空でつながろう

Interview Vol.149 当たり前を疑い続けた先に、
道はひらける

本記事は、高校生・大学生を対象に開催されたキャリアイベント「キャリアフェス in むなかた」での講演内容をもとに構成している。このイベントでは、華やかな成功談だけでなく、思うようにいかなかった時期や、予期せぬ環境の変化にどう向き合ってきたのかを共有することで、進路に迷う若い世代が自分なりの人生の歩き方を考える場をつくっている。今回登壇したのは、フジテレビで35年以上にわたりキャリアを重ね、アナウンサー、そしてSDGs・社会貢献領域の最前線で活躍してきた木幡 美子さんだ。

当たり前を疑い続けた先に、道はひらける ~フジテレビ・木幡 美子さんが語る「伝える力」と人生のアップダウン~

「取り柄がない子」だった幼少期

木幡さんは、自身の子ども時代を「本当に平凡だった」と振り返る。早生まれで体も小さく、運動も勉強も得意ではない。忘れ物が多く、小学校では“忘れ物が多い子ランキング”の常に上位だった。

「何をやっても、人より遅かったんです」

そんな彼女の人生が大きく揺れ動いたのは、11歳のとき。父親の仕事の関係で、突然ニューヨークへ移り住むことになった。

言葉も通じないニューヨークで見つけた
「自分の居場所」

アルファベットも分からないまま、現地校に放り込まれた木幡さん。周囲は外国人ばかり。言葉も通じず、テストの点数もほぼ0点。人生で初めて、強烈な挫折を味わった。

それでも、彼女を救ったのは、アメリカの「褒める文化」だった。

「英語は話せなくても、絵を描いたら『上手だね』って言ってくれたんです」

できないことではなく、できることを見つけて認めてくれる。その経験が、少しずつ自信を取り戻すきっかけになった。

帰国後に味わった、
もう一つのカルチャーショック

アメリカでの生活に慣れ、ようやく楽しくなってきた頃、日本へ帰国。そこで待っていたのは「みんな同じ」であることが当たり前の社会だった。

「髪型も、服装も、価値観も、みんな同じ。それがすごく不思議でした」

多様性を肌で感じた経験は、この違和感として心に残り、後の人生に大きな影響を与えることになる。

回り道だらけの受験と学生時代

帰国子女枠を知らなかったがゆえに、普通の中学へ戻り、待っていたのは受験勉強。日本史も漢字も分からず、英語も“話せるけれど試験では点が取れない”。

それでも地元の高校を経て、上智大学外国語学部英語学科へ進学する。

「大学では、勉強よりアルバイトばかりしていました」

さまざまな仕事を経験し、人と接し、説明し、伝える。その体験が、後に「伝える仕事」への原点となっていく。

アナウンサーという選択

将来の夢が明確にあったわけではない。ただ「人に何かを伝える仕事がしたい」という感覚だけがあった。

女性キャスターが増え始めた時代背景もあり、テレビ局の採用試験に臨む。狭き門を突破し、フジテレビのアナウンサーとしてキャリアをスタートさせた。

「今振り返ると、すごく安直な理由でした。でも、それでよかったと思っています」

当たり前を疑い続けた先に、道はひらける ~フジテレビ・木幡 美子さんが語る「伝える力」と人生のアップダウン~

photo 本人提供

ハードな現場で磨かれた“現場力”

アナウンサーとしての日々は、想像以上に過酷だった。早朝3時起き、原稿がそろわないままの生放送、読めない漢字との格闘。

「経験しないと、できるようにならない仕事なんです」

現場で学び、失敗し、乗り越える。その積み重ねが、確かな力になっていった。

出産とキャリアの中断

念願のニュースキャスターとして活躍する中、妊娠が判明。仕事を一時離れ、子育てと向き合う時間が始まる。

「思い通りにならないことも多くて、正直、悔しかった。でも、この経験があったから伝えられることが増えました」

母になったことで、ニュースの受け取り方や伝え方にも変化が生まれたという。

思いがけない異動が、人生を変えた

44歳のとき、突然の部署異動。アナウンサーとして採用されたのに、SDGsやCSRを推進する社会貢献部門へ。

「最初は言葉も出ないくらいショックでした。でも、実はずっとやりたかったことだったんです」

“メディアだからこそできる社会貢献”を模索し、世界初のSDGsレギュラー番組「フューチャーランナーズ」を立ち上げる。

当たり前を疑い続けた先に、道はひらける ~フジテレビ・木幡 美子さんが語る「伝える力」と人生のアップダウン~

photo 本人提供

伝えることで、人の行動は変えられる

番組では、社会課題に取り組む人々を2分という短い時間で紹介。英語字幕もつけ、国境を越えて発信した。

その取り組みは国連にも評価され、世界の舞台へと広がっていく。

「映像と声には、人を動かす力がある」

当たり前を疑い続けた先に、道はひらける ~フジテレビ・木幡 美子さんが語る「伝える力」と人生のアップダウン~

photo 本人提供

再び訪れた、人生のどん底

しかし、今度は会社が社会的信用を失う事態が発生したことでスポンサー企業が撤退し、7年続いたSDGs番組は終了。これまで築いてきた活動が、全て止まることになった。

「人生って、本当に何が起きるかわからない」

それでも、木幡さんは立ち止まらない。再開に向け、再び動き始めている。

学生たちに伝えたい4つのこと

  • 当たり前を疑うこと
  • 俯瞰して物事を見ること
  • 現場に足を運ぶこと
  • 想像力と共感力を育てること

これらはすべて、自身の人生から導き出された言葉だ。これまでの人生経験を共有することで、何か一つでも、少しでも力になりたい。若者を応援したいという、心からのエールが聞こえる。


  • 木幡 美子

    木幡 美子

    ㈱フジ・メディア・ホールディングス
    SDGs推進担当
    上智大学外国語学部卒。元フジテレビアナウンサー。現在は同社のサステナビリティ担当、「伝える、変える」をモットーに映像の力でより良い社会をめざす。

木幡 美子さんの言葉から伝わってきたのは、「迷いながらも、自分なりの覚悟を持って選択を重ねてきた」という姿でした。女性ならではのライフイベントへの不安や葛藤に向き合い続けてきたその歩みは、進路や将来を考える高校生・大学生にとって、現実的で力強いヒントになるはずです。

EVOLOVEは、肩書きや所属では語りきれない、その人自身の選択とプロセスに光を当てていきます。この記事が、自分の進みたい道を考え、恐れずに一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。選んだ道を「正解」にしていく力は、皆さんの中にあります。