舞華
宗像市観光大使
将来に正解がない時代だからこそ、自分で考え、選ぶ力が大切になっている。EVOLOVEは、そのヒントを届ける場として「キャリアフェス in むなかた」を開催した。本記事では、高校生・大学生に向けて行われた講演内容をもとに、これからのキャリアを考える手がかりを紹介する。
今回登壇したのは、女子プロレス団体スターダムで活躍するプロレスラー・舞華選手。華やかな舞台の裏側にある、二度の“どん底”と、そこから立ち上がった物語を率直な言葉で届けてくれた。
「今でこそ、試合やテレビ、雑誌などに出させてもらっていますが……」
そう前置きして舞華さんが示したのは、自身の人生をグラフに表したライフチャートだった。そこには、上昇と下降を何度も繰り返す、決して一直線ではない人生の軌跡が描かれていた。
デビュー戦で大きな注目を浴び、一気にスポットライトを浴びたかと思えば、思うように結果が出ずに沈む時期。団体移籍による再起、そして再び訪れる挫折。さらに現在は、肘の手術による長期欠場中であるという。
「今日は、その“どん底”の話をしたいと思います」
舞華選手は、母子家庭で育った。わんぱくな少女だった彼女は、柔道と出会い、競技に打ち込む日々を送る。経済的に余裕がない中でも、顧問の先生や周囲の大人たちに支えられながら、なんとか道をつないできた。
しかし高校卒業前、母親に「経済的な理由で、大学には行かせられない」と告げられる。柔道を続けたい一心で実業団に入り、仕事・柔道・専門学校を掛け持ちする過酷な生活が始まった。
そこで待っていたのは、教師からの言葉によるいじめだった。
「『バカなんじゃないの?』『もう辞めたら?』って」
誰にも信じてもらえず、心は限界を迎える。実習先に行けなくなり、引きこもりのような生活へ。
「生きるだけで必死でした。死にたいと思ったこともあります」
それでも家族がそばにいたことで、命だけはつながっていたと振り返る。
少しずつ心が落ち着き、職場に戻れた頃、先輩に誘われて観に行ったプロレス興行。そこで目にしたのが、内藤哲也選手の姿だった。
かつてブーイングを浴びていた選手が、自分のスタイルを貫き、大歓声を浴びている。その姿に、胸を打たれた。
「プロレスラーってかっこいいなって。勇気をもらいました」
柔道に区切りをつけ、プロレスラーになる決意をする。スーツケース一つで上京し、練習を始め、わずか2か月でデビュー。しかし、現実は甘くなかった。
月収はほぼなく、借金をしながら、チケットを手売りする。グッズ管理、通販作業、後輩の食事作りまでこなす日々。
「もがいて、もがいて、それでも前に進むしかなかった」
スターダムに移籍後、タッグやユニットで結果を残し始める舞華選手。しかし、ここで第二のどん底が訪れる。
それは、家族以上の存在だったタッグパートナー・ひめか選手の引退だった。
「結果が出ないから、もうこれ以上は無理」
その言葉は、かつて柔道で限界を感じた自分自身と重なった。だからこそ、引き止めることはできなかった。
「ひめかの分まで、結果を出そう」
その想いで挑んだ大舞台・スターダム主催により開催されている、女子プロレスのシングルマッチによるリーグ戦である『5★STAR GP(ファイブ☆スター・グランプリ)』。しかし、準決勝で敗退。期待を背負った中での敗北は、心を深くえぐった。
「本気で、引退しようと思いました」
そんな舞華選手を救ったのが、海外から来たメーガン・ベーン選手だった。
言葉が通じなくても、彼女は伝えてくれた。
「あなたはすごい。海を越えて、あなたの存在は知られている」
その言葉に救われ、再びリングに立つ。タッグリーグで優勝し、ついにはスターダム最高峰のワールド・オブ・スターダム王座を戴冠。さらに、誰も成し遂げたことのない『5★STAR GP 2022』全勝優勝という偉業も達成する。
「人生で、本当に他人に救われてきました」
世の中には冷たい人もいる。裏切りもある。それでも、どん底に立ったとき、必ず誰かが手を差し伸べてくれた。
「その小さな幸せを、大事にしてほしい」
夢を叶える過程には、必ず挫折がある。でも一人で抱えなくていい。誰かと出会い、支え合いながら、人は前に進める。
その後、舞華選手は2025年12月8日、後楽園ホール大会で待望の復帰戦に臨み、同期にして最大のライバル・上谷沙弥選手を相手に、必殺技・みちのくドライバーIIで完勝を収めた。
また12・29両国大会では“盟友”メーガン・ベーン選手と再会し、タッグマッチで大暴れ!
常にリングの中心で熱い闘いを繰り広げている。
流れの速いスターダムのリングにおいて、“女帝”の異名を持ち、不動の人気を誇る舞華選手。今年は世界での活躍も視野に入れ、さらなる飛躍が期待される。
2025年12月29日、両国国技館大会の入場シーン
“盟友”メーガン・ベーンと再会!
みちのくドライバー
2025年12月8日、後楽園ホール大会にてみちのくドライバーで勝利

舞華選手の物語は、華やかな成功だけを切り取ったものではありません。思うように進まない時間や、どん底に落ちた経験も含めて、それでも自分の人生を肯定し続けてきた歩みでした。何度転んでも、支えてくれる人とのつながりがあれば、また立ち上がれる。その姿は、結果よりも「生き方」そのものが力になることを教えてくれます。
舞華選手の言葉が、「夢は、挫折込みで追いかけていい」という確かなメッセージとして、これから人生を歩き始める学生たちの背中を押すことを願っています。あなたの物語も、まだ途中です。
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