空でつながろう

Interview Vol.151 視野は、広がらない。
だからこそ、一歩ずつ動き続ける

変化の激しい時代において、自分自身で問いを立て、キャリアを考えて欲しいという想いを込めてEVOLOVEが企画実施した「キャリアフェス in むなかた」。本記事は、高校生・大学生を対象に開催された当イベントの講演内容をもとに構成している。EVOLOVEは、一直線の成功談ではなく、迷い、立ち止まりながらも選択を重ねてきた大人たちのリアルな言葉を通して、若い世代が自分の人生を肯定できる場を目指している。今回登壇したのは、EPIC GAMES JAPANでカスタマーサクセスディレクターを務め、世界中のエンターテインメント制作を技術面から支える篠山 範明さんだ。

視野は、広がらない。だからこそ、一歩ずつ動き続ける ~世界的な人気ゲームを支える技術者が語った「くすぶり続けた人生」と小さな選択~

「今日は一番大事なことから話します」

講演は、少し意外な自己紹介から始まった。

九州が大好きなこと。宗像に呼ばれたことが本当にうれしくてこの場に来たこと。そして何より、アイドルグループ「ばってん少女隊」の大ファンであること。

「一番伝えたいことは、最初に言うのが鉄則です」

そう前置きしながら、推しのライブ情報までしっかり告知する姿に、会場は一気に和やかな空気に包まれた。

EPIC GAMESで、何をしている人なのか

EPIC GAMESと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは『フォートナイト』かもしれない。しかし彼が関わっているのは、ゲームそのものではなく、それを支える開発ツール「UNREAL ENGINE」だ。

FINAL FANTASY VII、KINGDOM HEARTS、DRAGON QUEST、PERSONA 3 Reload、さらには『8番出口』や『鬼滅の刃』のゲーム化作品まで。世界的ヒットタイトルの多くが、世界最高峰のリアルタイム3D制作プラットフォーム「UNREAL ENGINE」で制作されている。

その用途は、ゲームにとどまらない。アニメ、漫画制作、バーチャルライブなど、エンタメの裏側で使われる“共通言語”として広がり続けている。

「これ、無料で誰でも使えます」

ゲームクリエイターを目指す人にとって、今は本当にチャンスの時代だと彼は言う。

視野は、広がらない。だからこそ、一歩ずつ動き続ける ~世界的な人気ゲームを支える技術者が語った「くすぶり続けた人生」と小さな選択~

photo 本人提供

仕事は、「作る人を助ける」こと

彼自身は、作品を直接作る側ではない。

UNREAL ENGINEを使ってゲームや映像を作ろうとする企業やクリエイターのもとへ行き、技術的にサポートする。それが彼の役割だ。

「スクウェア・エニックスさんにも、ホロライブさんにも行きます」

世界で活躍するエンタメの“内側”を、技術で支える仕事。そのやりがいは、数百万本単位で売れる作品に、自分の知識が確かに貢献していることだという。

火がついた瞬間は、意外にも遅かった

イベントのテーマは「自分に火がついた瞬間」。

しかし彼は言う。

「振り返ってみると、僕はずっとお尻に火がついていた人生でした」

中学までは優等生。吹奏楽部の部長で、卒業式のスピーチも任されるタイプだった。

ところが高校では周囲のレベルについていけず、大学受験を理由に部活から逃げる。大学では基礎勉強ばかりの日々に違和感を覚え、親に頭を下げて専門学校とのダブルスクールを始めた。

「ここじゃない。ここでもない」

そうやって動き続けた先に、新卒で入社したのがソニーだった。

視野は、広がらない。だからこそ、一歩ずつ動き続ける ~世界的な人気ゲームを支える技術者が語った「くすぶり続けた人生」と小さな選択~

有名企業に入っても、満たされなかった

誰もが知る大企業。親も周囲も喜んだ。

しかし本人は、強い違和感を抱えていた。

「思ってた社会人生活と、違った」

研究職として入ったものの、自分が本当にやりたかった“エンタメのアウトプット”からは遠い仕事が続いた。

「給料も出るし、これが社会人なんだろう」

そう自分に言い聞かせながら、何も動かなかった5年間を、彼は「人生で一番よくなかった時期」だと振り返る。

部署異動で、ようやく見えた世界

転機は26歳のとき。部署を移り、ゲーム開発者を技術的に支援する立場になった。

「スタッフロールに自分の名前が載る。その瞬間、やっと楽しいと思えました」

そこで初めて、“作る人の裏側を支える仕事”の面白さに気づく。そして惚れ込んだのが、UNREAL ENGINEだった。

その後、EPIC GAMESへ転職。世界中の作品に関わることができる、今の仕事へとつながっていく。

特に「好きなこと」については、はっきりとこう語った。

「好きなことは、頑張れる。頑張れるから、成功する確率も上がる」

視野は、広がらない。だからこそ、一歩ずつ動き続ける ~世界的な人気ゲームを支える技術者が語った「くすぶり続けた人生」と小さな選択~

視野は、いつだって狭い

彼が学生たちに伝えたメッセージは、少し意外なものだった。

「視野は、広がらないと思っています」

どこへ行っても、人は今立っている場所からしか世界を見られない。だからこそ、完璧な選択なんてできない。

「大きな一歩じゃなくていい。引き返せる小さな一歩でいいから、今と違うことをしてみてほしい」

同じ毎日を繰り返さないために

彼はアインシュタインの言葉を紹介した。

「同じ毎日を繰り返し、違う人生を期待する。それを狂気と呼ぶ」

努力している“つもり”になっていないか。進捗を記録し、ダメならやり方を変える。その小さな工夫が、人生の流れを変えると語る。


  • 篠山 範明

    篠山 範明

    Epic Games Japan
    Customer Success Director
    リアルタイム3Dエンジン「Unreal Engine」を提供するグローバルリーディングカンパニーの日本支社で技術支援を統括。

篠山さんの言葉から伝わってきたのは、「遅すぎる火なんてない」という事実だ。
迷い、逃げ、くすぶりながらも、小さな選択を重ねた先に、今の仕事がある。
視野は狭いままでいい。それでも動き続ければ、見える景色は確実に変わる。
それが、ゲームやテクノロジーの最前線で世界のエンタメを支える彼の、リアルなキャリアストーリーだった。