今はそれが良いと思いますが中長期で考えると新しい人が関わりやすい形をつくる意味でも属人化をなるべくなくし、運営に携わってくれた方に経済的な対価をお支払いできるよう現在の活動をうまくビジネス化するための仕組みを作っていく必要があります。

現在の若者に対して感じることはありますか?

片山若い人ではなく、上の世代に対して課題を感じています。僕はプロジェクトで若者と関わることが多いのですが、彼らの場合、必要だと感じたら、プログラミングやWEB制作といったスキルを習得していきます。そういった若者のスピードについていけている上の世代は、どれくらいいるでしょうか。いわゆる「社会課題」の解決への取り組みを、若い世代のように、本当に自分事ととらえて動けている経営者は、どれくらいいるでしょうか。

今の日本は意思決定のヒエラルキーが年を取るほど有利になっていくので上の世代が意思決定できるだけで、実力勝負になったら、大企業の社長よりも今話をしている大学生が優れているのでは?と思うことが多々あります。外国では30代、40代で大臣になることも珍しくありません。若いだけで能力に見合った権限をもらえない社会が問題だと感じています。

実際、「QUESTION」には「Students Lab」という学生用のフロアがあります。そこでは企業の課題を学生が解決するセッションが開催されているのですが、企業が答えに窮するような鋭い質問が、学生から多く投げかけられます。しかも出身大学に関係なく、役員も驚くようなディスカッションが繰り広げられています。そんな場面を目にするたびに、若者たちが社会人になっても、自分の意見を素直に言える環境を作ることが自分の使命だと感じています。

   片山さん、ありがとうございました!京都と大津とのつながりが、今後、各地域にどのようなイノベーションを起こすか、楽しみなインタビューとなりました。片山さんの活動を、今後も応援させていただきます。