空でつながろう

Interview Vol.170
閃光の軌跡:滋賀から放つ、イナズマという名の挑戦。
【前編】学生が成長できる“本気の現場”をつくりたい
「イナズマロックフェス 2025」フォトブースを地元の美大生が制作

【前編】学生が成長できる“本気の現場”をつくりたい ~「イナズマロックフェス 2025」フォトブースを地元の美大生が制作~

2009年の開始から17回を数え、滋賀県に異例の熱量をもたらしてきた「イナズマロック フェス」。2026年、このカリスマ的な野外フェスは「FEST. INAZUMA(フェスト イナズマ)」へと名称を改めます。

主催者・西川貴教さんの強い「地元愛」に、地域住民や未来を担う若者たちの挑戦が共鳴して生まれる、新たな地域活性化の形。その変革の舞台裏を、前後編にわたってお届けします。

地元のクリエイターが生む、新しい熱量

EVOLOVEプロジェクトは、その土地の魅力を掘り起こし、地元の人とともに新しい街の未来を描いていくために、地域活性化へ挑む人々を応援しています。

その活動の一環として、滋賀県草津市で開催された「イナズマロックフェス2025」では、滋賀県唯一の美大である成安造形大学の学生たちのプロジェクトをサポートしました。

美大生がつくる“映え”フォトスポット

「イナズマロックフェス 2025」の会場でひときわ賑わっていたのが、琵琶湖を背景にしたフォトブース。来場者が行列をつくり、スマートフォンを構える光景が広がっていました。

このブースを手がけたのは、地元・成安造形大学の約20名の学生たち。授業の延長線ではない、“プロの現場”での挑戦でした。

学生たちがフォトブースのコンセプトとして掲げたテーマは「琵琶湖で弾ける叫び」

「大自然と音楽の熱気を重ね合わせ、来場者が思わず笑顔になるデザインを目指しました」

「可愛いって言ってもらえるといいな、と思ってつくりました。このフォトブースで写真を撮った人が、明るい気持ちになってくれたら嬉しいです」

フォトブースはアーティストの楽屋裏と、一般来場者向けの2箇所に設置。ファンとアーティスト、両方が同じ熱量で来場記念の写真撮影を楽しめる空間となりました。

【前編】学生が成長できる“本気の現場”をつくりたい ~「イナズマロックフェス 2025」フォトブースを地元の美大生が制作~

来場客用のフォトブースにて記念撮影

プロの現場で、学生の表情が変わる

制作を指導したのは、国内外で活躍するアートディレクター 大岩Larry正志さん。

滋賀県出身でもある彼は、地元の若いクリエイターに“本物の現場”を体験してほしいと、このプロジェクトに参画しました。

「最初に会った時、学生たちには迷いもあるように見えました。どうすればコンセプトを伝えられるか、自分たちの想いとフェスのテーマをどう重ねるか。でも次第に自分の役割を見つけ、主体的に動くようになっていった。その姿にこちらも刺激を受けました」

【前編】学生が成長できる“本気の現場”をつくりたい ~「イナズマロックフェス 2025」フォトブースを地元の美大生が制作~

プロップスを制作する成安造形大学の学生たち

学生たちも、この体験で大きく成長しました。

「授業ではポスターを作ることはあっても、実際に“人が使う空間”をデザインするのは初めて。どうしたら映えるかを考えながら、仲間と意見を出し合うのが楽しかったです」

さらに、学生たちに嬉しいサプライズが。

彼らが手がけたフォトブースのデザインが、なんとメインステージの演出デザインにも採用されたのです。

“自分たちの作品が大舞台で使われる”という経験は、まさにプロへの第一歩でした。

【前編】学生が成長できる“本気の現場”をつくりたい ~「イナズマロックフェス 2025」フォトブースを地元の美大生が制作~

フォトブースのデザインが、メインステージにも採用されるというビッグサプライズ

チームで学ぶ、現場のリアル

プロジェクト全体のリーダーを務めたのは4年生の福崎さん。

「1年生も積極的に参加できるよう、役割を明確に分担してチームを作りました。初めて参加するメンバーも安心して動けるようにプロジェクトを進めました。分からないことも、気軽に聞いて良い。聞いたら教えてもらえるという環境の中で、自信がついていったと思います」

リーダーの福崎さんは制作活動が終わる頃、このように振り返りました。

「まとめるのは大変でしたが、学年を超えて協力することでチームに一体感が生まれた。みんなで形にできたのが一番の成果です」

“登竜門”としてのイナズマロックフェス

2009年にスタートした「イナズマロックフェス」は、滋賀出身のアーティスト・西川貴教さんが地域振興と音楽の融合を目指して立ち上げたフェスです。

音楽だけでなく、若手芸人、アーティスト、そして今回のような学生クリエイターにも活躍の場を広げています。

「音楽だけじゃなく、滋賀からさまざまなカルチャーを発信していきたい」

そんな西川さんの想いが、学生たちの挑戦を後押ししました。

学生たちが、次の一歩を踏み出すために

「プロの仕事を体験できた」

「自分のデザインが多くの人に見られて、最高に嬉しかった」

学生たちは口を揃えます。
中には、この経験をきっかけに将来の夢を再確認した学生も。

「進路に迷っていたけれど、やっぱり“形に残る仕事”が好きだと気づきました」

Larryさんは、学生へのメッセージをこう締めくくりました。

「学生に必要なのは、挑戦できる“場”を与えてくれるプロフェッショナルな経験をもつ大人の存在。今回の経験が、彼らの次の一歩につながれば嬉しいですね」

【前編】学生が成長できる“本気の現場”をつくりたい ~「イナズマロックフェス 2025」フォトブースを地元の美大生が制作~

Larryさんと学生たち、完成したプロップスを手にして

地元・滋賀から、全国へ

「イナズマロックフェス」という舞台の裏で、未来のクリエイターたちが確かな一歩を踏み出しました。そして、このフェスは、2026年に名称を変え、大きな進化を目指すと発表がありました。後編では、主催者の西川貴教さんにお話を伺い、ローカルイベントのお手本とも呼ばれる「イナズマ」をどのように変えていくのかをお聞きします。


  • 大岩Larry正志

    大岩Larry正志

    スポーツデザイナー
    ボイスアクター
    これまでに、プロ野球5球団をはじめ、Jリーグ、Bリーグなど数々のスポーツチームのユニフォームやビジュアル、ロゴを手がける日本随一の実績を持つスポーツデザイナー。ボイスアクターの一面も。「イナズマロックフェス」立ち上げ時からロゴデザインなどを担当。