空でつながろう

Interview Vol.153 自分が燃えるだけじゃ足りない。
火は渡してこそ意味がある。

変化の激しい時代において、自分自身で問いを立て、キャリアを考えて欲しいという想いを込めてEVOLOVEが企画実施した「キャリアフェス in むなかた」。本記事は、高校生・大学生を対象に開催された当イベントの講演内容をもとに構成している。今回登壇した寺田龍二さんは、会社員・経営者・投資家・大学教員という複数の立場を行き来しながら、「火をつける」「火を広げる」「火を渡す」人生を実践してきた人物である。

自分が燃えるだけじゃ足りない。火は渡してこそ意味がある。 ~パラレルワーカー・寺田龍二さんが語った「火をつけ、広げ、渡す」生き方~

聞いたこともないような仕事

話し始めると、その情報量と熱量は圧倒的だった。寺田さんはまず、自身を「パラレルワーカー」だと紹介する。

人材サービスなどを展開するパーソルグループにおいて投資やM&Aに携わる一方で、ブロックチェーン、農業、宇宙空間向けデータセンターなどの事業を営む4社を経営。さらに50社以上へのエンジェル投資、大学での講師、企業顧問も務めている。

一見すると「どうしたら全部やれるのか分からない」キャリアだ。

すべての原点は「1秒でも早く、より良い世の中を」

寺田さんの行動を貫く軸は、驚くほどシンプルだ。

「1秒でも早く、より良い世の中が来た方がいい」

そのために、起業家になることも、投資家になることも、会社員になることも、大学講師になることも、すべて“手段”として選んできたという。

「どんな祖先になりたいですか?」という問い

寺田さんの思考を大きく変えたのは、メンターである僧侶からの問いだった。

「寺田さんは、どんな祖先になりたいんですか?」

将来の夢ではなく、未来に生きる人からどう語られたいか。

「“あの人がいたから、今はこの選択肢があるよね”と言われる存在になりたい」

この問いが、寺田さんの人生のコンパスになった。

問いを見つけ、自分がやるか、託すか

寺田さんは、自分の役割を明確に分けている。

困りごとを見つけたとき、

  • 誰もやらないなら、自分がやる(起業・経営)
  • 誰かがやるなら、その人を応援する(投資)
  • 仕組みが邪魔をするなら、仕組みを変えられる立場になる(大企業・大学)

「複数の役割を使い分けることで、ひとつの火を別の形で燃やし続けられる」

それがパラレルワークの本質だと語る。

自分が燃えるだけじゃ足りない。火は渡してこそ意味がある。 ~パラレルワーカー・寺田龍二さんが語った「火をつけ、広げ、渡す」生き方~

高校時代の夢は、プロサッカー選手

だが、ここに至るまでの道のりは決して順調ではなかった。

高校時代、寺田さんはプロサッカー選手を本気で目指していた。イギリス留学も経験し、将来を期待されていたが、「プロにはなれない」と告げられる。

大学でも再挑戦するが、プロにはなれなかった。

人生の進路が、突然消えた。

「なぜサッカーをやっていたのか」に気づいた瞬間

立ち止まったとき、寺田さんは初めて問い直した。

「自分は、なぜサッカーをやりたかったんだろう」

答えは意外にもシンプルだった。

「親が喜ぶ顔を見たかった」

そこから、「より多くの人が喜んでくれるような、幸せをばらまく人になりたい」という価値観が生まれた。

幸せをばらまけなかった、新卒時代

そんな価値観を得たのち、「多くの人が幸せになるための土台となる健康を支えたい」という思いで、新卒入社したのは大手製薬会社。

だが、現実のビジネスは理想とは違った。特に取引先である医薬品卸売業者や小売店は利益率が低く、厳しい経営環境に置かれていることを知る。自社の商品をエンドユーザーがより手に取りやすいよう販売価格を下げてしまえば、売れば売るほど、取引先の経営は苦しくなる構造。一方で、企業は売上が伸び、自分の成績は上がり評価される。それがとてももどかしく、つらかった。誰かが苦しんで誰かが幸せになるのではない、取引先、エンドユーザー、会社すべてが幸せになる歯車を探し続けた。

「自分は何のために仕事をしているんだろう」

その違和感が、次の転機を呼ぶ。

自分が燃えるだけじゃ足りない。火は渡してこそ意味がある。 ~パラレルワーカー・寺田龍二さんが語った「火をつけ、広げ、渡す」生き方~

リクルート、そしてどん底へ

次に選んだのはリクルート。仕事は楽しかったが、自分が世の中に必要だと思う新規事業に十分な資金が回らない現実や、自分で経営していた会社の海外事業での失敗が重なり、気づけばお金も自由も失っていた。

「人生って、暇つぶしなんじゃないか」

そう思うほど、無力感や喪失感を味わった時期だったという。

「助けられる人を、全員助けよう」

転機は、意外にも小さな実感だった。

投資した起業家が救われたこと。自分が関わったサービスで誰かが仕事を見つけたこと。

「世の中すべての人は無理でも、目の前の人なら助けられる」

そう決めた瞬間から、人生は少しずつ好転し始めた。

火を広げる、火を渡す

現在、寺田さんは自分の事業だけでなく、若い起業家たちの“火”を育てることにも力を注いでいる。

投資、教育、大企業との連携。

「自分が燃えるだけじゃ足りない。火は渡してこそ意味がある」

キャリアの8割は、偶然でできている

最後に寺田さんは、学生たちへこう語りかけた。

「キャリアの8割は、予期しない偶然で決まる」

計画通りにいかないことを、恐れなくていい。隣に現れた偶然に、ほんの一歩踏み出してみること。

「実は、もしもサッカー選手以外の将来の道を考えるとしたら、学校の英語の先生だなと思ってたんですよ」

後日、寺田さんはそんなことを語っていた。なぜ、先生にならなかったのか?と疑問だったが、なんと入学先の大学は英語の教員免許が取れない学部だった。そこで早々に教員の道はあきらめ、サッカーに打ち込んだのち、企業に就職したという。

「でも、会社員、投資家、経営者を経て、気づけばいくつかの大学での講師をしているんですよね。不思議です。」

まさに、行動し続ける中で予期しない偶然と出会いながら、予期せずかつての夢を叶えている寺田さんの姿がそこにはあった。


  • 寺田龍二

    寺田龍二

    PERSOL VENTURE PARTNERS Partner
    TempleField CEO
    大手人材会社CVCのファンドパートナー、4社の会社経営、50社以上のスタートアップへ投資するエンジェル投資家、大学講師、起業顧問と広く活動するパラレルワーカー。

寺田龍二さんの言葉から浮かび上がるのは、「自分の人生を自分で設計しようとする姿勢」でした。複数の役割を行き来しながら、試行錯誤を重ねてきたその歩みは、将来の選択肢に不安や迷いを感じる高校生・大学生にとって、大きなヒントになるはずです。

「自分が燃えるだけじゃ足りない。火は渡してこそ意味がある」という強力なメッセージとして、学生たちの可能性を広げるきっかけになれば幸いです。